『オレンジ果汁不足・高騰が相次ぐことから市場減少か⁉』

 4月にも『オレンジ飲料 相次ぐ販売休止 減産で輸入果汁高騰』のニュースが話題になっていた。その後の状況が気になって百貨店の食料品売り場やコンビニエンスストアなどを見てみたが現在も品薄の状況が続いている。

 国内飲料メーカーによるオレンジジュース商品の販売休止が継続している。主産国での減産などで世界的にオレンジ果汁が不足し、価格も高騰しているためだ。国内で流通する果汁のうち約9割が輸入品と推計され、絶対量が足りていない。事態の収束が見通せない中、国産果汁の確保に動く国内メーカーも出始めている。

 森永乳業のオレンジジュース商品「サンキスト 100%オレンジ」(200ミリリットル)の販売を果汁原料がなくなり次第、休止すると発表したその後2ヶ月が過ぎ店頭の商品棚からは姿がなくなっていた。

 同様に雪印メグミルクは「Dole オレンジ 100%」について、200ミリリットルを除く1000ミリリットル、450ミリリットルの販売を2023年4月上旬から休止している。さらにアサヒ飲料も、「バヤリース オレンジ」(1.5リットルペットボトル)の販売を23年12月1日出荷分から販売休止し、販売再開の見通しは立っていないようである。

 背景にあるのが、世界的な果汁不足と価格高騰だ。主要な輸入先であるブラジル産の不作で21年の輸入量は減少。その後も、同国での23年の大雨被害や、それに伴うカンキツグリーニング病のまん延などの影響で、オレンジ果汁の不足感が続いている。

 財務省の貿易統計発表によると、3月の輸入オレンジ果汁の価格は、前年同月比69%高の1リットル620円で、5年間で2倍になった。円安の影響や新型コロナウイルス禍の落ち着きで業務需要が高まっていることも重なり、価格の上昇傾向が続いていた。

 輸入果汁不足が深刻化する中、国産果汁を積極的に利用する動きも出てきた。JA全農子会社の協同乳業は、国産果汁だけを使用した飲料「農協果汁」を14年ぶりに復活。4月から販売している。商品販売を通して果樹産地を下支えする様子が顕著である。

 国産柑橘果汁の需要増の好機だが、国内の柑橘産地は高齢化などを背景に生産基盤の弱体化が進んでおり、供給力の確保が課題となる状況も見られる。
柑橘果汁の国産シェア奪還の好機で国産柑橘果汁の増産が求められるが、原料取引価格の安さも障壁となっている。

 国内柑橘産地の生産者によると、輸入果汁高騰を受けてこれまで取引のなかったメーカーも含めて国産柑橘果汁に対する問い合わせが増えているが、「農家数の減少や今後の干ばつなど異常気象の常態化を考えると、対応は難しい」という状況だ。別の産地生産者は、今後の柑橘の生産基盤強化と国産果汁の安定供給を行うために適正価格での継続的な取引を各飲料メーカーには期待したい。