2021/03/01
技術用語解説13.『フードディフェンス(食品防御:Food Defense)』
異物や毒物などの意図的混入の防止についても留意する必要がある。過去の冷凍食品での事件から食品工場での重要な管理事項として位置付けられるようになった。規格化は食品安全マネジメントシステム(FSMS:Food Safety Management System)に明記されている。同様に飲料工場においては、意図的な混入機会は少ないが、混入した場合のロットでは全体に影響がおよぶことから高リスクとなる。食品ならびに飲料ともに施設や製造ラインへのアクセスの制限などガイドラインを明確にしておくことが重要である。
HACCPの認証取得に、欠かすことのできない「フードディフェンス(食品防御)」について解説する。
食品工場では、部外者や工場内を出入りする業者、従業員によって意図的に製品(食品)に異物を混入されるというリスクがある。
例えば、工場ではありませんが、スーパーマーケットの売り場で、売り場に並んでいるパンに針を入れられたという非常にショッキングな事件もあった。また、飲食店においては、近年、悪質なアルバイトスタッフによって意図的な食品の汚染、その写真や動画をSNSに投稿する行為、いわゆる「バイトテロ」も問題になっている。このような製品(食品)への意図的な異物の混入を防ぐ為の取り組みのことを「フードディフェンス(食品防御)」と呼んでいます。
フードディフェンスは「FIRST」が基本
2001年のアメリカ同時多発テロ以降、テロ対策の一環としてフードディフェンスという考え方が一気に広がっていきました。
米国FDA(Food and Drug Administration)では、「従業員の教育訓練が組織を守る最も効果的な手段である」として、「FIRST」を提唱しています。
表1. 米国FDAが提唱している「FIRST」
頭文字 | 考えの基本 | 意味 |
---|---|---|
F | Follow | 決められたルールに従うこと |
I | Inspect | 施設やその周辺の調査をすること |
R | Recognize | 何か変わった点がないか見逃さないよう、いつも気を配ること |
S | Secure | 全ての原料、梱包材、製品の安全を確保すること |
T | Tell | 異変に気づいたら、すぐ上司に報告すること |
具体的な対策
具体的には、以下のような対策があります。
口で言うのは簡単ですが、実際にやるのは本当に大変であるが、諦めずにやっていただきたい項目は次の通りである。
1.不審者を敷地内に入れない
2.従業員同士の人間関係が良好となるような職場環境を作る
3.私物を持ち込ませない
4.薬品等は薬品庫に保管・施錠し、鍵の取扱いも厳しく管理する
5.複数台の監視カメラの設置(侵入者防止用と製造ライン用)
6.委託業者の作業、資材等の納入時については、従業員が必ず立ち会う
7.施設内、及び周辺で何か異変に気づいたら、すぐに上司に報告する
【参考資料】
「食品防御計画 作成ガイドライン」農林水産省補助事業
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/n_america/us/foods/fsma/fsma106_guide.pdf