2019/10/15
【ISO 22000】
ISO 22000
正式名称は「食品安全マネジメントシステム」といい、ISO 22000は、2005(平成17)年9月に発行された食品安全に関するISO規格である。
ISO 9001(品質)やISO 14001(環境)と同じ、世界共通の組織管理の仕組み(マネジメントシステム)として最低限要求される事項を定めたものである。
食品の安全は、食品加工メーカーだけが努力しても確保的ない。原材料が安全でなくてはならず、消費者の口にはいるまでの安全管理が必要となってくる。
そのため、原材料の生産から食品製造、取り扱い並びに供給を含むすべての食品に関係する組織が、最終消費者に対して、食品安全を保証するマネジメントシステムを構築しなければならない。
この必要条件を定めたのが、ISO 22000である。
すなわちHACCPの欠点であったマネジメントシステムを補う国際規格となっている。
【食品衛生法】
Food Sanitation Law
飲食に起因する衛生上の危害の発生防止、公衆衛生の向上および促進を目的に、1947(昭和22)年に制定された法律である。
食品および添加物、器具および包装容器、表示および広告などに関する規定と共に、監視・指導指針ならびに計画、検査や営業などに関して規定がされている。
この法律は、BSE問題や偽装表示問題などを契機に2003(平成15)年に大幅に改正されることとなった。
改正のポイントは、国民の健康保護の予防的観点に立ったより積極的な対応と共に、事業者の自主管理の促進および農畜水産物の生産段階との規制との連携がある。
改正後の条文には、目的として、食品の安全性を確保することにより国民の健康の保護を図るとなどが明記された。
また国・地方公共団体および食品等事業者の責務が明確化され、特殊な方法により摂取する食品などの暫定的な流通禁止措置、事業者の記録保存の努力義務や大規模・広域な食中毒の発生時などの対応内容が盛り込まれている。
【HACCP】
Hazard Analysis Critical Control Point
危害分析・重要管理点という表現がされる。
米国のビルスベリー社が1960年代初頭に米国の宇宙計画のための食品供給を研究していた際に開発した食品衛生管理の考え方で、食品をつくる工程において食品安全上の重大な危害を確認・評価し、技術的あるいは科学的な根拠に基づいて連続的に生産工程を監視することで、食品の安全性を確保するというシステムである。
欠点としては、マネジメントシステムの考え方が不足している点が指摘される。
危害になる可能性のある要因を事前に調査し、評価する過程をHA(危害分析)といい、特定された危害要因を予防もしくは除去、またそれを許容水準まで低減するために不可欠な段階をCCPによる管理という。
また、HACCPにおける危害要因は生物学的、化学的、物理的の3つに分類され、これらの危害要因の意図した管理を達成することができなければ、食品の安全性は保証されない。
【HACCP7原則12手順】
Logic Sequence for Application of HACCP
HACCPは7つの原則に基づいている。これは1989(平成元)年に米国食品微生物基準全国諮問委員会が発表したものであり、HACCP構築の基礎となっている。この「7原則」にコーデックス委員会が5つのステップを加え、1993(平成5)年に「HACCP方式の適用に関するガイドライン」として「12手順」を公表した。
HACCP構築のポイントは、手順1で組織の食品安全にかかわる知識が幅広く求められるため、外部専門家を加えた編成も必要となる。手順2~3では、製品特性を明確にする。手順4~5では、明確で正確かつ詳細なフローダイアグラムを作成する。手順6では、化学的な根拠に基づく危害要因の分析を実施する。この段階で多くの時間とメンバーの力量を要する。手順7では、手順6で危害と認定したものの防除のため、CCPが必要かどうかを決定する。手順8~11では、CCPの管理方法を確立する。手順12で、食品安全の効果的な運用の証拠を保存する必要がある。
HACCP 7原則12手順 |
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手順 1 専門家チームの編成 |
手順 6 危害分析(原則1) |
手順 2 製品特性の説明 |
手順 7 重要管理点の決定(原則2) |
手順 3 喫食および使用方法の確認 |
手順 8 管理基準の設定(原則3) |
手順 4 フローダイアグラムの作成 |
手順 9 モニタリング方法の設定(原則4) |
手順 5 フローダイアグラムの現場検証 |
手順10 改善措置方法の設定(原則5) |
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手順11 検証方法の設定(原則6) |
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手順12 記録の維持管理(原則7) |
【CCP】
Critical Control Point
重要管理点といい、危害分析(手順6・原則1)の結果によって連続的なまたは相当の頻度の確認を必要とする工程のこと。
CCPは、それ以降の工程でそのハザードを管理することが不可能であり、特定された危害要因を予防もしくは除去、または許容水準まで低減できる段階を指す。
また、CCPはコーデックスなどにより確認し決定(手順7・原則2)する。
CCPでの管理が有効に機能し、規定の許容水準が満たされていることをモニタリングで迅速に判定するために、測定可能な管理基準(許容限界と作業限界:Critical Limit Operation Limit)設定(手順8・原則3)する。
CCPのモニタリングには時間、温度、水分活性、酸度、官能検査などがあり、例えば、定められた時間と温度で殺菌を確実に行う工程では、時間と温度を管理するモニタリング方法を設定(手順9・原則4)する。
【PP】
Prerequisite Programs
前提条件プログラムのことで、日本では一般衛生管理と同義語として扱われる。
HACCPを運用するための「土台」になるプログラムである。
この前提条件プログラムは、HACCPを円滑に導入するためにあらかじめ構築しておく必要がある。
安全な食品の生産、取り扱いおよび提供に適切な衛生環境を維持するための基本条件および活動で、GMPとSSOPを含んだ手順である。
ISO 22000ではPRP(Pre-Requisite Program)と略されている。
日本版HACCPシステムの総合衛生管理製造過程においては、次に示す10項目で作業内容、実施頻度、実施担当者ならびに実施状況の確認および記録の方法を定めるように提唱している。
- 施設・設備の衛生管理
- 従事者の衛生教育
- 施設設備、機械器具の保守点検
- そ族・昆虫の防除
- 使用水の衛生管理
- 排水および廃棄物の衛生管理
- 従事者の衛生管理
- 食品等の衛生的取り扱い
- 製品の回収方法
- 製品等の試験検査に用いる機械器具の保守点検
【PRP】
Pre-Requisite Program
ISO 22000規格によってできた用語でPPや一般衛生基準と呼ばれている言葉と同義語の扱いになる。
食品製造を行うインフラ(環境や従業員)を対象として衛生状況を維持改善するための基本条件と活動を示し、5SやSSOPはその一部の要素として扱われる。
PRPはハザード分析を行う前に確立し実施を維持することが求められるプログラムである。
ISO 22000規格ではPRPを確立する際に考慮することを次の11項目として提唱している。
- 建物の構造や配置
- 作業空間
- ユーティリティー
- 廃棄物
- 設備
- 原材料や製品管理
- 交差汚染の予防
- 清掃
- 洗浄・殺菌
- 防虫防鼠
- 要因の衛生
【SSOP】
Sanitation Standard Operation Procedure
衛生標準作業手順のことで、製品への直接的汚染や異物混入を防ぐために、一版的衛生管理の中で必ず行わなければならない清掃・洗浄作業の実施手順書である。
図面と工程フローから清掃・洗浄の対象となる施設個所や設備・備品をリスト化、「実施内容」「頻度」「担当者」「確認方法」「記録方法」を決めて実施する。
この5項目の要素に関して作業現場での実施が確実になるように分かりやすく、使いやすいルールにすることがポイントである。
さらに毎日(作業前、昼休み後、作業終了時)、毎週、毎月といった作業頻度や、作業室、担当者ごとなどに分けたチェック理とを作成により、現場での記録の実施、定着化を図ることが重要である。
実施後は清掃・洗浄作業をモニタリングして効果を評価、手順内容や記録方法を改善工夫して進化させていくことも大切である。
【フローダイアグラム】
Flow diagram
1つの製品のまたは製品グループを対象として、すべての工程を含む製造過程を表す一覧図のことである。
HACCPシステム構築でポイントとなるSSOPや標準作業手順、HACCPプランの作成、その後の全体見直しの際には、重要な作業基準資料となる。
一般的な作成方法は、まず用紙の上部横軸に「投入原料」「副材料」「包装資材」などの各ボックスを並べる。
次に左側縦軸に「受け入れ」「保管」から最終の「出荷」までの工程(ボックス)を並べ図⒈のようなフロー図を作成していく。
この時製造工程が正確に十分に詳しく分解されていて、現場で実際に手順に沿ってやっていることをリストアップして記載することが重要となる。
また、それぞれの工程(ボックス)に番号と名前をつけておくと、作業標準作成やハザード分析に有効になるので考慮しておく。
図1 フローダイアグラム(事例:ブルーベリージャム製造工程)
【OPRP】
Operational Pre-Requisite Program
オペレーション前提条件プログラムのことで、ISO 22000規格によって新たに設定された概念を表すもので、PRPとCCPの中間的位置づけで、重要なPRPとして扱われる。
ハザード分析の結果、製造環境からハザードの低減ができるPRPの中でモニタリングができて、逸脱時の是正処置が可能な作業を対象とする。
例えば次のような作業工程が事例にあげられる。
- 魚肉缶詰で芽胞菌を含む原料を使用する場合、加熱工程をCCPとし、生き残った芽胞菌が発芽増殖することを予防するための冷却工程をOPRPとする。
- 冷凍魚の切り身製品で最終工程の金属探知機での検査をCCPとし、加工工程の魚体の低温取り扱い工程をOPRPとして設定する。
事例のように、食品に直接接触する工程や、加熱殺菌後の工程、クレームの発生しやすい工程に集中して検討する必要がある。
企業側の判断となるが、管理手順としてCCPとOPRPをどのように組み合わせておこなうかがポイントとなる。
【食品安全ハザード】
Hazard for food safety
人が食品を喫することによって、食品が健康に悪影響をもたらす可能性がある危害要因のことをいう。
その性状によって次の3つに分類される。
- 物理的ハザード
原材料由来の針などの金属やその他異物、工程由来の刃物の破片、ガラス片、プラスチック片、機械部品など
- 科学的ハザード
自然毒、不許可または過剰な食品添加物、動物用医薬品、農薬、アレルギー物質、ヒスタミン、工程内の機械使用の潤滑油、洗浄剤、殺虫剤など
- 生物学的ハザード
病原菌(病原細菌)、ウイルス、寄生虫など
ハザード分析ではリスク評価を行う。
食品安全における「ハザード」と「リスク」については、ISO/IECガイド51で定義、双方共通する規格テーマに関して出されるガイドラインである。
ガイド51は1999(平成11)年に安全面を規格に含めるための指針として出され「リスク」に関するものである。
(IEC:International Electrotechnical Commision 国際電気標準会議の略)