◇「FOOD展2021」視察_2021.10.29

◇「FOOD展2021」視察_2021.10.29

会場:東京ビッグサイト 青海展示棟
主催:各ソリューション事務局
開催規模:168社 (ソリューション全体)、来場者数:11,126人 (プレス発表速報値)
開催期間:10月27日(水)~29日(金) 3日間

東京ビッグサイト青海展示棟展示棟前
東京ビッグサイト青海展示棟展示棟前

◇視察目的:
 主に「フードファクトリー」の食品工場エンジニアリング分野と「フードセーフティジャパン」の衛生管理・異物混入対策分野を中心に技術動向、市場情報の収集を目的に視察した。

◇全般的な展示内容:
 「フードシステムソリューション」「フードセーフティジャパン」「フードファクトリー」「フードディストリビューション」「惣菜・デリカJAPAN」「冷食JAPAN」の6つのソリューションで構成されている食品製造・大量調理・衛生管理・工場設備・物流を包括した食の複合専門展示会。

【フードファクトリー】
 本ソリューションの主な展示キーテーマは「自動化・省人化」「エンジニアリング・設計・改善」「工場設備・部品」「AI/IoT・生産性向上」「省エネ・停電対策」「労働災害対策」「環境対策」などである。さらに国内で初めて「乳製品製造」をテーマにした「乳製品製造・開発技術ゾーン」が併設開催されていた。

【フードセーフティジャパン】
 本ソリューションの主な展示キーテーマは「異物混入対策」「衛生資材」「フードディフェンス」「洗浄・殺菌」「検査・分析」などである。

◇注目したメーカーの製品・システムについて紹介する。

【フードファクトリー】

■ 食品工場向けエンジニアリング関連

1. 清水建設株式会社http://www.shimz.co.jp/

 食品工場を素早く建設する「シミズのトータルフードエンジニアリング」の提案。食品安全と生産性が両立できるよう生産・物流機器、情報システム及び建築を一体で取組むゼネコンならではの「トータルフードエンジニアリング」(写真1.) の利点について紹介していた。

写真1.清水建設ブース
写真1.清水建設ブース
写真2. 味の素エンジニアリングブース
写真2. 味の素エンジニアリングブース

2. 味の素エンジニアリング株式会社http://www.ajieng.co.jp

 PLANTAXIS®、他(自動化への取り組み、Maintenance & Refining)3Dスキャナを用いて得られる点群データで施設を丸ごと高精度に再現するクラウド型次世代設備管理サービス“PLANTAXIS®”を実演 (写真2.)。AI・IoTの活用と長年培ってきた匠のノウハウを融合し、製造現場のあらゆる情報を収集・見える化・分析することで、継続的なものづくり・新たな価値を創造・提供するシステム「AJEC Industrial DX Platform」やライフサイクルエンジニアリングにより各フェーズ(建設、運転・保全、事業)で必要な保全技術・技能を支援する「Maintenance & Refining (設備保全・改修、技術支援)」など紹介していた。

3. 日清エンジニアリング株式会社https://www.nisshineng.co.jp

 食品工場トータルエンジニアリングの提案、食品工場に関する様々な課題に対し、トータルエンジニアリング力を訴求する。日清エンジニアリングの最適な工場・プラント建設と生産設備を一貫した設計・立案、ユーザー目線で食品工場建設を提案できるとアピールしていた。工場写真やミニチュア模型 (写真3.) を使って実績を紹介していた。

写真3. 日清エンジニアリングブース
写真3. 日清エンジニアリングブース

4. キリンエンジニアリング株式会社https://www.kirineng.co.jp/

 国内・海外の食品工場建設の実績紹介・工場建設/リニューアルに向けた業務の進め方を紹介していた。ブースでは、動画やグラフィック、各種資料を取り揃え、国内・海外における数多くの食品工場の設計・建設実績で培った技術のノウハウを基に、工場建設で直面する課題解決のヒントなどをパネル紹介していた。

5. 三和建設株式会社http://www.sgc-web.co.jp

 食品工場の設計・施工の実績、HACCP認証取得の実績、生産エンジニアリングなどの紹介をしていた。食品工場専門で設計・施工をした技術をもとに食品関連の企業様が抱える様々な課題を多角的にサポートするなどの取組み紹介をしていた。

6. 株式会社竹中工務店http://www.takenaka.co.jp

 食の安全・安心、生産性の向上・省人化。BCP、省エネルギーなど総合エンジニアリングについて展示していた。『サステナブルな「食」の発展をめざして』をテーマに食品施設エンジニアリングの工場再編における課題解決技術を中心に、「脱炭素ソリューション」「IoT・DX」のパネル展示を行っていた。デモ展示/サイネージ展示では、バグキーパーLEDの展示などもされていた。

7. 中設エンジ株式会社http://www.ce-kk.co.jp

 食品工場構築エンジニアリング事例、設計・施工実績動画、省人化・省力化・自動化、植物工場、海外進出サポートなど各種動画(会社紹介動画、施工実績ほか)や展示パネルを交えて事例紹介していた。建築設計・施工から生産設備の設計・開発まで一括で手掛けている。店舗向け惣菜を供給するセントラルキッチンの事例では工程ごとの省人化を導入し、高度化ラインを構築している。ブース内動画では「じゃがいもの芽取りロボット」「冷凍コロッケの箱詰め自動化ライン」の導入事例を紹介していた。

■ 機械装置関連

1. アンリツ株式会社https://www.anritsu.com

 食品工場のX線検査機、金属検出機、重量選別機、自動計量機、総合品質管理システムを展示していた。高精度、高感度なピロー包装対応のかみ込み検査装置なども紹介していた。アンリツ製の重量選別が特定計量器に追加され、取引又は証明に使用されているものは今後検定の受検が必要となっているので要注意。 (経済産業省 計量行政H.P参照)

写真4. アンリツブース 「自動計量機」と「重量選別機」
写真4. アンリツブース 「自動計量機」と「重量選別機」

2. 株式会社ニッコーhttp://www.k-nikko.com

 高性能除水装置「スイトール」と協働ロボットを展示していた。コンパクトで静かな除水装置に、人手の代わりに協働ロボットがワークを投入するシステムを展示、実演デモを行っていた。「静音」「コンパクト」「除水力」「工具レス」「省電力」をアピールしていた。

■ 乳製品製造関連

「乳製品製造」をテーマにした「乳製品製造・開発技術ゾーン」

1. ニチラク機械株式会社http://www.nichiraku.co.jp

 バッチ式溶解分散装置(iMix-PRIM)、インライン溶解分散装置(NRKマルチミキサー)、試作用チーズバットなどを展示していた。
 iMix-PRIMは調合タンクに独自開発のシャーミキサーを搭載し、渦が粉体を素早くシャーミキサーへ誘導することで、粉体を手軽に素早く分散・溶解することを可能とした新しい装置 (写真5.)
 NRKマルチミキサー®は 「粉体溶解」「混合分散」「乳化」「気体混合」 適用でき、直接配管に取付けが可能なミキサー (写真6.)
 乳業飲料メーカーへ各種溶解分散装置を提案し、デモ動画により分かり易く説明するサービスをアピールしていた。チーズ作りに必要な試作用チーズバットやチーズ製造装置を紹介していた。

写真5. バッチ式溶解分散装置(iMix-PRIM)カタログ
写真5. バッチ式溶解分散装置(iMix-PRIM)カタログ
写真6. NRKマルチミキサー®の内部構造
写真6. NRKマルチミキサー®の内部構造

2. 株式会社野澤組https://www.nosawa.co.jp/

 チーズ・ヨーグルト用 DVSカルチャー(乳酸菌)などを紹介していた。またクリスチャンハンセン社製品など海外からの輸入商品を紹介していた。

3. 小川香料株式会社https://www.ogawa.net/

 和柑橘香料、北海道産原料を使用した乳系香料、抹茶香料等の日本産素材の香り、共同開発したこだわりのコロンビア産コーヒーエキスをサンプル展示していた。小川香料は日本ならではの自然の恵みに焦点をあて、新たな香りや食品素材を開発している。香りにこだわった最適な収穫時期・製法で自社製造した日本産素材の香りを中心に、乳製品に最適な素材について紹介していた。

4. 日本香料薬品株式会社http://www.nky-kk.co.jp

 食品香料・乳等を主原料とする食品(乳主原)を紹介していた。食品香料としてコーヒー香料で様々な特徴の製品をラインナップし、乳主原ではミルク感の付与、製品全体の風味の持ち上げ、オフフレーバーや嫌味のマスキング効果など各種香料の活用について紹介していた。

【フードセーフティジャパン】
■ 衛生管理・異物混入対策関連

1. 日立造船株式会社https://www.hitachizosen.co.jp

 生産ライン映像記録システム(AI画像判定装置/ラベルチェックナビシステム)、異物選別装置(形状・色彩異物選別装置/カット野菜向け異物選別装置) (写真7.右) などを展示していた。AI画像処理技術を用いることで、属人化していた検査工程を省人化・自動化するなど提案していた。

写真7. 日立造船ブース 「カット野菜向け異物選別装置」
写真7. 日立造船ブース 「カット野菜向け異物選別装置」

2. 株式会社クレオhttp://www.a-creo.co.jp

 炭酸次亜水生成システム、野菜洗浄機 (写真8.左)、容器洗浄機、器具洗浄機、、内箱洗浄省人化装置 (写真8.右)、各種洗浄剤などを展示していた。質の高い総合サニテーションを行うために衛生管理のレベルアップなどの課題に対して、洗浄機、洗浄剤、殺菌システムを組み合わせ上手な活用をするなどのアプローチ手法を提案していた。

写真8. クレオブース「野菜洗浄殺菌システム」(左)と内箱段積みシステム(右)
写真8. クレオブース「野菜洗浄殺菌システム」(左)と内箱段積みシステム(右)

【フードシステムソリューション】

1. 株式会社 中西製作所http://www.nakanishi.co.jp

 ガス自動炊飯などの調理設備・機器を中心に展示していた。フードテックジャパンの展示会にも参考出展されていた学校給食向けシステム「マルチワーカ」(写真9.) の展示がされていた。

写真9. 中西製作所ブース 自動化システム「マルチワーカ」
写真9. 中西製作所ブース 自動化システム「マルチワーカ」

 連続式過熱水蒸気調理機SVロースターからコンベヤで搬送された食パンをピッキング、更に中心温度を測定する温度センサをロボットに搭載して検品できるように改良されたラインを展示していた。ガス自動炊飯システム (写10.左) や2D図面から3D画像を生成するシステム (写真10.右) を紹介していた。

写真10. 中西製作所ブース「自動炊飯システム」(左)と「3D画像生成システム」(右)
写真10. 中西製作所ブース「自動炊飯システム」(左)と「3D画像生成システム」(右)

2. 日本調理機株式会社https://www.nitcho.co.jp

 省人化・非接触による自動システムのライン展示デモを行っていた。

写真11. 日本調理機株式会社ブース 「次世代洗浄システム」
写真11. 日本調理機株式会社ブース 「次世代洗浄システム」
写真11. 日本調理機株式会社ブース 「次世代洗浄システム」
写真11. 日本調理機株式会社ブース 「次世代洗浄システム」

 展示デモは「次世代洗浄システム」 (写真11.) の学校給食センター向け自動化設備の提案で使用後の食缶、食器類の保管コンテナからの取り出しをロボットで行い搬送コンベヤに供給して洗浄機への投入、排出するラインと食缶の残渣を自動計量した後、食缶を反転させて残渣を自動廃棄する省人化・非接触の自動化ラインシステムを実演紹介していた。

◇主催者セミナー

主催:日本ロボット工業会
『食品産業におけるロボット導入の基礎』と題した3テーマを聴講した。聴講セミナーの概要を以下に記す。
・テーマ名:「食品産業に向けた産業用ロボットとその導入事例の紹介」

講演者:川崎重工業 株式会社理事 精密機械・ロボットカンパニーロボットディビジョン
商品企画総括部副総括部長 真田 知典 氏

内容:労働力不足や深夜労働、長時間労働問題、品質問題など食品産業界のかかえる問題に対して、最新の技術と導入事例、また生産設備の上手な使い方などの紹介がされた。

事例:「薄切り精肉トレー豆乳」「お弁当の蓋閉め作業」「おにぎり積込み作業」「箱詰め出荷作業」「パンの切れ目付け作業」など

・テーマ名:「食品産業におけるロボット活用事例」

講演者:株式会社 ニッコー 営業第二部 部長 大場 勝 氏

内容:食品加工の基礎技術を有し、早くから食品加工に特化したロボットSIerとして多くの実績がある中から手掛けた代表的な事例が紹介された。

事例:「厚揚げ豆腐搬送およびトレー詰め」「シューマイ包装機投入ライン」など

・テーマ名:「食品製造省人化事例と経験からみた落とし穴」

講演者:株式会社 ケイズ ベルテック 代表取締役 里薗 勝成 氏

内容:食品製造の自動化・省人化に携わり55年。食品製造に付いては 誰でも行える作業と 熟練した作業者でないと行えない作業、そして過酷な環境下や重労働など様々。今回は裸食品と包装品を事例にとり、最も汎用性に富んだ作業に付いてロボットや自動機を用い、省人化を実現した内容を説明がされ、食品製造の場合は単純作業に於いても実際に行った後に見えてくる問題点(落とし穴)が多々存在し、食品の特性や気を付けることなど、今までに経験した内容を含めて事例が紹介された。

事例:「かまぼこラインの非接触ピッキングシステム」「袋入り冷凍材の段ボール詰め作業」など

◇所見
 本展は食品製造のあらゆるプロセスに関わる「食」の複合展示会である。食品業界の課題解決に向けての技術や情報を入手する場として参考になるソリューションが豊富である。
 食品工場の建設および生産ラインを総合的にエンジニアリングができるメーカーと衛生管理対策に取組むメーカーを中心に食品工場の機械・ロボット導入による自動化への展開を想定しながら視察した。スーパーゼネコン・サブコン系エンジニアリングメーカーはトータル的な食品工場・設備提案が必須である。機械装置・機器系エンジニアリングメーカーはIT技術の活用、省人化、省資源化、省エネルギーなどに対する取組がアピールポイントであると感じた。
 「乳製品製造」をテーマにした「乳製品製造・開発技術ゾーン」が新設されていたが、期待していたような製造設備・機器などの展示はされていなかった。製造設備・機器メーカーの出展がないのは寂しい。次回の展示会に期待したい。
 本レポートには取りあげていない他のソリューションにおいても興味深い商品や技術が展示、紹介されていた。

 本展で開催されていた主催者セミナーを聴講し、食品産業へのロボット導入が進んでいない現状についても再認識させられる事例紹介があり参考になった。

以上