『陸上界を席巻する厚底シューズはどうなるか』

2020年東京オリンピック開催が約半年と迫った年末に驚きのニュースが流れた。
陸上長距離界で厚底靴の今後の行方が注目を集めている。

米国スポーツ用品大手のナイキが2017年に発売した「ヴェイパーフライ」シリーズである
この厚底靴を履いたランナーたちは、好記録を連発している。たとえば、男女マラソンの世界記録保持者など、履いた選手の好タイムが相次いでいることからも注目されるようになった。それらの結果を受けて世界陸上競技連盟(世界陸連)が規制すると英国メディアが報じたことに端を発している。

スポーツの世界の道具の進化は過去にもいくつか大きく取り上げられることがあった。
最初に浮かぶのは競泳である。北京オリンピックを控えた2008年、英国スピード社の水着「レーザー・レーサー(LR)」で驚異的な記録が軒並み生まれた。体を締め付けて断面積を抑え、水の抵抗を減らす先鋭的技術は効果が抜群で、同オリンピックや世界選手権で多くの選手が使用し世界新記録を連発し「高速水着」は2010年から使用禁止となった。
東京オリンピックで実施される男子の個人記録として14種目の半分が破られていない。

もう一つ記憶として残るのが、1998年長野オリンピックの前年である。スピードスケートでは刃が靴のかかとから離れ、力を氷に伝えやすい構造の「スラップスケート」が急速に普及していった。オリンピックではその対応で明暗が分かれる結果となった。

この厚底シューズは国内の長距離選手の使用率が8割超となっている。構造は厚い底に炭素繊維のプレートを挟みこんでクッション性、反発力を高めている。価格は約3万円。
今年の箱根駅伝でも多くの選手が履いていたことからも、効果は多くの選手や指導者が認めている。
オリンピックを半年後に控えたこの時期である。陸上の競技規則で「不公平な助力や利益を与えるような」靴は禁止だが、跳躍競技種目以外は底の厚さに制限はないという。

技術者や職人の道具と一緒で選手がそれぞれ体になじませるために靴を履きこなし体づくりをすでに行っている状況である。靴の使用が禁止となり、新たな靴で体を作り直したりすることで走るバランスが崩れたり、足を痛めたりしないか気になるところである。
日本の長距離選手には感動と記憶に残る活躍を期待したい。いずれにしても早めにはっきりしてほしいものである。

以上