2020/06/30
新型コロナウイルス対策の方向性を主導してきた政府の専門家会議が突如、廃止されることとなった。背景には「十分な説明ができない政府に代わって前面に出ざるを得なかった」会議メンバーによる苦い経験が政府にあるからであろう。会議は国内で流行が広がった2月、感染症専門家を中心に置かれ、「人と人の接触8割減」「新しい生活様式」「3密回避」などを次々と分かりやすい言葉で新型コロナウイルス感染対策の提言を積極的に出していた。
政府は提言を「錦の御旗」とし、国民に大きな影響を及ぼす対策を実行に移した。
その結果、専門家会議が政府のコロナ対応を決めているように映り、会議メンバーは批判の矢面にも立つことになった。会議の存在感が高まるにつれ、経済・社会の混乱を避けたい政府と事前に擦り合わせる機会が拡大することになる。
5月1日の専門家会議の提言では緊急事態宣言の長期化も念頭に「今後1年以上、何らかの持続的対策が必要」とした原案の文言が政府の意向により削られた結果、会議の方向性をめぐり会議メンバー間でもぎくしゃくしている様子が垣間見えてきた。
後手後手だった政府より、結果的に存在感を示すようになった同会議を煙たがった官邸の焦りを指摘する声もあがっていたと聞く。
24日夕、東京都内で会見していた専門家会議の尾身茂副座長は、記者から西村康稔経済再生担当相が会議廃止を表明したことを問われ、「え?もう1回言って」と、戸惑いをあらわにしていた。専門家会議の見直し自体は、5月の緊急事態宣言解除前後から尾身氏らが政府に打診していたことである。この日の会見では、政府の政策決定と会議の関係を明確にする必要性を訴えていた。そのさなかでの政府の発表は後味の悪さが残るものだった。
最後はボタンの掛け違いなのか。政治とはそういうものなのだろうか。だとすれば、新設される分科会で専門家が表に立つことはもうないのではないかと懸念される。
政府が全国の学校に一律で休校を要請した際、同会議メンバーの総意では、「国民への負担が大きく、現時点では取るべきでない」と明言をしたはずである。
科学的根拠を持って、客観的に言うべきことをずばり言う。ご意見番としての専門家の姿勢に信頼や誠実さを感じていた。それゆえ、突然の「廃止」に不安を覚えるのは、分野は違えど“専門家”といわれる方々も同じではないでしょうか。
以上