2023/05/22
2023年も2万品目を超える怒涛の食品値上げラッシュが続いている。こうした中、食品メーカー各社による値上げの発表日から実施日(出荷)までの日数差=値上げ日数が、昨年と比べて長期化の傾向にあることが報じられている。
2022年以降の国内の主要な食品や飲料メーカー195社・約4万5000品目の値上げデータを基に分析した結果を見ると、2023年1 – 6月までの値上げ日数(ターム)は、平均70.9日となっていた。前年同期の67.5日、22年通年の68.4日に比べても長く、余裕を持った「計画的な値上げ」が浸透している可能性がある。値上げ日数を期間別にみても、23年1 – 6月は発表日から実施日まで「2カ月以上」が8割を占め、前年に比べて高い割合を占めている。
主な食品分野別にみると、「加工食品」は同じ1 – 6月間で前年比3.9日早い71.6日だった。一方、醤油などの「調味料」は同7.5日遅い82.9日、ポテトチップスなどの「菓子」は13.0日遅い67.8日だった。チーズなどの「乳製品」は約1カ月(20.3日)遅い54.3日で、いずれも値上げ日数に長期化の傾向がみられる。
背景には、値上げに対する「スタンスの変化」が要因の一つにあげられる。2022年は、特に4月以降の国際的な原材料高や原油高、さらに急激に進んだ円安の影響で大幅なコストアップに直面したものの、多くの食品で「値上げ慣れ」しておらず、価格アップへの抵抗感から価格の据え置きや「実質(ステルス)値上げ」などで対応する状態が続いた。
さらに原材料価格の上昇ペースが企業努力で制御可能な範囲を超えた企業が相次ぎ、採算確保のために価格改定を急いだケースが多く発生した。特に急激な円安進行の影響が直撃した11月は値上げ発表から実施日まで46.2日と最も短く、差し迫った「緊急値上げ」の動きが目立った1年であった。
2023年は引き続き原材料費の高止まりに加え、輸送費や電気代の高騰でもコストが増えている。こうした中、企業・消費者側双方で値上げを「やむを得ない」と捉える認識の広がりもあり、コスト増分について柔軟かつ計画的に価格転嫁を行う企業が増えている。そのため、足元の原材料価格動向や採算ラインなど値上げの前提条件を複数設定するケースもあり、22年に比べ値上げに対する抵抗感が薄まっていることも「計画的値上げ」を後押しする要因となっている。
ここのところ、小麦の取引相場低下を背景にしたパスタの値下げなど、一部の製品では価格引き下げの動きも見られている。ただ、多くの食品では原材料高など引き続き値上げ圧力が強く、少なくとも今秋までは断続的に値上げが続きそうである。消費者側でも生活防衛に向けた行動が必要かもしれない。
以上
【参考文献・引用先】
- 「「食品主要195社」価格改定動向調査 ― 2023年5月」帝国データバンク
- 「値上げラッシュの日本。食料自給率38%で大丈夫?」2022/06/06 ブログ
木本技術士事務所HP https://www.kimoto-proeng.com/column/2603 - 「2022年に値上げした、これから値上げする食品は?」2022/05/23 ブログ
木本技術士事務所HP https://www.kimoto-proeng.com/column/2571