2022/06/20
技術用語解説45『フードテック (Food Tech)』
フードテックとは、「食とITが融合すること」と定義されている。フードとは(Food)とテクノロジ(Technology)を組み合わせた造語である。フードテックという造語が生まれた背景には、食とITが融合することによって国内外において食の可能性を広げる新たな産業、ビジネスが創出されることが期待されていて食の新技術に関する世界市場は2025年までには700兆円規模に達するとの予測がされている。
現在進んでるビジネスとしては、次のようなものがあげられる。
- ① ITを活用した食料生産から加工
- ② 流通、消費までのサプライチェーンの管理
- ③ 食品の廃棄・ロスの改善
- ④ インターネットと家電が連携するスマートキッチン
などの取り組みなどが進んでいる。
これ以外にもIoTやAIを活用したスマート農業による新しい農法や食品の開発が進んでいる。このスマート農業は各種のセンサで栽培施設内の温度・湿度の管理や、野菜の生育状況をリアルタイムに把握し、さらに気象データを収集・解析するなど農産物の効率的な生産、収穫、流通を可能にしている。
そしてSDGsなどの世界的な取組みである持続可能な社会に向けた、食肉や乳製品の代替食品の開発がある。植物由来の食品に原料を変えることで、環境や健康にも大きな硬化が見込まれ近年、代替肉、培養肉、代替チーズなどが欧米を中心に商品化され上市されている。
国内においてもフードテックは食の生産、加工、流通に止まらず、代替食の研究開発、外食、食に関連するサービスなど適用される範囲は広範囲に広がりを見せている。フードテックには国内の農業の諸問題を解決する可能性もある。国内の農業従事者は高齢化が進み、後継者不足が問題となっていて耕作放棄地も増加している。
フードテックを活用して農産物の生産性を向上させ商品に付加価値を付けることで高い収益が得られるような変革により、農地の有効利用や雇用の拡大も期待できるようになる。異業種からの参入も積極的に進めてIoTやAI技術に強みを持つ企業の参画により市場が活況になることが期待できる。
フードテックにおけるさらなる取組みとして、次のようなキーテーマがあげられる。
- ① 栄養・健康とITの融合
- ② 機能性食品
- ③ 次世代食品
- ④ スマート農業
- ⑤ スマートファクトリ
- ⑥ サスティナビリティ
身近な課題として、我々自身の生活に直結する食の問題であることから、今後の展開について市場動向を見守りながら注視していきたい。
以上
【参考文献・引用先】
- 「フードテックを巡る食産業の展望」石川真一 月刊 食品工場長 5月号(2021)
P118 – P125 - 「フードテックの最新動向」深澤郁恵、町田 博編 シーエムシー出版
- 「フードテック研究会」の中間とりまとめの公表等について 農林水産省HP
https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/kihyo01/200731.html