2019/12/11
【日程計画】
Schedule
作業部署に与えられた作業指図書に従い作業順序を決定し、作業の開始と終了の予定時刻を設定した工程管理で作成される計画の一つ。
日程計画には、大日程計画(総合計画、半年~1年)、中日程計画(1~3ヶ月)、小日程計画(1~10日)がある。現場作業においては小日程計画が重要で、その目的は次の3つである。
- 納期の厳守
優先して作業すべきオーダーを決める - 生産期間の短縮
工程間のタイミングを調整する - 生産性の向上
効率的な作業順序を設定する
小日程計画を作成する際の留意事項を以下にまとめる。
➢ 中日程計画に沿うように計画する
➢ 原材料、資材の納入状況を把握する
➢ 各部署の作業能力、生産能力を把握する
➢ 納期や配送ルートの変更を把握する
内部的要因だけでなく外部的要因でさまざまな変更が発生することもあるので、臨機応変に対応できるような計画にすることを考慮して策定を行うことが必要である。
【平準化】
Schedule
全工程を通してサイクルタイム(稼働時間/生産必要量)中心の工程編成で、製品の種類と生産量が平均化していることをいう。例えば、後工程が自工程の仕事の工程計画だけを考えて平均的に製品・食材を工程から引き継ぎがかないと、前工程の仕事量にバラツキが生じ、滞留という状況となり作業のムダが発生する。このようなバラツキを最小化させ、工程のムダをなくすためには、最終工程での生産量と各工程製品・食材の引き継ぎ量を安定化させる必要がある。食品工場のような衛生面での影響が及ばないようにするため一気通貫にムダのない物の流れを考慮した平準化が重要になる。
平準化生産は必要生産量によって生産ラインのサイクルタイムを決める必要がある。そのために月の生産要求量を決める必要がある。日当たり必要数量を割り出し、これから製品の生産サイクルタイムを基にサイクルタイムスケジュール表を作成し、生産ラインのサイクルタイムを決めて生産を行う。この計画の良否により食品ロスの低減にも影響を及ぼす。
【チョコ停】
Short
stop
連続生産を行う生産設備において最も厄介な現象といえる。生産設備、例えば本来停止する工程でないときにライン内で短時間にチョコっと停止・空転を起こす現象をいう。
生産設備は、休止時間、生産品種の切り替え、包装材といった資材の変更・補給以外は、本来稼働していなければならない。
例えば、機械・設備の不具合により停止する以外に、製品を投入する速度が間に合わない、製品が詰まってしまった、生産準備の段取りが悪く投入タイミングがずれてしまったなどの理由でチョコチョコ停止を起こしてしまう。
この現象を減らすためには、生産設備を止めた原因・理由を情報として収集して分析することが必要である。原因を分析することで段取りに問題があるのか、投入する原材料の場所やタイミングに問題があるのか、などが分かれば対策を講じるなどで改善ができる。また生産のサイクルタイムに問題があるようであれば、生産設備全体の稼働速度を見直し適正な速度に変更するなどラインの全体最適化を図ることで生産性が向上することもある。
チョコ停が発生している条件、速度を少し落とすなど変えるだけでチョコ停がなくなり全体の生産効率が上がることもある。
【ボトルネック】
Bottle
neck
工場において生産量を左右してしまう生産工程・生産設備の部分をいう。
ボトルネックとは言葉の通リ「瓶の首」のことである。瓶に水を入れて逆さにすると瓶の首のところで水が塞き止められて下に流れにくくなる現象を指している。
生産ラインの全体最適化を図るためには、ボトルネックとなっている工程部分を重点的に改善する必要がある。ボトルネックは次のような工程・作業に着目し改善する。
➢ 品種切り替え時間の短縮
➢ 材料供給方法の改善
➢ 工程間のバッファ(滞留)の削減
➢ 設備のチョコ停の改善
➢ 設備の定期点検・補修による予防保全
➢ IoTやAIを活用した稼働監視による予知保全
【TPM】
Total Productive
Maintenance
工場設備の保全活動の一つである。工場の設備のメンテナンスは従来保全部門が担当していたところが多いが、昨今人材不足などから保全人員を置いていない中堅・中小企業もある。そのため製造部門のオペレーターが保全作業を行っている。清掃・給油・ボルト類の増し締めや劣化の早期発見が必須となっている。そのため保全活動を製造部門や間接部門も含めた全員参加で行う「TPM」活動として実施することをいう。
特に食品工場を例にすると、原材料や副材料が設備の隙間や回転部、摺動部などに付着して、磨耗などを起こし設備トラブルにつながっているところも多い。
このような状況を起こさない取り組みとして生産現場に関わるすべての者が最適な状態を維持できるように活動することが求められる。
【QCDMS】
Quality Cost Delivery Morals Safety
製造部門が果たすべき5つの責務の総称である。品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)、モラル(Moral)、安全(Safety)の頭文字からなる。
製造部門における問題発見のチェック項目として活用する。それぞれのチェック項目例を示す。
- 品質
不良は発生していないか、不具合が起きていないか、ロスは起きていないか、クレームはないか - 原価(コスト)
経費は節約されているか、能率は上がっているか、工数は減っているか、ムダな作業は発生していないか - 生産量(納期)
生産量は予定通リか、納期遅れはないか、過剰在庫はないか、数量違い(過不足)は発生してないか - 人間性
人間関係はよいか、やる気は向上しているか、創意工夫はよく行われているか、改善提案活動は活発か - 安全
災害は起きていないか、疲労度は改善されているか、労働環境は適正か、整理・整頓など(食品衛生5S+2S)はされているか
これらをチェックし問題点がないか確認するとともに、何か問題点が発見されたときは早期に改善を行う。
【生産性】
productivity
投入(ヒト、モノ、お金など)に対する産出(売上高、付加価値など)から求められる度合いをいう。すなわちヒト、モノ、お金など経営資源を経営活動に投入することによって、どれほどの成果を生み出したかを表す。
➢ 生産性 = 産出(売上高、付加価値)/ 投入(ヒト、モノ、お金)
分母の投入項目をヒト(労働量)でとらえたものを「労働生産性」、モノ(機械、設備)でとらえたものを「機械・設備生産性」、お金(資本)でとらえたものを「資本生産性」という。
生産性を計る指標としては次のようなものがある。
➢ 従業員1人当たりの年間生産高=(純売上高-当期製品仕入原価)/ 従業員数
➢ 機械投資効率 = 加工高 / 設備資産
➢ 原材料回転率 = 純売上高 / 原材料
➢ 仕掛品回転率 = 純売上高 / 仕掛品
➢ 製品回転率 = 純売上高 / 製品
【生産リードタイム】
Production lead time
リードタイムとは、ある目的のために掛かる時間、期間である。通常は時間単位、日単位で表現する。生産の指令が出されてから、生産が開始されて製品が完成し、いつでも出荷できる状態になるまでの時間をいう。
生産(製造)のリードタイムは、原材料を仕掛けてから完成品にいたるまでの時間である。
➢ 生産(製造)リードタイム = 加工 + 検査 + 停滞時間
このリードタイムは、遅れるのはダメであるが、逆に早すぎてもよくない。質・量・タイミングがベストマッチしないと損失(製品の停滞、不良在庫の発生など)を生じる。
食品業界においては、顧客にとって欲しいものが、欲しいときに、欲しいだけ手に入ることが非常に満足度を高くする。しかしながら、昨今では賞味期限の問題などから生じる「食品ロス」が社会問題となるなど改善が求められている。そのため適正な生産リードタイムによる生産が企業の競争力を左右するものとなる。短納期での対応を可能とする生産体制を構築できれば優位に立てることから、生産性向上のキーポイントとなる。
生産リードタイム短縮の留意ポイントは次の5つとなる。
➢ 段取り・切り替え時間の短縮
➢ 加工・調理・調合などの時間の短縮
➢ 工程削減、連動・連結
➢ 原材料・製品の共通化
➢ 不良低減、チョコ停防止、機械故障の防止
【工程能力】
Process
capability
生産工程が安定した状態で良品を生産できる工程の能力をいう。
工程能力はできあがった製品の品質的なものを含んだものをいうもので、量的な能力を表す。そのため「生産能力」とは異なることに注意する。
工程能力を算出するには、稼働状態が安定した工程で数値を計測する必要がある。
例えば、ジャガイモからスライスポテト(ポテトチップ)のスライサーの重量の工程能力を求めるためには、1ヶ月間の異常値(機械的なトラブル)などを取り除いたデータを50以上集め、管理図、ヒストグラムを作成する。そのデータから標準偏差σを求め、次の式で工程能力指数(Cp)を求める。
➢ Cp =(UL-SL)/ 6σ 両側規格の場合
➢ Cp =(平均値-SL)/ 3σ もしくは
➢ Cp =(UL-平均値)/ 3σ
SL:下限規格値、UL:上限規格値
【工程不良率】
Process fraction defective
不良率とは1か所でも欠陥のあった製品の割合またはパーセンテージのこと。
歩留まりは、工程が良好かどうかの概要を掴むのによいが、さらになぜ歩留まりが悪いのか、よいのかと追求していくときに工程不良率で見ていくことがよいとされる。
➢ 工程不良率 = 工程生産不良数 / 工程生産数 × 100
工程不良率をどのように活用するか、次に例を示す。
➢ 生産コストの関係を明確にして、工程改善を行う
➢ トラブルとの関係を明確にして、トラブル削減を行う
➢ 客先クレームとの関係を明確にして、品質向上を行う
➢ 設備・機器性能との関係を明確にして、設備効率を上げる
工程不良率は、生産性向上、品質向上に活用することが重要である。
工程ごとに不良率の比較をして、致命的不良が発生する工程を重要工程として管理ポイントとする。
不良発生を防止するためのステップを次に示す。
➢ 不良発生防止テーマと管理ポイント(目標値)を設定する
➢ 不良の現象を正しく理解する
➢ 考えられる原因を数多く出す
➢ 対策を考える
➢ 優先順位を付けて実践する
➢ 不良が低減したことを確認する
➢ 改善を水平展開する
【歩留まり】
yield
生産されたすべての製品に対する不良品でない製品の割合をいう。
投入された原材料の量と、その主原料から実際に産出された製品の量との比率のこと。
➢ 歩留まり = 産出された製品の量 / 投入された主原材料の量 × 100
生産の効率を見るための指標となる。この歩留まりで工程のよしあしで良品割合を掴むことができる。どのような製品でも、製造されるすべての製品が出荷できるわけではない。製造工程においては一定の割合で不良品が含まれる。不良品を取り除いた、出荷できる規格通リの製品割合が歩留まりである。
不良品の割合が高いと歩留まりは下がり、不良品が少なければ歩留まりは上がる。
歩留まりが低いと、原材料費や製造コストのムダが大きくなるため、企業の収益を圧迫する要因となる。
【製造効率・生産効率】
Manufacturing efficiency
使った原材料・資材に対して生み出された成果(製品量)のことをいう。
食品産業をはじめとする装置産業において、製造効率として用いる指標に設備総合効率がある。これは設備がどの程度効率よく使われているかを測定する指標で、設備効率を阻害するロスと関連付けて算出する。
➢ 設備総合効率 = 時間稼働率 × 性能稼働率 × 良品率
上式に示すように、停止ロスの大きさを時間稼働率で、性能ロスの大きさを性能稼働率で、また不良ロスの大きさを良品率で表す。この3つの相乗積を設備総合効率と呼ぶ。
現状設備が時間的、速度的、品質的に総合して付加価値を生み出す時間に対し、どれだけ貢献しているかを示す尺度である。
目標は時間稼働率90%以上、性能稼働率95%以上、良品率99%以上でこれらの相乗積の設備総合効率は85%以上を目指す。一般の工場は40~60%程度である。
➢ 時間稼働率
設備が動くべき時間(付加価値時間)に対し、実際に動いた時間(稼働時間)がどれだけの比率であるかの尺度
➢ 性能稼働率
設備が本来持っている性能が十分発揮されているかどうかを示す尺度
速度稼働率の相乗積で表される
➢ 速度稼働率
スピードの差のことである。設備が本来もっている能力(サイクルタイム、ストローク数)に対する実際のスピードの比率を示す尺度
➢ 正味稼働率
単位時間内において、一定スピードで稼働しているかどうかを明確にするもの
➢ 良品率
加工した数量に対して、実際にできあがった良品数の割合
【潜在ロス】
Potential loss
生産活動における基本的なロスには16のロスが存在するといわれている。
「設備効率」「人の効率」「原単位」の3つを阻害するロスに層別できる。これらのロスの中で組織として定量的に把握できていないロスを潜在ロス(見逃しロス)という。
生産性向上には、この潜在ロスを顕在化し改善することが重要である。
16のロス内訳 | |
設備効率を阻害する8つのロス |
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人の効率を阻害する5つのロス |
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原単位を阻害する3つのロス |
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これらロスの構造分析とロスの定量化ができれば、潜在ロスは顕在化できる。
【ロット】
Lot
一定の等しい条件下で生産された、あるいは生産されたと思われる製品の集まりをいう。
ある製品を一度に生産している製品のまとまりのこと。
例えばA製品を100個まとめて生産したとすると、この100個をロットという。転じて、製品を発注するときに一度に納入発注する単位などもロットという。これを生産ロット、発注ロット、納入ロットなどという。
またロットは生産の単位、あるいは取引・物流の単位ばかりでなく、品質管理の単位としても重要である。工場では同一ロットに属する製品は同じ材料、同じ設備、同じタイミングで作られており、品質はほぼ同一と考えてよい。
【在庫管理】
Inventory
control
企業内に保管されている生産のために必要な原材料・製品などの購入資材、製造工程用の仕掛品、販売のための製品、保守・修理などの予備品などを保管することで、在庫されている品目を在庫品という。
在庫を多く持ちすぎると経営を圧迫し、少なすぎると必要なだけの製品を製造できないことから、製造工程が遊んでしまう。顧客に対するサービス機会を逃してしまう。
在庫管理の狙いは、在庫にかかる費用をできるだけ抑えながら、安定した生産活動を維持する。これにより顧客に対してサービスレベルの向上を図って、できるだけ市場の需要に応じられるようにすることにある。
【日報管理】
Daily report
control
工場における各工程の管理項目と、その項目の活動結果を明記した日々の記録から管理を行う。作業の確認、証拠保存、工程改善などに活用する。情報による状況と分析に有効な手段となる。たとえば日報には原材料・資材受け入れ日報、製造日報、検査日報、製品出荷日報など多岐に渡る。各職場で日々作業し、その結果発生する計数値、数量値、コメントなどの管理値が記入されるが、実施者、責任者の確認・記録がないと日報としての機能を果たさない。
作業日報は、良品製造のために標準化された作業標準に従って作業が行われれたことを証明し、確認する目的で作成される。これら日報に記入される項目により、製造管理基準(品質管理計画)に決められた条件をクリアしているかを確認される。
また、原材料・資材受け入れから製品出荷、納品先までの製品の物流状況を含めたトレーサビリティーが実践されることで日報は製品品質管理の重要な記録となる。
【トヨタ生産方式】
Toyota Production
System(TPS)
トヨタ生産方式の二本柱である「自働化(異常が出たら止める)」と「JIT:ジャストインタイム(必要なときに、必要なモノを、必要なだけ)」をトヨタ自動車が体系化、モノづくりに携わるすべての人々のための生産管理技術・手法である。「徹底的な原価の低減」からムダを排除することを提唱している。販売動向に合わせた生産を実現するために、最終工程での安定した生産(平準化生産計画)を前提として「かんばん方式」「目で見る管理」などの道具を用いて製造現場の改善を実践していく企業活動である。
【セル生産方式】
Cell production
system
ラインや工程を構築する際、省スペース化、設備の小型化・低廉化を進める手法である。
1つの工程の塊が、あたかも細胞のように自律的に活動することから「セル」と名付けられた。1人の作業者が品質・コスト・納期に責任をもって作業を完結するシステムである。
多品種少量生産を要求されるモノづくりにおいて、顧客からのきめ細かな要求事項に、ムダなく、迅速に対応しようとする狙いがある。
セル生産方式確立の過程では、1人当たりの生産性の向上、工場面積当たりの生産性向上を指標にした製造現場主体の「ムダ取り」が実践される。
生産リードタイム短縮により生産効率の向上を図り設備投資を極力最小化した生産方式である。