2023/03/27
技術用語解説62『ラミネートフィルム (Laminated Film)』
プラスチックフィルム、セロファン紙、金属箔、織布など各々異った特性の素材を組合せ、複合化した積層フィルムの総称である。2種以上の特牲の異った材料を複合化することで、各材料の欠点を補い合い、優れた特性を持つ積層材料(ラミネートフィルム)を得ることが可能となる。
使用される材料としては、ポリエチレン(低・中・高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマ樹脂などのシーラント材料、ポリエチレンテレフタレート類(PET)、ポリアミド類,ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物(EVOH)、ポリビニルアルコール、ポリアクリルニトリル類、ポリスチレン類などの機能性フィルム、紙(模造紙、上質紙、薄葉紙、グラシン紙、コートボールなど)、セロファン、金属箔(アルミ、鉄など)、織布など多種類にわたる。
1. ラミネートフィルムの製造方法
1) ドライラミネーション酢酸エチルなどの有機溶剤に溶解したウレタン系、ビニル系、アクリル系接着剤を基材に均一塗工し、熱風により、溶剤を蒸発させた後、他基材と圧着する方法で、多種類の基材に適用され、接着剤の種類・塗布量を変えることにより耐熱性、耐薬品性、耐油性など高品質特性の付与ができ、広範囲の組合せが可能となる。また有機溶剤に溶解させた接着剤の代わりに全く溶剤を含まない100%固形分接着剤による無溶剤ラミネーション方式も多く採用されている。
2) ウェットラミネーション紙、織布など多孔質の基材の張合せに用いられる。カゼイン、澱粉系水溶性接着剤、あるいは酢酸ビニル、アクリル系水性エマルジョン接着剤を一方の基材に塗工、接着剤が乾かない状態で、直ちに他基材と圧着張合せる。さらに加熱して多孔質基材面より水蒸気を飛ばし乾燥させる方式で、アルミ箔と紙、紙と紙などの組合せ構成に使われる。
3) ホットメルトラミネーション低分子量ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、変性ワックス、ポリイソブチレンなどの樹脂を加熱溶融し、基材に塗工後、他の基材と速やかに積層圧着、クーリングロールを通し冷却固化する方式で、アルミ箔とセロファン、紙と紙などの構成に適する。
4) 押出しラミネーションポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマ樹脂などをTダイからフィルム状に溶融押出しを行い、溶融状態にあるうちに基材と圧着冷却して積層化する。本法には主に次のような方法がある。サンドイッチラミネーションは溶融樹脂を中心に他の基材とサンドイッチ状に加工し3層構成を作る。タンデムラミネーションは加工速度の向上、工程の簡略化を目的とし、押出機を2台並べる加工方法である。なお基材となるプラスチックフィルム、アルミ箔には押出しラミネーションを行う前に有機チタネート、ポリエチレンイミン、イソシアネートなどを接着促進剤 (AC剤)として塗工する。紙基材の場合は、プレヒートやコロナ放電の前処理を行うのが一般的である。
5) 共押出しラミネーション複数の押出機を使いそれぞれの異った溶融複数樹脂を一つのダイに導き、ダイ内において溶融状態で積層し、一工程で複合フィルムを製造する方法で高付加価値あるいは工程の合理化に効果がある。
2. コーティングおよび真空蒸着法
ラミネーション方式の他に基材ヘガス遮断性、防湿、,耐油性、ヒートシール性、印刷適性、離型性などの性能を付与する方法として、塩化ビニリデンラテックス、ニトロセルロース、シリコン溶液などを基材へ塗工するコーティング方法、アルミ、硅素酸化物などを基材へ薄膜形成させる真空蒸着法も多く用いられている。
3. ラミネートフィルムの構成と用途
食品包装ラミネートフィルムは、フィルム構成により用途に応じた使い分けがなされており、現在の代表的事例を表1.に示す。
食品用途 | 主な構成 | 要求特性 |
---|---|---|
スナック食品 | OPP/CPP、KOP/CPP KOP/PE/CPP OPP/PE/CPP |
防湿性、ガスバリア性、耐油性、透明性 |
OPP/PE/Al/PE | 遮光性 | |
乾燥食品 (削り節、ふりかけ、粉末スープなど) |
OPP/EVOH/PE * OPP/PVA/PE * PET/PE/Al/PE セロハン/PE/Al/PE |
防湿性、ガスバリア性 |
レトルト食品 | PET/CPP * ONy/CPP * PET/Al/CPP * PET/Al/HDPE * CPP/PVDC/CPP * |
防湿性、ガスバリア性、耐油性、レトルト殺菌性 |
乳・乳製品 (牛乳、LL牛乳、スライスチーズ、スキムミルク、粉ミルクなど) |
PE/紙/PE PE/紙/PE/Al/PE KON/PE PE/Al/紙/PE PT/PE/Al/PE |
ガスバリア性、剛性、防湿性 |
液体スープ | KONy/PE/PE(シングル) KPET/PE/EVA |
ガスバリア性、耐油性 |
冷凍食品 (農水産加工品、調理食品) |
OPP/PE ONy/PE/EVA(共押出) KONy/PE/PE(シングル) PET/PE PET/PE/Al/アイオノマ(タンデム) |
耐寒性、耐ピンホール性 |
食肉加工品 (魚肉、畜肉加工品) |
KPET/PE/PE(シングル) CNy/PE KON/PE |
防湿性、ガスバリア性 |
(注記)
無印:押出ラミネート、*印:ドライラミネート
PE:ポリエチレン、OPP:延伸ポリプロビレン、CPP:未延伸ポリプロビレン、EVA:エチレン-酢酸ビニル共重合体、PET:ポリエチレンテレフタレート、ONY:延伸ナイロン、ONy:未延伸ナイロン、PVDC:塩化ビニリデン、EVOH:エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物、KOP:塩化ビニリデン塗工OPP、KPET:塩化ビニリデン塗工PET、KONy:塩化ビニリデンONY
以上
【参考文献・引用先】
- 「食品包装便覧(1988.3版)」公益社団法人日本包装技術協会
- 「包装技術便覧(2019.2版)」公益社団法人日本包装技術協会
- 「食品包装・容器」2020/01/27食品工場キーワード 木本技術士事務所HP
https://www.kimoto-proeng.com/keyword/508