『そもそも〝空飛ぶクルマ〟とは、どのような乗り物？』

　現在、開発が進められている〝空飛ぶクルマ〟が話題になっている。日本でも、近い将来、人を乗せたこうした乗り物がビルの合間を飛び、空を飛び交うようになるかもしれない。
そもそも〝空飛ぶクルマ〟とは、どのような乗り物か？はっきりした定義はないが、一般的には、「電動で動く複数のプロペラを使って、垂直に離着陸できる。そして、いずれ、パイロットなしで、自動で運航できるようになる（例えば、利用する人が、ボタンを押すだけで、あらかじめ指定した目的地に向かうようになる）」このような乗り物とされている。

Q&A形式で考えてみよう。

Q1.道路も走れるのか？

A1. いろいろなタイプがあるが、今、開発が進められている主流は、道路を走らないタイプである。なので、ドローンの技術を使った「電動ヘリコプター」と言ってもいいかもしれない。ただ、今のヘリコプターと比べると、身近に利用できるようになると期待する声が上がっている。

Q2.空の移動方法は、どう変わるのか？

A2. 電動。つまりエンジンを使わないので、ヘリコプターより音がより静かで、排気ガスを出さない。
機体の構造も、より単純で、部品の数が少ない。ですから、量産化が進めば機体の価格や整備のコストを安く抑えることができる。そして将来パイロットなしで飛行できるようになると運航のコストも安く抑えられる。
狭い場所に離着陸できることから、住宅街を含め離着陸できる場所が大幅に増える。
このようなことが、期待されている。

身近に利用できるタクシーのような形態も考えられる。例えば、会社に近いターミナルから、仕事先の近くへ。あるいは、帰宅を急ぐ人を都心から、自宅近くへ運ぶ。早く移動するための、空のタクシーのような使い方になり、さらに、普及が進んで一回の利用料金が数千円程度になれば便利さを感じることができる。

Q3.いつごろ実現できそうか？

A3.世界の開発の状況を見ると、遠い未来の夢物語ではないと感じる。先行しているのは欧米のベンチャー企業である。
例えば、ドイツの企業（ボロコプター社）が開発した2人乗りの機体。2019年に、シンガポールで試験飛行を成功させてニュースになった。2023年には、機体の安全性についての証明をヨーロッパでとって、世界で事業化に乗り出す計画が進んでいる。
また、アメリカの企業（ジョビー・アビエーション社）が開発している5人乗りの機体で、試験飛行を重ねていて、アメリカで安全性についての証明をとり、2024年の事業化を目指している。

さらに、国内のベンチャー企業（スカイドライブ社）が開発した機体では、去年、ネットで区切られた空間ではあるが、人を乗せた試験飛行を成功させた。今後2人乗りの機体で、国内で安全性についての証明をとって、2025年の事業化し、大阪で開催される万博での披露を目指している。

そして、この〝空飛ぶクルマ〟は、国内の産業界からも期待が寄せられている。理由は、国外を含め量産化が進めば、組立や、素材・部品といった日本のものづくりメーカーに参入のチャンスが増し、国内で飛ぶようになれば、運航サービスの提供、通信や管制システムの構築、それに離着陸する施設の設置・運営など新たな市場が広がることも期待されていて、実際に、名乗りをあげる企業も今後増えると考えられているためである。

ただ、実現までには、いくつもの課題があり、なんといっても、安全性。そのための技術開発である。

Q4.空を飛ぶだけに、安全性の課題は何がある？

A4. 命に関わるので、なにより大事。この〝空飛ぶクルマ〟。法的には、航空法上の「航空機」として、航空機並みの安全性が求められることになる。まずは、安全性についての国の証明をとれるかが、事業化に向けての高いハードルとなる。それがないと国内で飛ぶことができない。ただ、そのためのルール作りも、これからの課題としてあげられている。

Q5.ルールにはどんなことが考えられている？

A5. 航空機並みの安全性と言っても、具体的な基準をどうするのか。欧米とも連携をしながらルールを作ることが求められることになる。
また、機体そのものの安全性だけでなく、パイロットの免許基準をどうするのか、飛ぶルートをどうするのか、例えば、都市では川の上に限るなど、一定の制限をかける必要があるか、都心や住宅街で、どのような場所に離着陸することを認めるのか、などこうしたルールも、これから検討することになってくる。

このようにまだまだ課題が山積している状況であるが期待も大きい。空飛ぶクルマが日常目にすることが普通になるような取り組みを政府、開発企業には期待するとともに、さらに社会全体が安全を担保された状態で受け入れられるように課題解決に向けた情報発信を積極的に行ってもらいたい。

以上