2019/12/09
会場:幕張メッセ(千葉市)、主催:化学工学会、日本能率協会
開催期間:11月20日~22日の3日間
アジア最大級のプロセス産業を中心とする化学・エンジニアリング・環境・IoTの専門展示会であり、国内外から350社、880ブースが出展し、最新事例、海外マーケット情報、最新の技術・研究成果などの紹介がされていた。
展示会は、「プラントショー」「プラント補修・保全・長寿命」「省エネ・創エネ・蓄エネ資源循環」「水イノベーション」「プラントAI&IoTシステム」5つのキーテーマとした展示構成である。
目的:食品分野と共通技術である撹拌、ろ過技術を中心に技術情報収集のため視察
注目した企業9社の製品情報を以下にまとめる。
1. 佐竹化学機械工業株式会社 www.satake.co.jp/
~完全無漏洩型の減速機構を持ったコンタミ抑制の撹拌機~
新製品「マルチSミキサー」をブースで初公開していた。新製品は、撹拌機の減速機シール部分を新開発し完全無漏洩型の新機構としていた。近年、化学、食品、医薬品、水処理プラントなどではコンタミネーション防止が重要課題でニーズからの要求がある。通常の撹拌機は、モーター、減速機、メカニカルシール機構、ドライブシャフト、インペラ(撹拌翼)などで構成されている。そのため減速機構の内部に潤滑油を使うため、オイル漏れの懸念がある。特に精密化学品、食品、水処理、医薬品プラントなどではコンタミ抑制ニーズが強い。完全無漏洩型の減速機構を備えたこの新製品はコンタミを嫌う製品に対して品質に直結する問題解決に優れている。
2. 住友重機械プロセス機器株式会社 www.shi-pe.shi.co.jp/
~広範粘度・液物性に対応の撹拌機~
化学プラント向けに撹拌槽と蒸留設備の2つのカテゴリーで、新製品と主力製品を中心にデモ機とパネルを使った展示がされていた。
幅広い粘度範囲に対応可能な撹拌機の特徴を活かし、材料の物性特性・性状によらず均一な撹拌・混合ができる強みをアピールしていた。
主力製品の高機能撹拌機「マックスブレンド」は透明アクリル槽を使って一般翼と槽内流動の違いを可視化できる展示がされていた。特に注目した展示として高粘度高せん断複合撹拌機「ナノビスク」は乳化操作を実演していた。
その他、蒸留装置や蒸留精製プラントの紹介をしていた。
3. 三菱化工機株式会社 www.kakoki.co.jp/
~高性能ろ過装置によるナノスラリーも効率良くろ過~
総合エンジニアリング企業という強みを活かしさまざまな分野で事業展開を図っている。遠心分離機、ろ過機など産業向け各種単体機械の製作から企画提案・設計・調達・建設までの全工程に携わり強みを持っている。
今回注目した製品は三菱ダイナフィルター(DyF)、三菱ブローバックフィルター(BBF)、ディスクセパレーター(SJ)である。
DyFは、円盤状のフィルターエレメントを回転させながらろ過する装置でナノサイズのスラリーを効率良くろ過できる。さらにナノスラリーの濃縮だけでなく、洗浄・溶媒置換など複数の工程を1台で連続的に行うなどコンタミネーションを嫌うファインケミカルなどへの利用が期待できる。
円筒多室型の回転式連続ろ過機BBFは、小型ラボ用テスト機が紹介されていた。処理物に応じて加圧ろ過、真空ろ過どちらにも対応可能と紹介していた。
主力製品のSJは、連続遠心分離機で固形物を自主排出する機能を持つのが特徴としていた。1台で固・液・液の3相分離を短時間で連続的に行えるサニタリータイプが紹介されていた。
4. 神鋼環境ソリューション株式会社 www.kobelco-eco.co.jp/
~多品種少量生産に対応した最適撹拌翼への交換容易化~
グラスライニングとしてトップメーカーである強みを活かした新商品として研究分野や多品種少量生産に対応できるグラスライニング反応機「マルチリアクター」が注目されていた。
研究分野では、粘度や密度、比重などが異なるさまざまな流体の撹拌を検討している。実験室などでは簡易的な撹拌装置を用いて、それぞれ条件に合った撹拌翼へ交換し反応や蒸留を行っているが、数十から数百リットルを取り扱うパイロットプラントスケールの装置においては、容易ではなかった。
特にグラスライニング製撹拌翼は翼を交換する場合、軸封装置の分解が必要であり、工事は専門技術者が対応しなければならない。
新商品はそんな軸封部の問題点を独自のスマートロック機構を有した継手部分を設け、継手部分より下の撹拌翼部分のみを撹拌条件に合った翼に交換できる構造にしていた。マルチリアクターの撹拌翼は、フルゾーン、ツインスター、3枚後退翼の3種類をラインナップし、条件に最適な撹拌翼を選定できることによりパイロットスケールでのスケールアップ検討や多品種生産などが対応可能である。
5. 松本機械製作所株式会社 www.mark3.co.jp/
~遠心分離やろ過乾燥工程の可視化や自動化を追求~
製薬向け遠心分離機市場で国内シェア7割を誇るリーディングカンパニーである。ライフサイエンスの分野で存在感を強めている。
今回の展示では、「基本コンセプトは遠心分離機の独創技術で先端産業の技術革新に貢献」と技術力をアピール。工場のオペレーターの業務効率化や自動化などを徹底追求したラインナップを紹介していた。
特に注目した機種として全量回収型遠心分離機「FLOWM」は次のような特長がある。
結晶の破砕なく全自動・全量排出、確実なケーキ洗浄、安全性を考慮した封じ込めにも最適、加圧することにより結晶の含水分軽減、機械前部のみクリーンルームに設置可能、ろ過抵抗の原因となりうる残結晶なく毎バッチ同条件で分離可能と多様なニーズに応える設計がされている。
6. 株式会社マウンテック www.mountech.co.jp/
~独社(インダック社)インライン混練機を工程に組込み生産量変動や多品種に対応~
化学品、食品メーカーなどの混合・撹拌プロセスでインライン連続処理ができる混練機などの展示がされていた。従来化学・ケミカル系生産工程はバッチ式生産方式が主流である。これに対し生産量の変動や多品種生産に適す連続式の導入機種として独インダックス社のインライン連続混練機「ダイナミックミキサー」や独PUC社の湿式粉砕機「コロイドミル」の紹介がされていた。
イナミックミキサーは、ベッセル内で回転する撹拌翼で処理物を混合、溶解、反応させるシンプルな構造でありながら、多様な化学品の連続処理を実現できることをアピールしていた。同じく注目したコロイドミルは液状からペースト状まで多様な処理物を粉砕・分散・均質化できる粉砕機となっていた。構造は特殊加工された円錐台形状のローターとステーターを組み合わせ、内側から高速回転させ処理物は吐出口に近づくと狭くなるリング状の隙間で、強力なせん断力で微細化される構造である。
7. 株式会社帝国電機製作所 www.teikokudenki.co.jp/
~IoTに対応しポンプの運転状況を無線で遠隔監視~
キャンドモーターポンプのリーディングカンパニーで設立80年の歴史を持つ。
定量ポンプは定量精度の高い往復動タイプで、プランジャーとダイヤフラムの2種類をラインナップしている。ダイヤフラムモデルはポンプヘッドが完全密閉型で、毒性や可燃性のある液体や高温の液体、高融点液、大気に触れると変質する液体などの取り扱いに適している。さらにダイヤフラムは、フッ素系のPTFEとメタルの2種類を用途に応じて選定できることをアピールしていた。
近年の人手不足や老朽工場のメンテナンス対応としてIoTを推進し、ポンプの運転状況を無線で遠隔監視する装置「TRM-W」の新製品を開発、各種伝送器と接続させることで流量などを遠隔監視するなど紹介していた。往復動ポンプ特有の脈動を抑制し連続で定量送液できる防止器や流量を遠隔で変更できるアクチュエータなどのラインナップもされていた。
8. 株式会社OHR流体工学研究所 www.ohr-labo.com/
~高圧乳化機の代替品として使われる特殊パイプ~
液-液、気-液、固-液それぞれのミキシングが可能なインライン用のOHRミキサーに注目した。
特長として、驚異的なミキシング能力、少量(10L/min)から超巨大量(15,000L/min)まで、1本で処理、性能は超安定!完全メンテナンスフリーである。
食品業界における乳化、例えば、乳化ドレッシングなど調味料関係でのミキシングをインラインで行う用途で利用が可能である。従来の予備乳化などに用いられるスタティックミキサーやミキシングタンクと組み合わせた使い方や代替などが考えられる。
メカニズム図解に示されている①~④の各部分の作用を説明すると、①A・B流体が反応部に流入し、らせん状の流路「ガイドベーン」によって「らせん流」に変換され、猛烈な遠心力が生み出される、②流体の比重差を利用して、重質流体(A流体)は外側へ、軽質流体(B流体)は内側へ振り分け接触・反応を同時に行う、③きのこ状の衝突体「カレントカッター」で外側の重質流体層も、内側の軽質流体層も、境界層剥離によって超微細に砕かれミクロ粒子群となる、④重質流体のミクロ粒子群と、軽質流体のミクロ粒子群が、遠心力・向心力によって連続して激しく衝突し合い反応する。 乳化剤を使用することなく乳化が可能なこと、きのこ状の突起物(衝突体)の後方に渦を発生させる乱流促進体として境界層の剥離を発生させ中心と外側の流れの圧力差により撹拌作用を助長させるメカニズムである点に注目した。
9. 株式会社谷沢製作所 www.tanizawa.co.jp/
~現場作業映像をリアルタイムに送信できるヘルメット装着型カメラ~
近年、国内の化学プラントでは、設備の老朽化対策やベテラン社員の退職による人材不足などの課題を抱えていることから、遠隔支援が可能なヘルメット装着型ウェアラブルカメラに注目した。
ヘルメット装着型カメラを使いリアルタイムで現場作業の状況を遠隔の管理者へ送信し高画質な画像の送信と音声通話により作業指示ができることから、管理者は作業現場と情報を共有し、的確な作業指示で現場支援が実現できる。また、一人で作業時の状況把握やトラブル時の記録など後方支援に役立つ機能も持っている。そのためハンズフリーで作業中の動画撮影、配信、記録が簡単に行え、作業履歴としても画像の利用ができるなどから、用途としてゼネコンの現場や各種工事現場、プラントメンテナンス作業での採用が期待できる。
所見:
ブラントショーを中心に食品工場向け機器技術と共通な撹拌メーカーのブースを視察した。IT技術を利用したCFD解析やVRといった仮想シミュレーションを組み合わせた製品開発の基礎データの収集、実機へ展開するためのテーブルテストやミニパイロットプラントなどにおけるスケールアップに必要なテストデータとの比較検証などは現在も必須となっているようであった。これらに加えてAIやIoTといった新技術を融合させることでスケールアップも容易に短時間でできるようになると思われる。
撹拌技術については、高粘度物性対応の撹拌翼の開発は各社それぞれに特徴が見られ撹拌翼の形状や運転方法など工夫をしていた。高粘度翼についてはリボン翼が主流で他の翼との組み合わせなど工夫が見られるように各社の今後の新製品開発に期待ができそうである。
【掲載している写真、画像出典先】:各メーカーH.Pより転載
以上