2024/07/28
日本人選手の活躍が見離せなかったパリオリンピックが余韻を残して無事に終了した。パリ五輪は日本にとって大きな成功を収めた大会となった。金メダル20個獲得は海外開催の五輪では史上最多。金メダル40個ずつのアメリカ、中国に次いで3番目の数字だった。それに銀12個と銅13個を加えて総数は45個、メダルを獲得した競技は16に及び、日本のスポーツの多様性が見られる大会となった。
特に海外から招聘したコーチによる競技技術の向上が顕著に現れた大会でもある。例えば、フェンシング。団体で初めて金メダルを獲得したフェンシング男子フルーレは、東京大会の金メダリストでフランス人のエルワン・ルペシューコーチを21年から招聘し強化を図った。“新お家芸”とまでいわれるまでの素晴らしい結果を残すことができた。
さらにバスケットボール、バレーボールなども外国人監督やコーチを招聘し、世界と互角の戦いを見せてくれた。バレーボール男子日本代表。パリ五輪開幕前には世界ランキングが2位まで上昇し、1972年ミュンヘン大会以来のメダル獲得に期待が高まった。結果は準々決勝敗退となったが、日本に久しぶりにバレーボールの熱狂が戻った感じである。
その一因となったのが、フランス人のフィリップ・ブラン監督の招聘である。各国での指導経験を持つブランは2017年から日本での指導を始め、データ分析をもとにして最前線の理論を選手たちにインストール。それが選手たちのスキルとうまくブレンドされて、日本は強豪国と対等に渡り合えるようになった。
今大会で外国人の優れた監督やコーチにより成果を挙げた競技が注目を集めた一方、伝統のお家芸も、日本のコーチの指導のもとで結果を残した。お家芸の体操、柔道、レスリングといった競技である。日本で初めて開催された1964年の東京大会以来、それぞれ、この60年間に浮き沈みを経験しつつも、独自の指導方針を貫いてきた結果でもある。
体操は70年代からオールラウンダーの養成に力を入れており、今も一貫している。世界がパワー系の「つり輪」、パワーとバランスが求められる「あん馬」など、種目別のスペシャリスト育成に力を注ぐ中、日本はずっと6種目をこなす選手を育ててきた。内村航平選手、橋本大輝選手、そして今大会の岡慎之介選手と、4大会連続で個人総合王者が誕生しているのは一貫した取り組みの成果といえる。オールラウンダーかつ、つま先の美しさにまでこだわる日本の「完璧主義」が世界をリードしている証でもある。
柔道は金メダルの数こそ東京大会の9個から3個へと減少したが、柔道発祥の国としての面目は保てた。日本の柔道は単なる勝利ではなく、正しく、美しく勝つことを重視している。それは「相手を投げ、観客を魅了する。試合中だけでなく畳を降りる時の礼にいたるまで、五輪で柔道の手本を見せることにこだわっている」ことにある。
レスリングも注目だ。これまで日本はフリースタイルを得意としてきたが、今回はグレコローマンでも2個の金メダルを獲得できた。「フリースタイルは日本で強化できると思っている。グレコローマンは海外で外国人選手と合宿をすることで、選手が技術を身につけた成果」であり、格闘技は海外への武者修行が必要不可欠の時代になったと感じる。
海外での武者修行といえば、金メダリストのなかでも存在感を放った、陸上競技女子やり投げで前評判通りの実力を発揮した北口榛花選手である。マラソン以外の陸上競技の種目で、日本の女子選手が金メダルを獲得するのは史上初でもある。
北口選手の探究心はすごかった。19年、ヨーロッパ遠征中にチェコ人のデービッド・セケラックコーチのコーチングに興味を持ち、英文でメールを出して独力で師事にこぎ着けた。この行動力こそ金メダルの源泉であり、これまでの日本人には見られなかった資質だと感じた。本場でトレーニングするということは、日本にはない方法や発想を手に入れられるということだと語っていたことが印象的である。
近代オリンピックの創始者、ピエール・クーベルタン男爵の母国に1世紀ぶりに戻ったパリ五輪17日間の大会の幕を閉じた。楽しみが1つ無くなってしまった感がある。寝不足になりながら日本人選手の活躍を一喜一憂しながら応援した。日本人選手の活躍に元気をもらった。感動をありがとう。次のロス五輪での日本選手の活躍を期待している。
以上