技術用語解説41『ECテスト(EC test)』

技術用語解説41『ECテスト(EC test)』

1. 定 義

 糞便汚染指標細菌としての大腸菌(実際には糞便系大腸菌群)の検出試験のことで、大腸菌群(coliforms)の中で糞便系大腸菌群(fecal coliforms)のみが44.5℃で増殖可能であるという特性を利用して汚染指標をみるのが「ECテスト」である。”EC”は大腸菌の学名Escherichia coliに由来し、食品中のfecal coliformsの検出法として国際的に認められている。

2. 食品衛生上での位置づけ

 食品の汚染指標菌としての大腸菌群(coliforms)は、ヒトや動物の腸管ばかりでなく、河川や土壌など自然界に常在しているものも多いため、これらを食品から検出したとしてもそれは必ずしも直接には糞便汚染と結びつくものではなく、食品の不適当な加工処理や製品の取り扱いの悪さなど環境衛生管理上の尺度を示すと考えられている。しかし、大腸菌群の中でも糞便系大腸菌群や大腸菌(E. coli)は、自然環境の中で比較的死滅しやすいこともあり、食品中から本菌が検出されれば糞便汚染の確率は高く、より一層不潔な取り扱いを受けたことが推測される。
 上述のような大腸菌群の性質を考えると、検査結果の判読に当たっては、食品の種類・由来・取り扱い経歴などを十分考慮して、これらの菌の検出の意義づけをしなければならない。も ちろん、それぞれの食品が最終的にはヒトの口に入るものであるので、検査にあたっては安全性を第一とする指標細菌を選ぶべきで、生食用カキや加熱後摂取冷凍食品の検査に、大腸菌(糞便系大腸菌群:fecal coliformsを検査対象にしている)を直接計測するECテストが採用されているのはこのためである(その他の品目では平板法と発酵管法が大腸菌と大腸菌群検査法として行われる)。

3. 検査方法

 通常、糞便系大腸菌群検査はECテストにより行われる。この検査法では、糞便系大腸菌群 とこれら以外の大腸菌群との区別が44.5℃という発育温度に依存しているため、培養温度 が正確であることが要求される。したがって、通常はブイヨン発酵管44.5±0.2℃ という精度の高い恒温水槽中で培養する手法が採用されており、水槽に比較して熱伝導の劣るふ卵器中で寒天培地平板を培養するという方法はあまり採用されない。
 一般的な検査手順の概略は、大腸菌群の推定試験でガス産生の認められたBGLB培地または乳糖ブイヨン培地発酵管の培養液の1白金耳をEC培地発酵管に接種する。これを44.5±0.2℃の恒温水槽中で24±2時間培養し、ガス発生が認められた発酵管について、EMB寒天培地平板で分離培養を行う。平板は35±1℃、 24±2時間培養し、発生した定型的集落について大腸菌群であることが確認されれば、糞便系大腸菌群陽性と判定する。
迅速法として、定量試験では、試料希釈液を大腸菌群測定の場合に準じてそれぞれ3本(ま たは5本)のEC培地発酵管に直接接種して,44.5±0.2℃、 24±2時間培養し、菌増殖とガス発生が認められた発酵管試験管数からその糞便系大腸菌群MPN値を求めることができる。定性試験では、大腸菌群の存在の確認されたEC発酵管が1本でもあれば糞便系大腸菌群陽性である。この方法は、国内の凍結前未加熱の加熱後摂取冷凍食品の規格検査でも採用 されており、スクリーニング法としても有効である。
 糞便系大腸菌群と確認されたものについて、IMViC試験(インドール産生能・メチルレッド反応・VogesProskauer反応・クエン酸利用能)のパターンが「++--」または「-+--」のものが大腸菌である。

以上

【参考文献・引用】

  1. 「食品衛生検査指針 微生物編」 改訂第2版 (2018) (公社)日本食品衛生協会
  2. 「解説付用語集」http://www.bacct.com/infomation/glossary/ 日本細菌検査(株)HP
  3. 「微生物に係る基準について」https://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/02/s0203-3a.html
    厚生労働省HP