2022/10/03
◇「FOOD展2022」視察_2022.09.28
会場: 東京ビッグサイト 東展示棟 4 ~ 6ホール
主催: FOOD展ソリューション事務局
開催規模: 約170社 (ソリューション全体)、来場者数:37,896人
(プレス発表速報値)
(注)来場者数は本展に入場したのべ人数(同日内の再入場を含む)
開催期間:2022年9月28日(水) ~ 30日(金) 3日間
東京ビッグサイト展示棟前
◇ 視察目的:
食品工場改善設備・エンジニアリングを展示する「フードファクトリー」、食品物流マテハン・資材を展示する「フードディストリビューション」を中心に視察し、さらに本展示会主催者セミナーを聴講し、市場動向・情報収集を行う。
◇ 全般的な展示内容:
食品の総合展示会でとして給食、食の安全・安心、工場設備・機器、食品物流、食品EC、惣菜、スイーツ、冷食などをキーテーマにしたテーマ別専門展。
「フードシステムソリューション」、「フードセーフティジャパン」、「フードファクトリー」、「フードディストリビューション」、「惣菜・デリカJAPAN」、5つのソリューション。
◇ 注目したメーカーの製品・システムについて紹介する。
1. TBグローバルテクノロジーズ株式会社
https://www.tbgtech.co.jp/
TBグローバルテクノロジーズは、流体荷役装置ローディングアームや、スイベルジョイントなどエネルギー関連機械・設備を中心に取り扱う企業である。
「サニタリ仕様スイベルジョイント」が展示されていた。食品・飲料工場における流体配管などにおけるホース根元に装着しホースのねじれを防止、抽出機や充填機などの配管振替え、計量器などの上下伸縮可動部などの用途での活用が可能である。回転摺動部の部品構成も3つのPTFEパッキンで構成されていて非常に摺動抵抗も小さくスムーズな回転や複数組み合わせることで3次元的なスライドもできることから、免震配管システムとしての応用実績もあると説明を受けた。
2. 徳島大学大学院社会産業理工学研究部 & ダイカテック株式会社 (共同出展者)
https://www.chem.tokushima-u.ac.jp/C4&
https://e-daikatech.jp/
徳島大学大学院社会産業理工学研究部は、膜分離および吸着を中心とした分離工学分野の研究を行っている。共同出展者のダイカテックは、
「マイクロ研磨加工(以下F研磨とする)」を施した金属加工技術に強みを持つ企業である。F研磨を施した金属製伝熱面での大幅な伝熱性向上技術として事例紹介をしていた。F研磨を金属製伝熱面に施し、沸騰条件下において飛躍的な伝熱性向上を実現した。この技術を導入することで食品産業への適用により大幅な省エネを達成できるとアピールしていた。
3. 株式会社ビーエムティー
http://www.pm-t.com
ビーエムティーは、仏iFollow社の正規日本代理店として日本国内における「iLogistics」の導入支援を行っている企業である。
「iLogistics」は、常温(20~40℃)、冷蔵(-5℃~)、冷凍(-30℃~)という3つの異なる温度環境下で自律搬送を行える耐寒型AMRである。温度調整システムにより、冷凍庫および冷蔵庫から常温の倉庫などに移動する際も、結露によるショートの心配がない。LiDARセンサーによる360°全方位障害物検知機能を有しており、充電も自動で行うため、人がいない夜間作業にも対応できる。現在、可搬重量は300kg、600kg、1,000kgに応じて3モデルをラインアップ。1,500kgを準備中と説明があった。
4. 株式会社ダイフクプラスモア
http://www.daifuku-carwash.jp/
ダイフクプラスモアは、洗車機で培った洗浄・乾燥技術やマテハンシステムに強みを持つ企業である。洗浄・乾燥技術やマテハンシステムのノウハウを活かして買い物カゴの洗浄を自動化した
カゴ洗浄装置「Basket Washer」(バスケットウォッシャー)を初めて実機展示。ユニット構成は、旋回コンベヤ⇒段ばらしユニット⇒反転ユニット⇒洗浄ユニット⇒乾燥ユニットとストレージコンベヤを組み合わすことで最大450個まとめての洗浄処理能力を持つ。
店舗向け ドラム式「バスケットウォッシャー」も展示されていた。洗浄と脱水作業を見える化することで店舗利用者への衛生面をアピールしていきたいと説明があった。運用方法や設置スペースなど検討の余地があると感じる。コロナ禍での需要は期待できる。
5. 株式会社中西製作所
http://www.nakanishi.co.jp
厨房機器システムを組み合わせた自動化・省人化に強みを持つ企業である。食器洗浄機とチトセロボティックス製の調理ロボットを組み合わせ、洗浄工程における食器の整理や仕分け作業をライン化した
「省人化食器洗浄システム」が展示デモで紹介していた。展示デモでは蓋付食器を人がラインへ供給し、最初に蓋をとる⇒残飯をふやかす⇒食器とトレイを反転・分離⇒洗浄⇒整理・仕分けの順で洗浄ラインが構成されていた。この新システムは、病院や学校など複数の施設向けに大量調理するセントラルキッチンへの導入を目指したいと説明を受けた。食器投入も自動化することで、さらに省人化・省力化に貢献できる。
6. コネクテッドロボティクス株式会社
https://connected-robotics.com/
コネクテッドロボティクスは、店舗向け食品製造設備の開発を主にするスタートアップ企業である。
「AI検査ソフトウェア」は、惣菜盛り付けの際の噛み込み有無について、AI検査を行う様子をデモンストレーションしていた。食品は時期やロットによって形や色味が変わるため数値化が難しく、人による検品が主流であることから、食品検査に特化したAI・画像認識の技術を活用することで「人間的な曖昧な感覚」を数値化し、不定形な食材を高速に確認、人と近い感覚でOK
/ NG判別を行うことを可能とするものである。複数の不良条件が混在した場合でも検品ができると説明があった。
「惣菜盛付ロボット(Delibot)」展示デモ機は、ポテトサラダ・和惣菜など複数の惣菜を扱えるデモンストレーション用のモデルとして紹介していた。従来、野菜などの不定形物や粘着性の高いポテトサラダのような食材をロボットが扱うのは技術的に難しいとされている。また少量多品種で、曜日や時間帯によって段取り替えが多い惣菜製造工場では自動化が進んでいないという課題に対して、このロボットは決められた重量の食材や具材を把持で、製品トレイに盛り付ける作業工程を自動化するものとして提案していた。また、惣菜盛付後のトレーパックの容器蓋閉ロボットについてもパネル紹介していた。
7. レオン自動機株式会社
https://www.rheon.com/
レオン自動機は、食品機械のパイオニアであり、包餡機に強みを持つ企業である。より衛生的なステンレス仕様の最新モデルの自動包餡機「火星人CN
700」で薄皮まんじゅうやハンバーグなどをやさしく自動成形する「成形コンベヤ」を接続したラインの展示デモをしていた。和菓子・洋菓子・調理食品と、幅広い食品の成形が可能な包餡機で、安定生産・使いやすさ・品質アップをコンセプトに高い生産能力と安全・衛生面への配慮も兼ね備えた次世代型包餡機システムとして紹介していた。
8. 株式会社大洋アレスコ
http://www.taiyoalesco.jp
大洋アレスコは、冷凍・冷蔵関連設備に強みを持つ企業である。「OMAチラー」は、氷を形成させず、0.5℃~1℃の冷水が生成可能な画期的な空冷チラーシステムで最大温度差(20℃⇒0.5℃)冷却が可能である。食品や飲料生産向け、クリーン環境のハイテク産業向けなど活用用途としてあげられる。
「氷蓄熱AHPチラー」は、独自のステンレス製氷プレートと、高効率な脱氷システムを組み合わせた氷蓄熱式製氷システム。
アルゴリズムを利用した冷凍冷蔵設備のリアルタイム監視を行う 「TKSシステム(冷凍冷蔵庫省エネコントロールシステム)」、IoTやAIを組み込んだスマートファクトリー支援システム「 AM’S+α(Alesco Monitoring System Alfa)」などを紹介していた。
◇ 主催者セミナー
3つのセミナーで最新のトレンド、業界情報を知るために聴講した。
10:30 – 11:15『冷凍・冷蔵対応の自動化・省人化』
「改善事例から学ぶ冷蔵・冷凍倉庫における自動化・省人化」
➢
株式会社豊田自動織機トヨタL&Fカンパニー 小林大祐 氏
テクノロジの進化、社会環境の変化、お客様ニーズやドライバーの2024年問題、物流作業の冷凍・冷蔵の保管、搬送、仕分けなどの事例の紹介。
「コールドチェーンにおける自動化トレンドと構築のヒントとは」
➢ 株式会社IHI物流産業システム 綾部雄介 氏
食品や医薬品などの温度管理のニーズ、冷凍食品・食品ECの拡大による市場拡大傾向の中でコールドチェーンが抱えている課題、人手不足、細かな仕分け、保管量の確保などについて導入設備・機器の紹介。
12:00 – 12:45『出展者セミナー』
「食品工場建設をターゲットにしたコンカレントエンジニアリング」
➢
中設エンジ株式会社 喜多道一 氏
食品工場建設における生産・建築・施行を同時並行に取組む手法としてコンカレントエンジニアリングの考えを取入れている。時間⇔コスト⇔品質それぞれの相関関係、相乗効果を生む仕組みや知識習得の取り組み事例の紹介。
13:45 – 15:15『ロボットフレンドリーによる惣菜工場へのAI・ロボット、量子コンピューターやデジタルツインの実導入』
「第1部
盛付工程への取り組み」
➢ 経済産業省 製造産業局 秦野耕一 氏
ロボフレな環境の構築と必要性について、特に食品製造業における労働者不足への取り組みの紹介。
➢
一般社団法人 日本惣菜協会 萩野 武 氏
企業間での競合ではなく、合本主義、複数企業での取り組み連携の紹介。
➢ コネクティックロボティスク株式会社 沢登哲也
氏
不可能への挑戦、食産業をロボティクスで革新と題して、マックスバリュー東海への導入事例の紹介。
➢ Team Cross FA
株式会社FAプロダクツ 高見 守 氏
食品業界向け自動化システム(キャベツの定量ピッキングなど)の紹介、福島県にある展示ラボの紹介。
◇ 最後に
国際食品工業展(FOOMA JAPAN 2022)や国際物流総合展2022など直近の展示会を視察しているが、規模は小さい。食品製造業の中でもセントラルキッチン向け機械装置・機器やシステムの展示デモもあったが、食品業界の課題である労働生産性向上、人手不足対応が急がれている点は先に述べた展示会と共通である。
本展示会を視察して、店舗向けや病院、給食向けなど中小規模にマッチした生産システムの構築やデジタル化の導入による効率化が今後も求められてくると感じる。