技術用語解説52『エクストルージョン・クッキング (Extrusion Cooking)』

技術用語解説52『エクストルージョン・クッキング (Extrusion Cooking)』

 エクストルーダ (加圧押出機)を用いた食品加工技術をエクストルージョン・クッキングと呼んでいる。エクストルーダはプラスチックやゴムの成形機械として広く普及している が、食品・飼料分野においてもスパゲティ、マカロニ、スナック菓子、ペットフー ド等の製造に使用されてきている。1980年代から従来の1軸タイプの能力を超える2軸エクストルー ダを利用した新食品素材の製造、食品製造における品質向上、工程簡略化に注目が集まった。
 2軸エクストルーダの構造は基本的1軸タイプと類似しており、バレルと呼ばれる耐圧性 のフレームにスクリュが設置され、スクリュの回転にともない、バレル一端から投入された材料は移動し、ダイと呼ばれる出口より押し出される。移動中において材料は粉砕、混合、分散され、材料の充填によって加圧される。さらには外部より熱を加えることにより連続 的な高温高圧状態が内部で生じ、さまざまな現象が発生する。
 2軸化の利点はスクリュ回転 による材料移送様式が摩擦から機械的な滑りに変更される点にある。このため、1軸タイプでは困難であった高水分あるいは高油分条件の材料処理が可能になった。さらに、内部での低水分材料の自己発熱や高水分材料での逆流が抑えられるために、状況に応じたスクリュ種類の設置など適切な運転条件の設定が容易になり、結果として装置の利用範囲の拡大、製 品の品質向上が図られるようになった。
 2軸エクストルーダを用いたエクストルージョン・クッキングの例としては組織化植物タンパク製造や高食物繊維含有のシリアル食品等があげられる。大豆を主原料とした組織化植物タンパクは水畜産食品の副材料として利用される一方、2軸タイプの利用で繊維性が強調され、素材の大型化が可能になるにつれ、単体で唐揚げ素材として製造・販売されるものが上市されている。
 さらにスリミを主原料にした高水分の組織化物がカニ足様食品として開発されて市場に登場するきっかけとなった。 スナック菓子では2軸化で複雑な形状の製品製造が可能になったほか、複数のダイスや充填機を利用したスナック菓子内部にクリームやチョコレートを充填した各種のスナック菓子等への応用が広がり新製品開発に活用されるようになった。2軸タイプの優れた粉砕・混合性は、食感の良い食物繊維高含量(30~40 %)のシリアル食品の製造を可能にし、大腸がん抑制やダイエット食品として現在も急激に需要が伸びている。
 これら新素材的な製品製造に加えて、その連続性を利用することで従来の食品加工工程の簡略化の試みがチョコ レート、キャンディ製造や発酵飲料の前処理等 に多く応用されるようになった。特にデンプン加工においてはバイオリアクタ的な使用の可能性が検討される一方、デンプンの消化性の調節等を行うことで特有の生理機能を持った食品の開発等が現在も進められている。

図1. 2軸エクストルーダの機能と用途
図1. 2軸エクストルーダの機能と用途

 近年は、大豆などの植物由来の代替肉製造への応用なども顕著である。従来の製法で使われていた1軸タイプからの置き換えや、新技術導入に向け各産業用途での製造を目的とした大型の2軸エクストルーダの導入も行われている。

表1. 主な用途と製品例

主な用途 製品例
製菓・製パン スナック、煎餅、チョコレート、キャンディ、フラットフレット
水産加工 ちくわ、蒲鉾、魚肉ソーセージ、魚肉すり身加工品
畜肉加工 ハム、ソーセージ、ハンバーグ、畜肉加工品
乳加工 バター、チーズ
製粉・澱粉 パン粉、プリミックス、デンプン
大豆加工 豆乳、油、健康食品、大豆タンパク、代替肉
インスタント食品 スープ、ココア、コーヒー、ライスヌードル、コーンフレーク
飼料 ペットフード、家畜飼料、養魚飼料
未利用・低利用資源 米ぬか、おから、野菜、果物皮、魚の内臓
酵素原料の前処理 酒、味噌、醤油
その他 化学薬品、医薬品、ファインケミカルなど

さまざまな2軸タイプのエクストルーダの機能と用途は、 図1.表1.に示す通りである。2軸タイプのエクストルーダにおいては食品製造向けエクストルージョン・クッキングの研究報告も多くされているので参考にすると良い。

以上

【参考文献・引用】

  1. 技術レポート「成長が期待できる食品分野の新たな応用加工技術」
    木本技術士事務所HP  https://www.kimoto-proeng.com/report/553
  2. 「エクストルージョン・クッキングとその利用」野口 明徳、五十部 誠一郎 日本食品工業学会誌1986 年 33 巻 11 号 p. 798-804