『産業のコメが足りない!半導体争奪戦から見えてきた今の日本メーカー』

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『産業のコメが足りない!半導体争奪戦から見えてきた今の日本メーカー』

日本がかつて世界の半導体市場を席巻していたころをご存じだろうか?日米半導体の覇権争いがあったその後、韓国や台湾に半導体製造技術が流出してしまった苦い経緯がある。
私自身も機械設計技術者としてのスタートは半導体製造装置の「ダイボンダ」、「ワイヤボンダ」の設計である。半導体産業がなぜここまで今、注目を集めているのだろうか?

クルマを作るのに欠かせない半導体が不足し、日本をはじめ、各国の自動車メーカーが生産を減らすといった影響が出ていることである。「半導体が足りなくて自動車が作れない」なぜこんなことになっているのか?

直接のきっかけは、新型コロナウィルスによる影響である。半導体は自動車だけでなく、スマートフォンやパソコンなどあらゆる家電製品に使われ、「産業のコメ」とも呼ばれているが、巣籠もり需要の影響でIT製品が飛ぶように売れ、半導体も世界的な奪い合いになっていることが最大の理由である。一方、自動車の部品メーカーは、コロナ禍では自動車があまり売れないとみて、半導体の注文を減らしていた。ところが公共交通機関を敬遠して自動車を買う人が増えたことなどから、販売が急回復している。追加で注文しても半導体が手に入らず、部品も、自動車そのものも、生産できなくなってしまった。さらには、各国の外交や環境政策も、半導体の奪い合いに拍車をかけている面がある。

少し深堀して考えてみると、一つは米中対立による影響である。アメリカ政府が中国の半導体大手を規制する動きにあわせ、各社は在庫のための注文を増やしたことがいえる。また、ヨーロッパではグリーンエコノミー政策が推進され、省エネのための半導体の需要も伸びている。この影響、今後、どこまで広がるだろうか?

一部の半導体メーカーは夏までに生産を増やす意向で進められている。ただ、半導体の需要が伸び続ける中、影響が長びく可能性を指摘されている。となると、どう対応していけばよいか?

足元では、半導体メーカーへの働きかけ、調達や在庫計画の見直しが必要となることは想定できる。そして大事なのは、より長期的な戦略をどう考えるかでる。デジタル化・脱炭素化という時代の流れで自動運転や省エネの技術が進み、必要となる半導体の数も増えるであろう。
日本は、生命線である半導体の調達を海外に大きく依存している。アメリカでは、アップルのように業種の垣根をこえ、自らも半導体の開発に乗り出した企業もある。日本は、どうするのか、その戦略が問われることになる。

そのような状況の中、重要なことは世界の半導体産業の裾野を日本メーカーが支えていることだ。半導体の製造や検査に用いられる装置分野では東京エレクトロンやレーザーテックなどが世界的な競争力を発揮している。前工程ではチップの基盤であるシリコンウエハーの供給面では信越化学が高いシェアを獲得している。後工程に関しても、半導体のパッケージングに用いられるエポキシ樹脂の供給において、住友ベークライトが世界トップだ。また、イビデンはパッケージングに用いられる微細な基盤や配線板に関して競争力が高いことをご紹介しておく。

つまり、半導体産業においては今でも日本企業の精密機械や素材を生み出す技術が欠かせないことがわかる。これからも“産業のコメ”となる装置技術をもった日本メーカーの戦略的なアプローチに注視していきたい。

以上