『最近よく聞くグリーントランスフォーメーション(GX)とは何か?』

 このグリーントランスフォーメーション、略して“GX”という言葉は、実は日本の経済産業省が提唱し始めたもので、世界的にはほぼ通じない日本独自の用語である。その意味するところは少しわかりにくいが、今年通称「GX推進法」という法律ができ、その正式名は「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」と言う。つまりGXというのは、気候変動を止めるための脱炭素そのものが目的と言うより、 それをきっかけにした“経済成長のための構造転換”を意味する用語になる。

 

今年国会で2つの法律が成立し、それを推進する戦略も閣議決定された。また先日、経済産業省が「東京GXウィーク」と銘打って脱炭素関連の国際会議を集中開催し、アジアを中心におよそ40か国が参加した。会期中には、日本が出す二酸化炭素をマレーシアに運んで地下に封じ込める初めてのプロジェクトに向け、同国の国営石油会社と協議を始める合意も交わされた。

 

そして、11日には東京証券取引所で、GXと深く関わる「カーボン・クレジット市場」が開設された。これは、企業や自治体などが再生可能エネルギーの導入や植林などでCO2の排出を減らせた分を株式のように売買する新たな市場で、188の企業や自治体などが参加している。排出量取引は既に各国で導入されていて、ようやく日本でも進み出したということである。

 

脱炭素社会に向けてはガソリン車からEVへの転換のように様々な産業で転換が求められている。GXはそれを後押しするもので、司令塔は政府の「GX実行会議」である。
後押しする分野は再生エネルギーなどに限らず、“次世代型”と呼ばれる原子力の新技術やCO2を地下に封じ込める技術、さらに火力発電に混ぜて燃やせばCO2を減らせるという水素やアンモニアなど、多岐に渡る。

 

これらに今後10年で官民合わせて150兆円以上の投資を呼び込む計画で、その呼び水として国が20兆円を支出予定である。財源としては「GX経済移行債」と呼ばれる国債を発行するほか、今後「成長指向型カーボンプライシング」と名付けた排出量取引などの制度も設けられる。先に述べたカーボン・クレジット市場もそれに向けた一歩といえる。今後20兆円の国の資金がどの分野に投入されるか熱い視線が注がれることになるだろう。

以上