2021/05/15
『真空超電導リニアは最高時速1000キロメートル』
久々の映画鑑賞である。題名となっている「真空超電導リニアは最高時速1000キロメートル」実は、主人公・江戸川コナンが難事件を次々と解決する人気マンガ「名探偵コナン」の劇場版最新作映画「名探偵コナン 緋色の弾丸」の中にでてくる高速鉄道のことである。
本作は東京-名古屋間で建設が進められているリニア中央新幹線を彷彿とさせる真空超電導リニアが登場し、ストーリーにも大きく関わっている。真空超電導リニアは最高時速1000キロメートルという設定で、新名古屋駅と芝浜駅を結ぶ。芝浜駅は東京に新設される駅とあり、新名古屋駅は2005年まで名古屋鉄道の駅名として存在した。現在、名鉄名古屋駅と改称されているので、一応は新名古屋駅も芝浜駅も架空の駅という位置付けになる。
本題である「真空超電導リニア」の技術動向について少し触れることにする。
JR東海が運行を計画しているリニア中央新幹線は、実験線で最高時速603キロメートルを記録。あくまでも最高時速603キロメートルは実験での記録にすぎず、JR東海はリニアの最高速度を公式的に時速500キロメートルとしている。
次世代の超高速鉄道に関する世界市場では、日本、アメリカ、EU、中国による官民あげた争奪戦が激化している。この分野においても、高をくくっていると、先行している超高速鉄道の技術、日本の新幹線とリニアモーターもガラケーのようにガラパゴス化しないか危惧している。
近年アメリカが超高速鉄道の開発に本腰を入れ始めている点は注視する必要がある。
電気自動車で世界をリードするテスラの起業家として知られるイーロン・マスクらによって2013年8月に公表された次世代交通システム「ハイパーループ(Hyperloop)」である。従来の超高速鉄道と根本的に異なるのは、始発駅から終着駅までを「真空チューブ」または「減圧チューブ」で結び、その中に浮かべたカプセル型の車両を走行することで、空気抵抗と摩擦抵抗を限りなく減らし、より低コストでより高速な移動を実現するものである。
「ハイパーループ」の最高速度は時速約800マイル(約1,287km/h)に達する。リニアモーターカーの約2倍、航空機に匹敵する速度でロサンゼルス⇔サンフランシスコ間(610km)を約30分、東京⇔大阪間をわずか20分で移動できる速度だ。車両には永久磁石を使用し、軌道には受動的コンダクタを埋め込んでいる構造である。日本の超電導リニアのように冷却した超電導磁石を使わないため浮上システムに電力を必要としないことが大きな違いである。
注視すべく世界の動きを見てみると、中国がアメリカとしのぎを削り開発を進めている。2014年には、世界初の「真空チューブ超高速リニア鉄道」に乗客を搭乗させた状態での環状軌道試験を成功させたという発表をしている。
そうした現実世界とも微妙に連動しているコナンの世界観だが、非現実的とも思える時速1000キロメートルで走る真空超電導リニアも決して荒唐無稽の産物とは言い切れないことをお伝えしておく。今はフィクションでしかないが、いずれ現実となる可能性を秘めている。
日本の超高速鉄道も新幹線とリニアモーターカーがあるからと、うかうかしていられない。かつて日本が世界をリードしていた技術でさえ、今では他の国の後塵を拝するようになっているものも多い。世界を現在リードしている技術と運用レベルにあるうちに鉄道技術立国の威信を賭けて、さらなる次世代交通システムの開発を進めることを待望する。
以上
【出所】
公開ポスター画像:劇場版『名探偵コナン 緋色の弾丸』公式HP
「ハイパーループ(Hyperloop)」イメージ画像:2013年8月公表テスラプレスリリース