2021/01/11
技術用語解説8『青果物選別装置(選果機:Fruit sorter)』
果実・野菜など青果物の選果は階級(大きさ)選別と等級(外観などの品質)選別および内部品質選別が行なわれ、光学式選果機の分類を図1.に示す。しかし、現在の主な青果物選別装置(以下選果機とする)は大きさの選別しかできない階級選別機で、これは形状選果機、重量選果機に大別される。
形状選果機は果実をバラで供給し、選果と仕分けが一体構造になっているため大量処理ができ、選果の能率は高い。しかし、選別中の転がりや、狭あい部の通過で傷きやすい欠点がある。重量選果機は果実の重さで仕分けるため、精度が高く、不整形のものでも選別できる。バケット上に1果ずつ果実をのせて計量するため、傷がつきにくいなどの特徴があるが能率は形状選果機より劣る。
(1) 形状選果機
・ドラム式:
現在最も普及している方式である。この方法は穴のあいたドラムを回転させ、その上を果実が移動する間に、その穴より小さい果実は下に落ちるようになっている。選別する階級数より一区分少ないドラムを必要とし、順次穴を大きくする。柑橘類で主として用いられており、能率の良い選果機である。欠点としては穴の大きさの違うドラムに果実が順に乗りうつるための転がり、排出時のドラム内の落下によって傷がつき易い点である。ドラム式が採用される前はベルト式が多かったが、構造が簡単なことと,規格が変わった時にドラムの取り替えのできることからドラム式が普及した。
先にいくほど間隔が末広がりになった2本のコンベアの上を果実が幅の広い方に運ばれるうちに果実と同じ幅に開いたところで落下する構造となっている。多数のロールを移動に伴ってロール間の間隔が広がるようにしたのが多条間隔選果機である。いずれも連続的に選別できる特徴があり、主に馬鈴薯、ピーマン、梅、球根、サトイモなどで使われている。
スパイラルロールのねじの部分を果実の移動に用いる方式である。ロール間の間隔が除々に開いて行くのを利用して選別する。過去に温州ミカンで使われていたが、最近は馬鈴薯,玉ねぎの選別に使われている。
果実の選果時の傷害が問題になってから実用化された方法で、光束遮断式と画像処理式に大別できるが、現在実用化されているのは主に光束遮断式であったが、近年、画像処理式は表に示したように開発が進み近赤外線光技術の進歩により等級の機械選別と両用できるようになってきたことから、今後は両用による選別が主流になるものと思われる。
主流となっていた光束遮断式はカーテンビーム式とバルスカウント式がある。前者は投光機と受光器を、ベルトコンベヤを隔てて上下方向に多数並べてカーテン状に光を送り果実がここを通過した時、受光器に達しなかった光から換算して果実の高さと幅を算出する、パルスカウント式は投光器と受光器をコンベアの上下に配置し、果実が通過中に遮断したパルス数と1パルスの間に移動する距離から果実の直径を求めるものである。
(2) 重量選果機
重量選果機は秤量と仕分けの両部分にわかれるが、機械式は秤量と仕分けを同時に行なうことになる。てこ秤式は果実をのせて循環する移動秤と選果機に固定された秤からなり、両者が接した時に重量差によって果実を放出する構造である。バネ秤で重量測定を行なう方式もある。電子式は電子秤をもちいて重量を測定し、排出する階級のところへ電気信号を送って仕分けをする。機械式では階級ごとに必要であった秤が不要になったため構造が単純になり精度も向上している。
(3) 内部品質選果機
・NIR(近赤外線透過)方式:
内部品質選果機は透過光を用いた近赤外線による方法で内部品質センサとして活用されている。近赤外線は波長がおよそ0.7 – 2.5 µmの電磁波で、赤色の可視光線に近い波長を持つ。性質も可視光線に近い特性を持つため「見えない光」として、赤外線カメラや赤外線通信、家電用のリモコン、生体認証の一種である静脈認証などに応用されている。光ファイバーでもこの波長帯が使われ、代表的な波長は1.55µmである。
内部品質センサでは、近赤外線という光を使って、対象物に触れることなく青果物内部の成分や状態を調べることができるセンサ。個々の果実に光を照射し、果実内部を透過した光の分析をし、糖質、酸度、内部不良を計測し、自動補正機能により、常に安定した計測を可能にしている。近赤外線の光には、吸収と成分の量に密接な関係があることから、光がどれだけ減ったかを調べることで成分を分析できる。成分の解析能力の向上により10項目程度の成分同時解析が可能となっている。
近赤外線の特徴としては、次の3つがある。
① 青果物を透過しやすい
② 青果物内部で拡散しやすい
③ 青果物に含まれている成分に吸収されやすい
など
・NMR(核磁気共鳴)方式:
核磁気共鳴(NMR)装置は、強い磁場の中に試料を置き、核スピンの向きを揃えた分子にパルス状のラジオ波を照射し、核磁気共鳴させた後、分子が元の安定状態に戻る際に発生する信号を検知して、分子構造などを解析する装置である。
一般的には、複雑な有機化合物の化学構造の決定(H、C、N などの結合状態、隣接原子との関係などが分かる)に用い、試料の有機化学物質を非破壊で測定できることが特徴である。また、最近では、NMR イメージングが、MRI として医療分野で画像診断に欠かせない装置となっている。
国内でも一時期、食品偽装事件が問題になったが、食品の産地や成分、加工状態などを正しく把握することは、消費者のみならず食品加工業者にとって重要な課題である。NMR は分子構造のわずかな違いを判別できるので、NMRスペクトルを指紋のように利用することが可能である。濃縮還元処理や甘味料等添加物の有無などを解析することも可能。NMRを用いた検査法は1つ、もしくは少数のスペクトルデータから多くの情報が得られるので、検体当たりの手間やコストを大幅に減らすことが期待されている。
上述した、各種の選果方式を組み合わせるなどにより人手作業となっている選果の省人化などに活用が期待される。
以上