2020/04/18
食品添加物
『食品添加物』
Food additive
食品添加物は、食品衛生法では「食品の製造の過程において又は、食品の加工、若しくは保存の目的で食品に添加、混和、浸潤、その他の方法によって使用するもの」と定義されている。厚生労働大臣が安全性と有効性を確認して指定した「指定添加物」、天然添加物として品目が確定しリスト化されている「一般飲食物添加物」、「既存添加物」、「天然香料」に分類される。また、添加物は、甘味料や着色料、保存料など、それぞれの効果や役割、用途別に厚生労働省が分類している。
代表的なキーワードについて以下に詳述する。
【指定添加物】
designated additives
食品添加物は、化学的合成品や天然添加物など製造方法の違いにかかわらず、食品衛生法第10条に基づき、厚生労働大臣が安全性と有効性を確認して指定した添加物でなければならない。これを指定添加物といい、令和元年(2019年)6月6日現在、463品目が指定されており、食品衛生法施行規則別表第1「指定添加物リスト」に収載されている。
食品添加物として指定される要件は、以下のものとされている。
- 安全性が実証または確認されるもの
- 食品の製造、加工に必要不可欠なもの
- 食品の栄養価を維持させるもの
- 腐敗、変質、その他の化学変化などを防ぐもの
- 食品を美化し、魅力を増すもの
- そのほか消費者に利点を与えるもの
- ② 使用により消費者に利点を与えるもの
- すでに指定されているものと比較して、同等以上か別の効果を発揮するもの
- 原則として化学分析などにより、その添加を確認し得るもの
【一般飲食物添加物】
substance which is generally provided for eating or drinking as a food and which is used as a food additive
法律では「一般に食品として飲食に供されるもので添加物として使用されるもの」と定義されているが、これを「一般飲食物添加物」と呼んでいる。
一般飲食物添加物の例としては、オレンジ果汁を着色の目的で菓子に使用することやコンニャクイモ抽出物をゲル化の目的で使用するように、一般に食品として食されるものを添加物として使用するものをいう。
これらの品目や基原、製法、本質などは、「一般に食品として飲食に供されているものであって添加物として使用されている品目リスト」に約100品目がリストアップされている。
食品に添加物として使用した場合の表示は「着色料(オレンジ果汁)」や「ゲル化剤(コンニャクイモ抽出物)」といったように、使用した目的に応じた表示が義務付けられている。
【既存添加物】
existing food additives
平成7年(1995年)の食品衛生法改正の際に、食品添加物利用経験がある天然の食品などを原料とし、長年使用されていた実績から選定された「既存添加物名簿」にリストアップされ、引き続き使用することが認められたものである。
既存添加物リストには令和元年(2019年)6月6日現在、365品目がリストアップされ、品名や基原、製法、本質などは、「既存添加物名簿収載品目リスト」に明記されている。
また、今後、新たに開発製造される天然由来の食品添加物は、安全性と食品に対する有効性を厚生労働大臣が確認し、指定する指定添加物に分類される。
【天然香料】
Natural flavoring agent
オレンジ、りんごおよびレモン、乳などの動植物から蒸留抽出などによって得られる着香を目的とした添加物で、一般に使用量が微量であり、長年の利用実績から健康被害がないことが認められている香料である。
「天然香料基原物質リスト」には令和元年(2019年)6月6日現在、612品目がリストアップされている。これらの品目については一括名称として「香料」を使用できるが、物質名により表示する場合には、「オレンジ香料」のように、基原物質名称または別名に「香料」の文字を付することとなっている。
ただし、複数の香料を併用した場合の表示は、一括名称として「香料」となる。
【着色料】
food color
着色料は、「食品を美化し魅力を増すため、食品の着色を目的に使用される食品添加物」と定義される。
着色料には「食用赤色3号」「食用黄色4号」などの食品衛生法施行規則別表第1に記載されている指定添加物と、「クチナシ色素」「赤キャベツ色素」などのような天然物から抽出され、既存添加物名簿収載品目リスト・食品表示基準情報等一覧に収載されたものや一般飲食物添加物がある。また、これらの着色料を食品に使用する場合には、着色料の使用基準を順守する必要がある。
着色料は、液体(水溶性・油性)・ピューレ・ペースト・粉末とさまざまな形態で流通し、保管場所や使用方法については、十分に確認する必要がある。
着色料は化学的な性質がことなるため、特に食品の原料の成分組成、pH、タンパク質の含有量などによって色調が変化することがあるため、まず使用する着色料の性質を踏まえて選択を行い、その上で最終的に食品での確認が必要となる。また、熱や光、金属イオン、酸化・還元物質により変色や退色が生じるため、経時変化についても確認する必要がある。
【増粘安定剤】
thickening stabilizer
食品衛生法では増粘剤、安定剤、ゲル剤の総称である。糊料として分類される食品添加物でもある。自然界に存在する動植物から分離して得られるもの、微生物が産出する多糖類を抽出、加工して得るものが主である。通常は溶解して使用する。食品への粘度の付与、乳化の安定、気泡の安定、固形物の分散安定、離水の防止、ゲル化などの機能により、食品の組織を形成、または品質を向上する目的で使用される。
増粘安定剤は、その種類により大きく性質が異なり、単独もしくは併用することでさまざまな機能を食品に付与することができるが、配合する物質や、温度、時間、pHなどの条件によっては効力を発揮しない。このため、求める機能と条件によって素材を適切に選択し、工程を適切に設定することが重要である。
【甘味料】
sweetener
甘味料は多岐に渡るが、主役となるのは砂糖である。加工食品や清涼飲料などの生産量の増加に伴い、甘味料の質的な変化は目覚ましく、砂糖の味質に近いさまざまな甘味料が上市されている。甘味料は、糖質系甘味料と非糖質系甘味料とに大別される。
糖質系甘味料は、一般的糖類(砂糖、異性化糖、ブドウ糖、水あめ等々)と、機能性糖質に分けられる。機能性糖質には、整腸作用を有する各種オリゴ糖や、糖類に水素添加することで得られ、低カロリー、虫歯予防、血糖値の急激な上昇を引き起こさないといった機能性や耐熱性、耐酸性などの加工特性を有する糖アルコール(キシリトール)がある。
非糖質系甘味料は、砂糖の200~600倍の甘さを持つ高甘味度甘味料(サッカリン、スクラロース、アスパルテーム等々)が該当する。
商品によって、形状(液体、ピューレ、ペースト、粉体)、甘さ、粘性などの特性が異なるため、製造する製品に適した甘味料を選択する必要がある。
【調味料】
seasoning
調味料は、「食品の製造又は加工の工程で、味の付与又は味質の調整等味覚の向上又は改善の為に使用される食品添加物及びその製剤」と定義されている。
要するに、食品の嗜好性、特に味の品質向上に寄与し、食品の味付けの簡便性、品質安定性、経済性などに貢献する物である。
調味料は「食品の味を調え、おいしさを増すもの」で、これらはアミノ酸、核酸、有機酸、無機塩の4つのグループに分類され、それぞれ味の五基本味である甘味、塩味、酸味、苦味、旨味の内、「旨味」や「塩味」を食品に付与するとともに、味質を調和させ、味覚を向上改善し、食品のおいしさに寄与する。
製造する食品に適した調味料を選択することにより、次のような品質の向上が期待できる。
- 旨味の付与(L-グルタミン酸ナトリウム)
- 塩味の付与(塩化カリウム)
- こく味、味の広がり、厚みの付与(カニエキスにグリシン)
- 塩ぼけの改善、塩なれ効果
- 天然素材の風味を引き出す効果(昆布だしに少量の核酸系調味料)
など
表示に関しては、「物質名(品名、簡略名、類別名)」で表示するか、「一括名」で表示することが決められている。
【漂白剤】
bleaching agent
加工食品の原料に含まれている好ましくない色素成分や着色物質を無色にして色調を白くする、綺麗で鮮明な色調に調える目的で使用される食品添加物をいう。ただし注意しなければいけないのは、漂白剤を胡麻や豆類、野菜に使用することは禁止されていることである。使用後は洗浄などの工程で除去される場合には、加工助剤と見なされる。
漂白には、「酸化」「還元」という異なる2つの作用による方法がある。亜塩素酸ナトリウムなどの酸化漂白剤は、酸素の酸化作用で色素成分を分解して脱色する。次亜硫酸ナトリウムなどの還元漂白剤は、酸性水溶液で分解して漂白するもので、水溶液に食品を浸漬する場合などに使用されている。
【乳化剤】
emulsifier
食品に乳化、分散、浸透、洗浄、起泡、消泡、離型などの目的で使用される食品添加物およびその製剤を総称して乳化剤という。
乳化剤は、1つの分子内に親水基と新油基を持つ構造を持ち、その比率が変わることで性質も異なってくる。また、親水基と新油基を構成している物質の違いから、グリセリン脂肪酸エステルやショ糖脂肪酸エステル、植物レシチンなど多くの種類がある。
用途に応じた適切な乳化剤を選択する客観的な方法として、HLB(Hydrophile Lipophile Balance)と呼ばれる数値を指標として用いるが、あくまでも目安であり最終的にはトライアル&エラーで決定することが一般的である。
商品によって形態が、液体、粉体、ピューレ、ペースト、フレーク、ブロックなどさまざまであり、取り扱いにおいて工夫が必要な場合がある。
【酸味料】
acidifier
食品の製造または加工工程で、酸味の付与または増強による味覚の向上や改善のために使用される食品の向上や改善のために使用される食品添加物およびその製剤をいう。
酸味料とその塩類は、食品に酸味を付与しない程度で、適切なpH(水素イオン濃度)領域に保つために使用される食品添加物およびその製剤であるpH調整剤(acidity regulator)としても使用されている。
品目としては、代表的なクエン酸、DL-リンゴ酸、乳酸、DL-酒石酸などが認可されている。表示する一括名は酸度調整の目的で使用した場合は「酸味料」、pH調整の目的で使用した場合は「pH調整剤」になる。
一括名の酸味料およびpH調整剤に該当する品目は、使用基準が定められていない。酸味料は品目によって酸味の質や呈味時間が異なるので、複数の酸味料を組み合わせることで酸味の立ち上がりやピーク到達時間を調整し、よりおいしい酸味にすることが可能である。
【苦味料】
bittering agent
苦味料は「食品の製造又は加工の工程で、苦味の付与又は増強による味覚の向上又は改善の為に使用される食品添加物及びその製剤」と定義されている。
苦味物質(アルカロイド「カフェイン」、配糖体「ナリンジン」、ケント「ルブロン」)は代表的なものであるが、少量でも敏感に感じるため強くならないような使用が求められる。
苦味は、食品加工時の味のアクセントとして、適度の苦味は味にしまりを与え、消化酵素の分泌を促し、おいしいを増幅させる効果がある。
苦味料は食用・薬用あるいは生薬植物より抽出されたもので、既存添加物としてのイソアルファ抽出物、カフェイン、ゲンチアナ抽出物、ナリジンに代表され、また一般飲食物添加物としてヨモギ抽出物、オリーブ茶、ホップ抽出物が挙げられる。
苦味料の製剤は、主剤とし、これらの1種類または2種類以上を配合したものと、製剤化のために配合される副材からなる単一目的製剤である。表示名称は、「苦味料」となる。
【香料】
flavoring agent
着香を目的とする食品添加物である。香料は、指定添加物として食品衛生法施行規則別表第一に掲載されているものと天然香料とに分類される。
指定添加物に該当する香料には、18類で指定された物質と個別の品目として指定されている物質がり、品目として指定される物質には物質ごとに規格が定められている。天然香料は、「動植物から得られたもの、またはその混合物で着香の目的で用いられるもの」と定義されている。
天然界にはおよそ数千万種の化学物質があるといわれ、食品中の香気には、多いもので600種類程度の物質が含まれている。したがって実際の香料製品ではそれぞれの品目が単独で使用される例は少ない。ほとんどがこれらを混合し、あるいはまた、扱いやすくするためにほかの添加物や食品などにより希釈・粉末化などの製剤化を施した「香料製剤」という形態で流通している。
【保存料】
preservative
加工食品の微生物による腐敗、変敗を防止し、貯蔵性を向上する目的で使用する食品添加物である。食品衛生法では、使用基準が設定され使える食品や使用量が限られている指定添加物(18品目)と使用基準の設定がなくどんな食品にも使用できる既存添加物(8品目)に分類されている。
指定添加物の代表的なものとしては、ソルビン酸、プロピオン酸、ナイシンなどがあり、漬物や魚肉練り製品をはじめ幅広く食品に使用され、安全性の高い保存料として利用されている。その効果はpHが低いほど高い抗菌性を示すことから、酸性側での使用が望ましい。
既存添加物は、魚類の白子から抽出する白子タンパク抽出物、微生物の培養物から精製して得られるε-ポリリシンが代表的なもので、細菌類に対する抗菌性が強いことが知られている。なお、これらを保存料として食品に使用した場合は、「保存料(物質)」のように用途名を併記しなければならないので注意する。
【酸化防止剤】
antioxidant
食品中の成分と空気中の酸素が反応(酸化)して食品の品質が劣化するのを防ぐために添加する。酸化防止剤は大別するとミックストコフェロール(抽出ビタミンE)、没食子酸プロピルなどの油溶性のものは主に食品中の油脂の酸化を防ぐ目的で使用され、L-アスコルビン酸(ビタミンC)、エリソルビン酸ナトリウムなどの水溶性のものは食品の色の退色を防ぐ目的などで使用されている。
食品に使用した場合の表示は用途名を併記する必要があり、例えば「酸化防止剤(L-アスコルビン酸)」といった表記をする。
【強化剤】
fortifying agent
栄養強化の目的で使用される食品添加物で、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸、核酸類がある。ビタミンL-アスコルビン酸(ビタミンC)のほか42品目、ミネラルは鉄塩類、カルシウム塩類、亜鉛塩類、銅塩類がある。これらの中には使用基準が定められているものがあるので、使用する際は注意する必要がある。
ビタミンおよびミネラルについては、これらの食品添加物で栄養を強化することによって、強化した栄養素に関する強調表示を行うことが認められている。さらには、一定の規格基準を満たすことによって、栄養機能食品として栄養機能に関する表示をすることもできる。アミノ酸については体内で合成されないか、合成されても非常にわずかであるために食事から摂取する必要のある必須アミノ酸など37品目がある。
【加工助剤】
processing aids
食品の加工の際に添加されたか、次の3ついずれかに該当する場合をいい、最終食品への添加物表示が免除される(食品衛生法施行規則第21条①ホに記載)。
- 最終食品として包装される前に食品から除去されるもの(例:油脂製造時の抽出溶剤であるヘキサン)
- 最終的に食品に通常含まれる成分と同じになり、かつその成分量を有意に増加させるものではないもの(例:清酒、ビールの原料水の水質を調整するための炭酸カルシウム)
- 最終的には、最終食品の食品中にごくわずかな量しか残留せず、その食品に何ら影響を及ぼさないもの(例:豆腐の製造工程において大豆汁の消泡の目的で添加するシリコーン樹脂)
このように加工助剤とは、食品の製造、加工の過程で用いられるが、最終的に残存しないか、残ってもごく微量でその影響が発現しないものをいい、国際的にもFAO/WHOや米国、EU諸国でも表示を行う必要がないものとなっている。
【膨脹剤】
Raising agent
パンおよび菓子などの製造工程で添加するもので、1種類または2種類以上の成分による化学変化によって発生する炭酸ガス、もしくはアンモニアガスの力で生地を膨脹させ、多孔性にするとともに、食感を向上させるための食品添加物およびその製剤をいう。
現在の主流は一剤式膨脹剤だが、二剤式膨脹剤もある。酸製剤を変えることにより分解をコントロールして速効性、遅効性など種々の膨脹剤が製造されている。
用途としてはケーキ、クッキー、ビスケット、ホットケーキなど焼き菓子、中華まんじゅうなどの蒸し物で、用途に応じて膨脹剤を変えて使用されている。
この製剤の食品への表示は一括名で「膨脹剤」、「ベーキングパウダ」または「ふくらし粉」と表示する。食品工場で使用する場合に注意することは、直射日光、高温、多湿を避けて保存し、冷蔵庫での保管は庫内から搬出すると結露する恐れがあるので要注意である。
【製造用剤】
Processing agent
加工食品は種類も多く、いろいろな製造方法で製造されているため、使用される食品添加物はその機能、用途が多岐にわたり、統一的な用途名によって分類することが困難なものがある。製造用剤という分類は、このような食品添加物を便宜上まとめたものである。
食品製造時のろ過精製の際に不純物を吸収し、ろ過を効率よく行うために使用される過助剤(二酸化ケイ素)、タンパク質やデンプンの加水分解やアルカリ性の中和に使用される散剤(塩酸)、アルカリ性による剥皮や酸性中和に使用されるアルカリ剤(水酸化ナトリウム)かまぼこ、ハム、ソーセージ、麺類などの組織を改良することや離水の防止などに使用される結着剤(リン酸塩)、パン生地などが機械や焼き型に付着するのを防止するために使用される離型剤(流動パラフィン)、惣菜やサラダなど保存性の低い加工食品に、短期間微生物の増殖を防いで腐敗や変敗を抑える日持向上剤(エタノール、グリシンなど)がある。
【次亜塩素酸ナトリウム】
sodium hypochlorite
次亜塩素酸ナトリウム液は塩素系殺菌剤のひとつであり、食品製造の分野で食品添加物殺菌料として活用されている。大量調理施設衛生管理マニュアルにおいても「加熱せずに供する野菜の殺菌」や「調理機器の殺菌」での使用が記述されている。
殺菌力が強く、取り扱いも簡便であるため、食品製造現場でも多用されていますが、注意しなければ効果が減少してしまったり、危険が生じたりすることがある。
まな板やクロス等の調理器具類の殺菌・漂白や、野菜の殺菌等、食品衛生の分野で活用されている次亜塩素酸ナトリウム液。ノロウイルス対策にも用いられる。効果的に使用するためには、特徴や効果を理解しておくことは重要である。