2022/12/19
技術用語解説57『大豆タンパク(Soy protein)』
1.大豆タンパクとは
大豆タンパクは大豆から抽出されるタンパク質である。大豆由来の植物性タンパク質であり、アミノ酸スコア100の優れたタンパク質である。大豆タンパクそのものは白い粉末であるが、それに加工を施すことにより、いろいろな形態の加工食品となり上市されている。
2.大豆に含まれるタンパク質
今までの通説では、大豆に含まれるタンパク質は大豆全体の約35%を占めていて、2種類の主要タンパク質で構成されているとされてきた。その内訳は次の2種類である。
(1) グリシニン(約60%):血中コレステロールを低下させる効果がある
(2) β–コングリシニン(約40%):血中中性脂肪を低下させる効果がある
とされてきた。
しかしながら、2007年に開発された分離技術によって得た結果から、従来の通説とは異なり大豆タンパク質を構成する主要タンパク質は3種類であることが明らかになった。新たに得られた結果では、グリシニン(約40%)、β–コングリシニン(約20%)および脂質を会合しているタンパク質であるリポタンパク質(LP)が(約40%)で構成されていることが報告された。
この結果から、従来の分離方法で得られたグリニン画分やβ–コングリシニン画分には大量のLPが混在することになり、大豆タンパク質の生理機能がLPによるものである可能性が高くなった。詳細については今後の研究成果を待つことになる。
3.大豆タンパクのつくり方
大豆タンパクをつくるには、まず大豆から油分を抜いて、「脱脂大豆」をつくる。これを水と一緒に煮つめて、ろ過して大豆の外皮などからなる「おから」を取り除いて「脱脂豆乳」をつくる。最後にこれを乾燥すると、タンパク質含有量が90%以上の粉末状大豆タンパク質で「大豆由来のプロテイン」としてスポーツ選手向け商品として上市されている。
4.大豆タンパクを利用した主な商品
大豆タンパクは、各種スポーツ選手向けの「大豆プロテイン」の他に、いろいろな商品の開発に活用されている。代表的な商品について述べる。
(1) ソイミート
大豆を繊維状にして肉のよう(肉もどき)に見立てたものは、「ソイミート」、「ベジミート」「直物肉」といった名称で上市され、海外、特に東南アジアで市場が拡大している。ハンバーグなどのようにミンチ肉に混ぜるなどをすることで本物に近い商品が商品開発されている。
(2) 豆乳・湯葉
大豆を煮たて絞って得られる煮汁が「豆乳」であり、これはそのまま「大豆ミルク」の商品名で代替ミルクとして使用されている。さらに、この豆乳を加熱濃縮すると表面に薄い膜が張ってくるが、これをすくって膜状にしたものが「湯葉」である。生で食べる「生湯葉」や乾燥させて煮物に使って食べる「乾燥湯葉」がある。
(3) 豆腐
豆乳ににがり(硫酸マグネシウム)などの凝固剤を入れて固めたものが「豆腐」である。豆腐には絹ごし豆腐と木綿豆腐があり、絹ごし豆腐は豆乳とにがりを容器に入れて固めたもので、水分を多く含んでいて滑らかな舌触りが特徴である。
一方の木綿豆腐はこの固まった豆腐を、布を敷いた容器に入れて圧力を加えて水分を抜いたもので、しっかりとした食感とより濃厚な豆腐の味わいがあるものになるのが特徴である。
(4) 豆腐加工食品
豆腐を乾燥すると「高野豆腐」や東南アジアの伝統食品「テンペ」にすることができる。豆腐を焼いたものが「焼き豆腐」であり、油で揚げたものが「油揚げ」である。油揚げには、さらに豆腐を厚く切って揚げた「厚揚げ」、薄く切って揚げた「薄揚げ」がある。また豆腐を砕いてそこに細かく切ったひじきやにんじん、椎茸などを混ぜて球状に成形したものを揚げると「がんもどき」などの加工食品に応用されて我々の食卓にあがっている。
以上
【参考文献・引用先】
- 「初心者のための食品製造学」中島一郎 著 光琳
- 「食品製造に役立つ食品工学事典」 日本食品工学会 編 恒星社厚生閣