2021/01/04
「温室ガス実質ゼロ」への成長戦略はどこに向かう?
昨年12月25日、2050年の温室効果ガス排出量の実質ゼロに向けた「グリーン成長戦略」を政府が発表しニュースとなって報道された。洋上風力発電や次世代エネルギーと期待される水素、自動車の電動化など、14の重点分野で数値目標や政府の支援策を盛り込んだ。民間の資金も呼び込んで技術革新を促し、関連産業の裾野を広げて経済成長につなげるというものである。
「2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量実質ゼロ)の実現は成長の制約ではなく成長戦略として経済と環境の好循環を生み出す」としている。 戦略では、二酸化炭素(CO2)排出量の約4割を占める電力部門の「脱炭素化が大前提」とし、再生可能エネルギーを最大限導入する方針を示した。 参考値としての位置づけだが、2050年に全発電量の約50~60%を再生エネルギーでまかなうとしている。現在は20%弱に留まっている。
発表の中でも注目したいのが、「洋上風力発電」である。再生エネルギーの主力電源化に向けた切り札と位置づけた点である。沿岸部での大量導入が可能で、部品点数も多いため、経済波及効果が期待できるとしている。
私自身も、企業で最後に携わった仕事が、実はこの洋上風力発電用の主要装置である「増速機」である。自動車や産業用ロボットなどに利用されている「減速機」の逆の使い方のものである。風力発電のブレードといわれる羽根は、低速で回転し、その回転力を増速してその増幅された力を利用して発電機で電気を起こす仕組みである。
欧米や中国など国外メーカーの優位性から見ると、技術的な遅れは否めない状況にある。
政府が地元自治体との調整などを主導し、発電容量を2030年までに1000万キロ・ワットに増やす。さらに50年を待たずに40年までに原子力発電所45基分に相当する最大4500万キロ・ワットとすると目標を定めた。
洋上発電は10年くらい前に色々試した結果、国内での技術的な遅れから海外との競争での優位性がなく、結論、再生エネルギーの主力電源化は困難と判断された経緯がある。
当時とは、状況が異なるが技術的な遅れをどう取り戻し、産業として確立するか、水素技術、電気自動車(EV)などの電動車と共に今後の動向を注視していきたい。
以上