技術用語解説46『完全栄養食 (Complete nutritional diet)』

技術用語解説46『完全栄養食 (Complete nutritional diet)』

 手軽に必要な栄養素を摂取できることで注目されている完全栄養食。完全栄養食と近い食品として栄養補助食品やサプリメントがある。どれも明確な定義の違いはなく食品として扱われている。

1. 完全栄養食とはどういうものをいうのか

 完全栄養食に明確な定義はない。多くは厚生労働省が策定した「日本人の食事摂取基準」に基づいて、1食あたりに必要な栄養素をすべて含むように作られた食品のことを指す。
多くの商品では1日3食を想定し、1食で1日に必要な栄養素の1/3を摂取できるように作られている。形はさまざまで、水に溶かして飲む粉末状の商品や、パンやパスタなど主食のような商品、アイスやグミなどの間食向けの商品もある。

2. 完全栄養食は栄養補助食品とは違うのか

 身近なところではカロリーメイトやSOYJOY(ソイジョイ)などのように、食事だけでは不足しがちな栄養を補う食品を指す。たんぱく質やビタミンなど特定の栄養素を豊富に含んだ商品が多いが、完全栄養食のように1日に必要な栄養素をすべて含んだ商品ではない。
形はバーやグミなどお菓子のように食べられるものが多く、さまざまな成分が含まれている。また、栄養補助食品を「バランス栄養食」として売り出している食品もある。

3. 完全栄養食とサプリメントとの違いは何か

 サプリメントも栄養補助食品と同じく、食事だけでは不足しがちな栄養を補う食品を指す。完全栄養食や栄養補助食品との違いも明確にはなく、すべて食品である。
一般的には粉末や錠剤などの形になっていて、取りたい栄養素だけをとれる商品をサプリメントということが多い。プロテインやビタミンなど、特定の栄養素のみを大量にとれるのが大きな特徴である。

4. 完全栄養食のメリット

(1) 最小限の時間で必要な栄養素をとれる
 一番のメリットは手軽に必要な栄養をとれること。粉末ならシェイクするだけ、パンはそのまま食べるだけなど、完全栄養食の多くは調理不要である。仕事・家事・育児に追われて調理の時間も削りたい人にとっては、最小限の時間で必要な栄養素がとれる完全食はとても魅力的な食品である。

(2) 低カロリーでダイエットに最適
 完全栄養食の多くは糖質や脂質が必要最小限に抑えられているため、必要な栄養素をとりつつ、低カロリーである。そのため、ダイエット食にも向いている。

5. 完全栄養食の気をつけておくべき留意点

(1) 2022年2月現在、まだ実証されたデータがない
 もっとも注意が必要なのは、完全栄養食に関する信頼性の高い実証データはまだないということ。食生活が健康にどう影響を与えるのかについて信頼性の高い実証データを得るには、数万~数十万人以上の数十年分に渡るデータを解析するなど、多量のデータと時間が必要となってくる。
完全栄養食は歴史が浅く、必要な栄養素が満たされていても吸収率が同じではないかもしれない、不十分な栄養素があるかもしれない、など考慮すべきリスクもある。あくまで食品であり栄養も豊富なのですぐに体調を崩すリスクは低いが、完全栄養食だけで生活するのはまだお勧めできない。

(2) 「日本人の食事摂取基準」以下に減らしている栄養素もある
 完全栄養食とうたいながら、平均的な食事では取り過ぎてしまう炭水化物や脂質などの栄養素を、「日本人の食事摂取基準」以下に減らしている商品もある。なので完全栄養食といっても、完全栄養食だけの生活を想定していない商品もあることに留意する。特にカロリーを抑えている商品が多いので、完全栄養食だけの生活にするとカロリー不足になってしまうリスクがある。十分な栄養素と、不十分な栄養素をしっかり見極めることである。

6. 完全栄養食(完全食)の商品ブランド(参考)

以上

【参考引用先】

  1. ORICON NEWS「完全栄養食(完全食)のメリット・デメリット【プロが教える筋トレ】」2022.05.17 https://www.oricon.co.jp/special/58395/
  2. 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書
    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html