2021/02/25
◇「TOKYO PACK 2021」視察_2021.02.24
会場:東京ビッグサイト西1~4ホール、南1~2ホール
主催:公益社団法人日本包装技術協会
開催期間:2月24日~2月26日の3日間
開催規模:302社、1488小間 (1月8日発表時)
テーマ:未来(あす)を拓く 包みのテクノロジー
包装機械、食品機械および関連機器類を主に最新技術動向調査を目的に視察。
◇全般的な展示内容:
TOKYO PACK”東京国際包装展”は、さまざまな業界で活躍している包装資材・容器、包装機械を中心に、調達から生産、物流、流通、販売、消費、廃棄・リサイクルに至るまでのあらゆる分野を網羅した国際総合包装展。2018年開催の前回と比較すると規模は小間数ベースで4割減である。7つの分野「包装資材・容器」「包装機械」「印刷・包材加工機械」「食品・医薬品・クリーン関連機材」「検査・計測・環境関連機材」「包装デザイン&サービス」「次世代テクノロジー、包装・物流ソリューション」で出展各社のブースでの展示紹介されていた。
◇注目した主なメーカーの製品・システムについて出展分類別に紹介する。
1.包装機械
1-1. オリヒロ株式会社 http://www.orihiro.com/
フルモデルチェンジしたONPACK縦ピロー充填機シリーズの最新機種ONP-R5(写真1.カタログ)の出展がされていた。近年の食品業界は、HACCP法制化や事業運営効率化により、衛生管理やリスク管理、生産性向上の面で、充填機に求められる要望がより厳しくなっている。
これらを考慮し、危険要因のモニタリング機能や、製品への危険物質の混入対策、性能強化や安全性を向上させるため、従来のONPACK充填機を基礎構造から徹底的に見直し、細部から新たに再設計した機種。ピローパウチ対応機種として出展していたONP-2030ASⅡは「充填カットノズル」を製品化し、この充填カットノズルは、刃物でノズル先端から出てくる小さな固形物を擦切って、同時に液だれを防止するシャッター機構を持ち合わせた新しいノズルを採用している。また、縦ピロー包装でありながら、アルミ箔包材を使用して、高温高粘度の食品を間欠充填でき、よりロングライフで流通することができる「アルミ箔仕様」のピロー充填機もラインナップしている。大型業務用パウチと、スティックなどの小袋包装の両方に対応することができ、幅広いサイズと製品に対応できるようになっている。スタンディングパウチ対応機種としONP-13000USDが出展されていた。
1-2. 四国化工機株式会社 https://www.shikoku-kakoki.co.jp/
充填機装置の展示はなく、日本製紙と共同開発した次世代型アセプティク紙容器システム「NSATOM(エヌエスアトム)」の無菌充填機を動画紹介していた。日本製紙の容器と四国化工機の機械の両面からの提案がされていた。紹介機械は「紙容器成形無菌充填機UP-ATOM04」「カップ用無菌充填機ULA-320」(写真2.)「ボトル型調味料用充填機LBシリーズ」で、紙容器・プラスチック容器などの包装資材各種が展示されていた。また、グループ会社「さとうの雪食品」から常温保存可能な紙容器入り無菌充填豆腐などを紹介していた。
1-3. 大成ラミック株式会社 https://www.lamick.co.jp/
減容化、資材・設備コスト抑制をコンセプトに新設計された縦割りロール機構を搭載した、液体・粘体高速自動充填機「DANGAN GIP(Inst
Pouch)」(写真3.右)で、独自新包装形態パウチに対応した機種が出展されていた。DANGANで製袋・充填するワンピースタイプのスタンディングパウチ(写真3.左)(特許第5097992号)を紹介していた。商品の多様化が進む中、店頭で消費者の目を引くパッケージの要求から開発されたもので、自立した状態で商品棚に陳列可能であり、意匠を凝らしたパッケージを実現できること、加えて製袋品と比較して資材費削減、納期短縮、生産効率向上のメリットがあるとアピールしていた。従来の操作性はそのままで高生産性を実現した中・大容量(500~1400g)の充填対応のセンターシール・センタースリット機能を搭載し、3方袋・4方袋に加え4方W袋の充填を可能にした機種「DANGAN
GL」も出展されていた。
1-4. 株式会社古川製作所 https://www.furukawa-mfg.co.jp/
竪型袋詰真空包装機「FVV-10-220NⅢ」(写真4.)が出品されていた。袋詰部と真空部を分けた2ローター式の竪型袋詰真空包装機で、袋詰部は品物を入れやすくするため間欠移動をし、回転半径の大きい真空部は連続回転する。処理能力は最大毎分45袋。操作部はタッチパネル方式を採用し、最大100品目のプリセットが可能となっている。アイテムを呼び出すだけの簡単操作で品種の切替時間が効果的に短縮され、さらにトラブル発生箇所やメンテナンス時期のお知らせがディスプレイ表示されオペレーションが迅速に行えることをアピールしていた。このほかフィルムリサイクル機能を標準装着し、空袋のロスを効果的に低減する。真空ボックス内は水洗いが可能でメンテナンス性にも優れている構造。真空ボックスが透明な樹脂製となっていることから内部の状況を視認できることが特徴である。大容量袋箱(商標:OLD
RIVERS)とセットすると平袋約2,000枚セット可能で包装能力は50袋/分まで対応できる。
2.印刷・包材加工機械
2-1. 紀州技研工業株式会社 https://www.kishugiken.co.jp/
国内唯一、プリンターからインクまで自社で開発・製造・販売しているインクジェットプリンター専業メーカー。シート状段ボール印字システム(写真5.)を出店していた。
折り畳んだままの無地段ボールに必要なときに必要な分だけプリントすることで、在庫スペースの大幅なコスト削減を実現することをアピールしていた。さらに段ボールケースの無地化など印刷やラベル代替としてのローコストオペレーションも提案。システム搭載プリンターは1ヘッドにつき、印字高さ最高130mmの大文字まで対応できる。各種バーコードをはじめQRコード、ナンバリング、日付印字、ロット番号なども美しく印字する。また折り畳んだままのシート状段ボールに印字するため、箱の全面と側面を同時に印字することが可能。処理能力は最大10枚/分となっていた。
3.食品・医薬品・クリーン関連機材
3-1. 株式会社カジワラ https://www.kajiwara.co.jp/
主な出展機は、「加熱・冷却乳化機Σ(蒸気加熱)」「レオニーダーKH(蒸気加熱)」「カラメルコーティングマシンKRS+CC」「ハイブリッド加熱撹拌機電磁スチームKRS+M(IH+蒸気加熱)」「卓上加熱撹拌機KRjrαIH(IH)」であった。
注目した機種としては、「カラメルコーティングマシンKRS+CC」(写真6.)で用途としては、カラメルナッツ、おこし、キャラメルポップコーンなど一粒ずつきれいにカラメルコーティングを可能とした撹拌機である。特徴としては、カラメルアーモンド用に開発した独自の機構により、一粒一粒きれいに解れたカラメルアーモンドに仕上げることができるとアピールしていた。撹拌羽根まわりに均一に混ぜる構造的な工夫がされ低速から高速まで、撹拌スピードが自在にできることから、食品に応じて自由な撹拌速度が設定できることをメリットとしていた。
3-2. 東京食品機械株式会社 https://www.tokyofoods.co.jp/
深絞り・ガス置換包装機「RX4.0」(写真7.)が国内で初披露されていた。独・ムルチバック社の次世代型包装機「X-lineシリーズ」の製品で、IoTを搭載するなど高性能化された機種となっていた。製造現場のデジタル化に寄与する機能を付加させていることを特徴としている。展示紹介されていたRXシリーズにはマルチセンサーコントロールを用いたスマートサービス機能を搭載している。この機能を活用して生産しながら常に動作の最適点を収集しながら、さまざまなエラーを未然に予測し原因分析を素早く実施することで、設定を絶えず最適化することから生産効率が約10%向上することをアピールしていた。このほか独自ガス置換技術を用いた各種トレーシーラーを展示していた。
4.検査・計測・環境関連機材
4-1. ニッカ電測株式会社 https://www.nikka-densok.co.jp/
従来方式の金属検出機では検出が困難だった小さな金属異物にも対応する超高感度の微小金属検出機「NTシリーズ」(写真8.)が出品されていた。特殊磁気センサーにより、微小な磁気金属異物を検出する。鉄で直径0.3mm、ステンレスで直径0.2×2mmの検出が可能で、特に従来機では検出が難しかった微小ステンレス針金にも対応する特徴をアピールしていた。このほか、重量選別機、シールリーク検査機、ピンホール検査機、マグネット式除鉄装置などをラインナップし紹介していた。
5.流通・物流システム機器&サービス
5-1. 株式会社ユーシン精機 https://www.ype.co.jp/
省スペース・フリーアクセスでレイアウトが自由自在のパレタイジングロボットパレタイジングロボットPAシリーズ(写真9.)を出展していた。
ガントリー型ロボットのような一方向のみのアクセスによる専用機や広いスペースが必要な多関節ロボットの欠点を補うパレタイジングロボットで侵入禁止エリアも狭く、床置きのロボットコントローラがないことから既存スペースへの設置が容易である点がメリットである。同時に複数のパレタイジングも可能で作業効率が良いことをアピールしていた。
5-2. 株式会社妙徳 https://convum.co.jp/
主な出展は各種エア駆動ハンドエフェクタ小型真空ポンプ内蔵のロボットハンド「eハンドSGEシリーズ」(写真10.左上)、多品種のワークを一つのハンドで搬送「パレッチャーSGPシリーズ」(写真10.右上)、面倒なハンド設計不要でロボットへの直接取付可能なハンド「ロボットハンドキットCRKシリーズ」(写真10.左下)、これまで掴めなかったワークを吸着搬送できるハンド「バルーンハンドSGBシリーズ」(写真10.右下)を複数メーカーの小型多関節ロボットに装着して吸着搬送のデモ展示を行なっていた。
5-3. 共立物流システム http://www.kpds.co.jp/
安全性・耐久性・作業性・リサイクル性に優れるプラスチック製IBCポリ袋内袋型折りタタミ式液体コンテナ「アトムコン(KCG-Mpp)」(写真11.)をはじめ、物流コストの低減と物流サービスの向上に役立つ機器を多種多様に揃えている。同製品は樹脂製液体コンテナで蓋自重は5kgと軽量であるだけでなく、畳んだ際には通常の半分以下の高さとなるため保管や輸送の効率も良いなどの利点があげられる。本体が高い洗浄性・耐薬品性・リサイクル性を備えたポリプロピレン材質で、内臓の金属パイプにより、熱対策強度も確保されている。作業性と安全性を考慮した軽量設計で、弁付き内袋で洗浄不要と衛生的に使用ができる。このため化学薬品の保管や運搬にも適するが、今後の物流コストの低減や作業性向上、生産量の増加を図る企業向けへの展開を図っていくことをアピールしていた。同社では、このほかの用途ではフィルム輸送用ボックスパレット、1000L食品用攪拌機付タンク、粉体塗料用搬送エアレーションコンテナなども揃えている。
6.その他
6-1. 多賀電機株式会社 http://www.tagaele.com/
食品用超音波マルチスライサー(写真12.)に注目した。超音波技術を駆使した食品カッター&スライス(フードカッター&フードスライサー)を、食品業界を中心に展開している。ナイフや包丁等でカット、スライスしにくい食品や食品材料などの加工に有効なカッターとスライサーを揃えている。展示会では、ホールケーキのカットデモを行っていた。
用途としては、アーモンドやピーナッツ・クルミ等が入っているパンやクッキー生地のカット、ガレット、ゴーフル、ミルフィーユ、ウエハース等のカット、冷凍ケーキ、冷凍食品、冷凍食材等のカット、燻製等全体的に硬くなっている製品・食材のカット&スライスなど多岐に利用可能で自動投入から排出までをコンベヤで行う製造ライン化なども提案されていた。さらに食品だけでなく、いろいろな製品のカットやスライスにも応用可能である。
6-2. 株式会社サーフテクノロジー https://www.microdimple.co.jp/
サーフテクノロジーは(株)不二WPCの食品関連事業を分社して設立し、マイクロディンプル(MD)処理(写真13.)など独自技術を紹介していた。食品機械の性能を向上させる表面処理MD処理は、コーティングではなく、部材表面に形状を成形するだけで滑り性や付着抑制効果を発現させる表面改質技術である。ショットピーニング(衝突法)の一種で、一般的なブラスト加工と違いメディア(微粒子)を用いて超高速で投射を行うため寸法変化を起こさず、さらさらとした表面に仕上がる。これによりホッパーやシュート、ガイドなどに食品が付着しにくく、滑りやすいという特性を付与できる。さらにMD処理の一つであるAnti-Bac処理では、大腸菌や黄色ブドウ球菌を死滅させる効果が確認されており、滑り性と粉体付着抑制効果に加えて、抗菌効果も付与できることを紹介していた。粉体ハンドリング機器やコンテナ内面仕上げ、計量機器などへの利用用途が考えられる。
◇ 所見
「TOKYO
PACK」は、独のインターパック、米国のパックエキスポなどと並ぶ包装関連分野における世界有数の展示会であるが、昨年からのコロナ禍の影響により規模が縮小し前回の6割程度の出展規模での開催となった。食品、医薬品および化粧品といったいわゆる三品産業での包装分野での用途も多岐に渡り、固体、液体、粉体など各種に利用されていることから、環境配慮包装、ロングライフ包装・鮮度保持包装技術、生産性向上技術(AIやIoTおよび画像処理技術など)の導入動向を中心に視察した。いずれも三品産業におけるユーザー課題である。容器に付属されるストローレス対応学校給食用紙パック「School
POP」200ml(日本製紙製)やPET再資源化など包装容器での環境対策も多く見られた。各種企業向けに提案可能なテクノロジーやソリューション情報には今後も注視していきたい。
【出典先】
視察企業装置・機器写真は各社H.Pより出典転載
以上