『10月1日コーヒーの新年度に想うこと』

 今朝は、窓の外を見ると雨が降っている。朝夕と過ごしやすい気候となってきた。清涼な秋の気配が心地よい。湯気と共に漂う香気。温かいコーヒーがおいしい。今日10月1日は国際コーヒー機関が定めた「国際コーヒーの日」で、国際協定でコーヒーの新年度が始まる日である。

 自身が食品製造機械メーカーにおいて清涼飲料であるコーヒー製造ラインに携わることもしばしばあったことから、コーヒーに興味を持ち、日本スペシャルティコーヒー協会認定の「SCJAコーヒーマイスター」となったのがきっかけで、ここ数年この時期になると北鎌倉にある路地裏のとあるコーヒー店に通っている。世界の希少なコーヒー豆を買い付け、自家焙煎する。和室を活用した静かな店内で丁寧にハンドドリップされたコーヒーがおいしい。

 近年、鎌倉の江ノ電沿線には新しいコーヒーショップがオープンするなどコーヒー通が集う様相になってきている。コーヒーを入れるにも一つの作法のようなものがあり、道具の扱い方、豆の煎り方、豆の挽き方、湯の注ぎ方、口へ持っていくしぐさなど奥深いものがある。そこまでコーヒーのことを考えているのは、欧米人にはないだろう。日本人特有のコーヒーの味わい方で、欧米よりも水準が高いと感じられる。茶道の文化と通じるものがある。

 何かのニュースで聞いた話だが、数年前に日本に初出店した米国コーヒーチェーンのブルーボトル・コーヒーの創業者も、来日時に日本の喫茶店の丁寧なコーヒーの淹れ方に感銘を受けたと聞く。「コーヒーの味わいには、清涼な感情と思考を喚起させるものがある」そんな一杯のコーヒーが格別なものになる瞬間でもある。

 先にも述べたが、「コーヒーマイスター」について少し触れておくことにする。ひとことで言えば、コーヒーの飲用者にそのおいしさや楽しさを伝えるプロフェッショナルと言われている。国が違えば文化が違うように、コーヒーの飲まれ方や好み、市場動向も、世界各国でさまざまに異なる。日本でも独自の個性をもったコーヒー文化が培われてきたが、近年の外資系カフェなどに代表されるようにコーヒーの楽しみ方はたくさんのバリエーションを持ち始めている。これからの日本で、コーヒーの品質をより高く維持しながらも、一人でも多くの方にその楽しさとおいしさを伝えられるようなプロのコーヒーマンであるとともに、コーヒーの“栽培からカップに至るまで”(From seed to cup)の長い道のりにおいて、その集大成の重要な役割を担っているのが「コーヒーマイスター」である。

以上