技術用語解説70『機能性包材 (High Performance Packaging Materials)』

技術用語解説70『機能性包材 (High Performance Packaging Materials)』

1. 包装の機能と機能性包材の定義

 包装の機能には、保護性、便利性、快適性があり食品包装では、食品の製造・流通過程における内容物の保護機能が最も重要である。保護性とは、輸送,保存中に起こる微生物汚染、腐敗や温湿度、酸素、振動・衝撃等の環境条件によって促進される成分の酸化、変色、吸湿、破損等の諸々の被害要因から内容物を守り、品質低下を防止する機能である。便利性は、食品等を保、,輸送、販売する際に運びやすくしたり、小口に分配したり、組み合わせたり、混同を防止したり、利用する際の簡便性の向上などを目的としたものであり快適性は、包装に人目を引く色彩やデザインを施して販売促進の効果を持たせたり、清潔感や未使用性を感じさせたり、表示により内容成分等を明らかにするなどの機能である。
 包材に求められる機能は、これらの包装の機能に対応するものであり、食品を包装する場合、次の3点が重要である。
 (1)化学的・物理的安定性
 (2)物理的強度
 (3)遮断性
 包材には従来からこのような機能はある程度備わっているが、従来の同種の包材と比較してとりわけ優れた特性を持っているもの、あるいは鮮度保持効果、抗菌性、ガス吸着性などのような今までになかった新しい機能を持たせた包材に対して、それらの機能を強調する意味で「機能性包材」という言葉が使われている。言い替えればキャッチフレーズとして充分使えるだけの優れた機能がある包材を一般に「機能性包材」と称している。これらの優れた機能を更に強調する意味で「高機能性包材」という言葉も使われている。現在開発されている大部分の食品用機能性包材、機能性包装副資材は、食品の保護性に関するものである。

 

2.機能特性と分類

 包材は化学的、物理的に安定なものでなければならない。現在用いられている多くの包材は化学的に安定であり、これは安全性の点からも重要な特性である。また、保護性に関連して、包材の温度に対する安定性も重要であるが、特に耐熱性は食品の殺菌、再加熱と関連して非常に重要な特性となっている。食品を流通させる場合、包材に物理的強度が要求される。振動に対しては耐屈曲疲労性、耐折強度、耐摩耗性等、衝撃に対しては衝撃強度、破裂強度、引裂き強度、緩衝性等、この両者に対して引張り強度、ピンホール強度等の特性が重要である。食品に対する保護性の点では、包材が持っている遮断性が非常に重要な特性となっている。食品の変質は、空気中の酸素、水蒸気、光線によって促進されることが多く、この場合包材の気体遮断性、特に酸素遮断性および光線(紫外線)遮断性が重要な特性になる。乾燥食品では水蒸気透過性が問題となり、低温流通食品では断熱性が関係している。青果物の場合には、その鮮度を保持するためには適度の酸素の補給が必要であり、従って包材のもつ酸素の透過性が重要になり、食品の風味保持では揮発性物質の遮断性、非収着性が重要となる。便利性、商品性における機能は、主に包材の二次加工、デザインによるもので、利用上の便利さ、販売促進効果等を狙った多くの機能性包材が開発される可能性がある。その他、作業性、経済性等の特性があげられる。
 現在まで、非常に多くの機能性包材・副資材が開発され、実用化されている。これら機能性包材・副資材を使用して包装する機能性と包装形態について表1.に示す。

表1. 各種の包装に求められる機能性と包装形態

NO 機能性 包装形態
1 酸素遮断性 密着包装、真空包装、窒素ガス置換包装、脱酸素剤封入包装、脱酸素剤練り込み包装
2 水蒸気遮断性 防湿包装、乾燥剤封入包装
3 遮光性 紙包装、アルミ箔包装、紫外線遮断フィルム包装、紫外線遮断インキ使用包装
4 鮮度保持機能 脱酸素剤によるO2吸収、CO2を発生する包装
5 ガス調製機能 CA包装 (CO2+O2)
6 水分調製機能 水分調製包装 (水分吸収性と保水性)
7 耐熱機能 殺菌や滅菌対応の耐熱包装、オーブン対応包装
8 清浄性(clean) クリーンルーム対応のクリーン包装
9 封緘機能 ヒートシール、密栓、二重巻締缶密閉容器包装
10 開封機能 一軸延伸フィルム袋、ノッチ、高周波開封容易性包装
11 再封機能 チャック付き袋、口栓付き容器包装
12 食べ頃表示機能 インディケータ付き包装、インテリジェント包装
13 高強度性 高強度包装材料
14 薄膜機能 真空蒸着包装 (アルミ、シリカなど)、プラズマ処理包装
15 安全衛生機能 難開封包装 (チャイルドレジスタント)、衛生安全包装、安全作業性包装
16 偽造防止機能 ホログラム利用包装、透かし入れ包装
17 開封確認機能 フードテロ対策包装、悪戯防止包装、未使用確認包装
18 食品ロス対策 長期間保持可能包装 (レトルト食品、無菌食品)
19 災害・備蓄性 長期間保持可能包装 (レトルト食品、無菌食品、缶詰)
20 食品の安全性 滅菌対応長期間保存可能包装 (レトルト食品、無菌食品)、異物混入防止長期間保存可能包装 (レトルト食品、無菌食品)、剥離性長期保存可能包装 (レトルト食品、無菌食品)
21 静電気防止機能 カーボンなどの導電性物質塗工包装
22 電磁波防止機能 鉄フォイル使用包装
23 環境保護対策 植物由来バイオプラッスチック包装
24 海洋汚染対策 生分解性プラスチック包装、サーマルリサイクル可能包装
25 利便性機能 ICタグ(RFID)付き包装、スマート包装

 

 多様なニーズから様々な機能性包材を使った機能性包装技術が導入され、近年の環境問題に対応した包装技術が開発されている。

以上

【参考文献・引用先】

  1. トコトンやさしい「包装の本 第2版」著者:石谷孝佑 他 発行:日刊工業新聞社
  2. 「食品包装の科学」監修:石谷孝佑 編著:日本食品包装協会 発行:日刊工業新聞社
  3. 「食品容器包装の新しいニーズ、規制とその対応」編集・発行:技術情報協会
  4. 「容器包装材料の環境対策とリサイクル技術」編集・発行:技術情報協会
  5. 「食品包装・容器」2020/01/27食品工場キーワード木本技術士事務所HP
    https://www.kimoto-proeng.com/keyword/508
  6. 「ラミネートフィルム (Laminated Film)」2023/03/27食品工場キーワード木本技術士事務所HP
    https://www.kimoto-proeng.com/keyword/3341
  7. 「生分解性プラスチック(Biodegradable Plastics)」2021/06/24食品工場キーワード木本技術士事務所HP
    https://www.kimoto-proeng.com/keyword/1698