2022/06/06
『値上げラッシュの日本。食料自給率38%で大丈夫?』
値上げラッシュが相次いでいる今、私たちが食べるコメや肉などがどの程度、国産でまかなわれているかを示す「食料自給率」。最新のデータを農林水産省のホームページで確認してみると公表されている令和元年度のデータではカロリーベースで38%、生産額ベース66%という結果である。日本は食料自給率が低いイメージがあるけど、カロリーベース38%ってやっぱり低い?大丈夫?
食料自給率が38%ということは、食べているものの6割は輸入に頼っているということになる。日本の食料自給率はどういう状況なのか?
日本の食料自給率は、低下傾向が続いている。ピークだった1965年度は73%あったが、2000年度以降は、40%前後の水準で低迷してる状況である。
政府は、2030年度に食料自給率を45%まで引き上げるという目標を掲げていたが、海外情勢が大きく変わってしまった現状を鑑みると達成には程遠いと感じる。コメなどは、ほとんどが国産であるが、なぜ自給率が低いままなのか。そのからくりは品目によって、自給率が大きく異なるからである。
主な品目についてカロリーベースを基準にした自給率データで確認してみよう。
コメ98%、魚介類54%、大豆22%、畜産物15%、野菜76%、果物32%、小麦17%、油脂類3%である。コメをはじめ野菜や魚は、比較的自給できている一方で、畜産物やパンに使われる小麦などの自給率が低いために全体を押し下げていることが分かる。スーパーに行くと国産の牛肉や鶏肉などは普通に多く見かけるが、それでも畜産物の自給率は15%であることから、ここにも何かからくりがありそうである。
実は、国内で育てられた牛や鶏でも食べるエサが海外から輸入したものであれば、その分は自給したとは見なされないからである。例えば、鶏の卵は96%が国産であるが、鶏のエサとなるトウモロコシなどは海外に依存しているため、自給率は12%まで下がってしまうのである。牛肉や豚肉なども同じ理由である。
食生活の多様化によりこうした畜産物などの消費が伸びる一方で、コメなどの自給率の高い品目の消費が減っているため、どうしても全体の自給率が低くなってしまう。ただ、いつでも安定的に食料が輸入できるわけではない。実際、新型コロナウイルスの感染拡大の影響やロシアのウクライナ侵攻などの影響で特に小麦の主要生産国どうしの戦闘が長期化するなか品不足が国内外でも発生している。このことからも海外で何か起きた場合でも食生活をある程度、維持できるようにしておく必要がある。
海外からの輸入がすべて止まった場合、どうなってしまうのか?
あくまでも想定であるが、農林水産省によると、カロリーの高い「いも中心」に、農地を最大限活用して作付けすれば、国内の生産だけで必要なカロリーはまかなえると試算されている。そうならないためにも食料自給率を高めていくことが必要である。ただ、海外からの輸入自体が悪いわけではない。さまざまな国の食材がいつでも身近にあるということは、暮らしを豊かにする。
経済力がある国で食料の輸入が多くなるのは、当然のこととも言える。アメリカを見ても自給率が130%と100%を超えているが、食料品の輸入額も1300億ドルを超え、世界トップクラスである点は注目しておくべきであろう。
大切なのは、豊かさを享受しながらも国内の食を安定的に維持できるよう基盤を整えておくこと、そのバランスが今求められている。
以上