2022/05/09
技術用語解説42『着香料 (Flavoring agent)』
1. 定 義
食品に香気を付与するために添加される物質の総称、狭義には食品衛生法に基づき指定されている食品添加物のなかで、用途として着香料と規定されているものを指す。現在、95品 目が指定されているが、エステル類などの化合物の総称を含んでおり、化学物質数としてはずっと多くなる。これらの着香料は別段の規定のあるもののほかは、着香の目的以外に使用することはできない。しかし、実際の食品への着香には、これらの合成着香料が単独で用い られることはなく、天然物から抽出した天然香料(ナチュラルフレーバー)と組み合せて(調合して)利用される。
2. 天然香料の種類
天然香料を原料から分けると、次のようになる。
(1) 植物性香料
天然香料の大部分を占めている。花を原料とするバラ、ジャスミンなど、果実(皮)を原料とするレモン、オレンジ、バニラなど、種子を原料とするアニス、ナツメグ、アーモンドなど、茎葉を原料とするローレル、ペパーミントなど、樹皮を原料とするシナモンなど、根茎を原料とするジンジャ、ガーリックなどが主なものである。原料から香料成分を分離するには、古くから水蒸気蒸留法や有機溶媒による抽出法が用いられているが、炭酸ガスを用いた超臨界ガス抽出法が開発され、芳香の保持に適した方法として注目されている。
(2) 動物性香料
エビ、カニ、ホタテなどの魚介類や、畜肉類を熱水で抽出したエキス(トラクト)と、ミル ククリームに微生物酵素を働かせた乳製品フレーバがある。
(3) 加工フレーバ
原料に加工処理を行って製造するものである。木材を乾留してつくるくん煙フレーバ 、原 料豆の焙焼によって生成するコーヒーフレーバなどがある。特に、アミノ酸と糖を原料とす るメイラード反応生成物は、調理フレーバに用いられる。
(4) バイオテクノロジによるフレーバ
酵素を用いた乳製品フレーバの生産が実用化している。ミルククリームにリパ ーゼを働かせることによりバターフレーバを、プロテアーゼを働かせることによりチーズフレーバを製造することが行なわれている。植物原料とくに花から得られる香料は、その存在量が少
なく、品質も不安定なことから、植物組織培養による生産が試みられている。しかし、植物の香気成分は二次代謝産物であること、フレーバは多数の成分が微妙なバランスをとっていることから、組織培養によるフレーバ成分の生産を実用化するには、なお多くの技術開発が必要である。
3. 着香料の形
調合された着香料は、食品に添加しやすいように、対象食品の性状に合わせて加工される。
(1) 水溶性香料(エッセンス)
40~60%の含水エタノール溶液、清涼飲料、乳飲料、冷菓用。
(2) 油性香料(オイル)
フレーバペーストとも呼ばれる、キャンディ、ビスケットなど向け。
(3) 乳化香料(エマルジョン)
油性香料を界面活性剤と混和し、水溶性としたもの。果汁飲料に混濁を付けるものはクラウディと呼ばれる。
(4) 粉末香料(パウダ)
デキストリンなどの親水性賦形剤の水溶液に香料を乳化した後、噴霧乾燥したコーティング香料と、ぶどう糖や乳糖などに香料を噴霧して吸着させたものがある。粉末スープなど向け。
2020年(R 02年)の統計によれば、国内で生産されている食品用香料は、数量で46,296トン、金額で128,596 (百万円)である。過去5年間の統計を比較しても、ほぼ横ばいで推移している。
以上
【参考文献・引用】
-
「食品香料リスト」日本香料工業会 HP
https://www.jffma-jp.org/flavor/safety/f-list.html -
「香料統計」日本香料工業会 HP
https://www.jffma-jp.org/profile/statistics.html -
「食品添加物の種類と用途例」日本食品添加物協会 HP
https://www.jafaa.or.jp/tenkabutsu01/siryou