『環境保全』

食品工場では、大きな環境負荷が発生している業界であり、食品ロスとしてメディアでも頻繁に取り上げられている食品廃棄物の問題など技術面で環境保全に向け取り組みを含め、環境問題を最重要視していかないといけない。
調和のとれた社会を維持することを目的として、国では法律によりさまざまな規制を行い企業にもその順守を義務付けている。食品工場に携わる者が、知っておくべき環境保全の基本的な用語について取り上げることにする。

【環境マネジメントシステム】
EMS:Environmental Management System

企業や事業所、官公庁などの組織において、自らの活動や製品、サービスが環境におよぼす影響を管理するための仕組みをいう。組織のトップが定める環境方針に基づいて、環境負荷の低減、あるいは法律などにより規制されている事項の順守に向けた活動を計画・実施し、活動結果を監視・測定して、必要な改善を行う一連の仕組みである。
その仕組みの要素が定められた代表的なものに認証制度のISO 14001がある。これには、環境方針の設定から、計画、実施および運用、点検、マネジメントレビューについて、環境を管理する上で必要な組織の機能が要求事項として文書で定められている。これを適用する組織は、この要求事項に基づき組織のルールとして仕組みを文書化し、これを実施・維持する。この要求事項への適合性を審査登録機関による審査を受け、合格することで適合組織として認証される。

【グリーン調達】
green procurement

企業などが自社で使用する原材料や部品を調達する際、より環境負荷の低いものを優先的に選択することをいう。2001年に「グリーン購入法」が制定され、国や独立行政法人などの機関に対して特定の調達品目について優先して選択・購入することが義務付けられた。また、民間の事業者に対してもグリーン購入に努めることを求めている。 現在、独自に「グリーン調達基準」を定め、積極的にグリーン調達に取り組んでいる企業が増加している。その中で、環境配慮製品(エコ商品)の優先購入として省エネルギー性、リサイクル性、耐久性の考慮、有害化学物質などの物品への含有や使用についての禁止や抑制を定めている。

【3R】
Reduce、Reuse、Recycle

環境と経済が両立した環境型社会を形成していくためのキーワードであり、Reduce(リデュース:発生抑制)、Reuse(リユース:再使用)、Recycle(リサイクル:再資源化)の3つをいう。「環境型社会形成推進基本法」においても、基本原則として3Rの推進が定められている。次の優先順位で対策を推進するように定めている。

① 発生抑制
② 再利用
③ 再生利用(マテリアル・リサイクル)
④ 熱回収(サーマル・リサイクル)
⑤ 適正処分

3Rの自主的な取り組みを事業者、国民、地方公共団体などに対して求められている。そのほか、3R技術への研究開発投資などにより、新たな環境型対応・環境ビジネスの創出・発展を促すとともに、循環型経済システムの構築に取り組んでいる。

【環境ラベル】
environmental labeling

環境負荷の少ない製品に対し、その情報を製品やパッケージ、広告などにより消費者に伝えるものを環境ラベルという。消費者が商品を選択する際、環境ラベルでの情報を判断材料とすることで、環境にやさしい製品の普及促進を目的としている。
国際規格としてISO 14020番台の規格にて基準化している。ISO規格では、環境ラベルがタイプⅠ~Ⅲに分類されており、これに基づいて各国または各業界により、さまざまな環境ラベルが定められている。日本の「エコマーク(図⒈)」はタイプⅠに該当する環境ラベルで、第三者機関による認定によりマークを表示することができる。

図1.エコマーク

図1.エコマーク

【ゼロ・エミッション】
zero emission

1994年に国連大学が提唱した考え方で、あらゆる廃棄物を原材料などとして有効活用することにより、廃棄物を一切出さない資源循環型の社会システムのことをいう。狭義には、生産活動から出る廃棄物のうち最終処分(埋め立て処分)する量をゼロにすることを指す。
具体的には、生産工程での歩留まり(原材料に対する製品の比率)を上げて廃棄物の発生量を減らし、廃棄物を徹底的にリサイクルすることを目指す。国内では、環境管理の国際規格ISO14001の普及や埋め立て処分費用の上昇とあいまって、工場のゼロ・エミッションに取り組む企業が増えている。
例えば、A社の副生産物をB社の原材料に転換したり、B社の廃棄物をC社の再生資源に転換したりして、企業間の連携によりゼロ・エミッッション化を目指すアプローチなどがある。具体的には、植物性残渣は、メタン発酵でメタンガスを回収して、蒸気や電気に転換したり、油揚げフライ廃油は「生おから」を乾燥したおからにするための燃料として再利用し、粉末化したおから製品として販売する事例がある。
ゼロ・エミッションの最重要課題は、廃棄物をどこまで減量(リデュース)できるかである。

【環境基本法】
The Basic Environment Law

国内における環境法令の最上位に位置する環境保全の基本理念を定めた法律である。国、地方公共団体、事業者、国民の責務を明らかにするとともに、その環境施策の基本事項を定めている。

それまでは公害対策基本法が定められていたが、社会経済システムの変化による公害問題の多様化、複雑化、地球環境での環境問題に対して、それまでの法的な枠組みでは対応に限界が生じてきたため、この法律が1993年に公布された。
この法律は、事業者や国民などに対して直接の法的義務や権利を定めたものではなく、環境保全施策を総合的に進めるための基本的な指針となっている。また、環境基準を定めることも規定されているが、法的な拘束力はなく、維持することが望ましいとした行政の努力目標として定められた。
拘束力を持つ規制基準としては個別のリサイクル法で定められている。図⒉に法律体系図を示す。

図2.環境関連の法律体系図

図2.環境関連の法律体系図

【循環型社会形成推進基本法】
Fundamental Law for Establishing a Sound Material-Cycle Society

廃棄物の発生の増大、リサイクルの一層の推進の必要性、廃棄物処理施設の立地の困難性、不法投棄の増大といった社会問題を抱えている。これらの問題解決のために、大量生産、大量消費、大量破棄の経済社会から脱却して、生産から流通、消費、廃棄に至るまで物質の効率的な利用やリサイクルを進め、環境への負荷が少ない循環型社会の形成を目的に2000年に定められた法律である。この法律は、循環型社会の形成を推進する基本的な枠組みを定めている。形成すべき「循環型社会」の姿を、「廃棄物等の発生抑制、循環資源の循環的な利用及び適正な処分が確保されることによって、天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される社会」と明確に示している。廃棄物等の内、有用なものを「循環資源」と位置づけ、国、地方公共団体、事業者および国民の責務を明確にしている。

【廃棄物処理法】
Wastes Management and Public Cleansing Law

生活環境の保全や公衆衛生の向上を図る目的として、廃棄物の排出抑制、および廃棄物の適正な分別、保管、収集、再生、処分などの処理に関して定められた法律で、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」が正式名である。
廃棄物は、一般廃棄物と産業廃棄物に区分されている。また爆発性、毒性、感染性など人の健康や生活環境に被害を生じる恐れがあるものについては、特別管理廃棄物としてさらに区分される。廃棄物の種類は、燃え殻、汚泥、廃油、廃プラスチックなど20種類に区分される。工場などにおいて、特に産業廃棄物の管理が重要となり、この法律で定められる保管基準や、排出業者の責務を順守しなくてはならない。
排出事業者の責務としては、収集、運搬、処分委託の書面での委託契約や、廃棄物を収集運搬業者や処分業者に引き渡す際には、産業廃棄物管理票(マニフェスト伝票)を交付し、定められた期日以内で適正な処理が行われたことを排出業者が確認することが義務付けられている。

【リサイクル法】
Act on the Promotion of Effective Utilization of Resources

リサイクル法は、2000年に、それまでの「再生資源の利用の促進に関する法律」が改訂され、この法律が公布された。正式には「資源の有効な利用の促進に関する法律」である。
政令にて対象業種・対象品目を指定し、事業者に対して「3R」の取り組みを求めている。
次に具体的な項目を示す。

① 特定省資源業種(工場内で副産物の発生抑制、リサイクルを求める業種)
② 特定再利用業種(再生資源、再生部品の利用を求める業種)
③ 特定省資源化製品(製品の省資源化や長寿命化などによって廃棄物としての発生自体を抑制する製品)
④ 指定再利用促進製品(使用済みの製品から再生部品や再生資源が容易に取り出せる設計・製造を行うことを求める製品)
⑤ 指定表示製品(分別回収の利用の促進のため、使用済み製品が、容易に分別収集が行われるために製品に表示をすることを求める製品)
⑥ 指定再資源化製品(使用済み製品の自主回収、再資源化を求める製品)
⑦ 指定副産物(利用を促進する副産物)

【容器包装リサイクル法】
Act on the Promotion of Sorted Collection and Recycling Containers and Packaging

「容器包装に関わる分別収集及び再商品化の促進に関する法律」が正式な名称である。一般廃棄物の排出量が増大し、最終処分場の残余年数もひっ迫する中、家庭ごみに占める割合が容積比で約6割に達する容器包装廃棄物を対象に、資源として有効利用を進め、廃棄物の減量を目的として、この法律が制定された。1997年の法律施行当初は、ガラス製容器、飲料用または醤油を充填するためのペットボトル、飲料用紙パックなどを対象として施行が始まり、2000年からはペットボトル以外のプラスチック製容器包装および飲料用紙パック以外の紙製容器包装も対象に加えられ、特定事業者の範囲が拡大された。

【食品リサイクル法】
Laws Concerning Promotion to Recover and Utilize Recyclable Food Resources

「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」が正式な名称である。2000年に制定された法律である。食品に関する資源の再生利用、ならびに食品廃棄物等の発生の抑制および減量に関し基本的な事項を定めた法律である。食品の売れ残り、食べ残し、食品製造過程におけて大量に発生する食品廃棄物の抑制、減量化を推進することにより、最終的に処分される量を減少させるとともに、飼料や肥料などの原材料として再生利用するため、製造、流通、外食など食品関連事業者による食品循環資源の再生利用を促進することを目標としている。食品廃棄物の減量、再生利用が義務化となった。近年、賞味期限などの取り扱いからつくり過ぎによる「食品ロス」が問題視され、減量、再生利用の対応が急務とされている。

【大気汚染防止法】
Air Pollution Control Law

大気汚染防止対策を総合的に推進するために、1968年に制定された。環境基本法において制定された環境基準を達成することを目標として、大気汚染に関する規制を実施している。工場や事業所から排出される大気汚染物質について、物資の種類、排出施設の種類や規模ごとに排出基準などが定められている。
規制の対象としては、ばい煙(物の燃焼に伴い発生する硫黄酸化物、ばいじん、カドミウムや塩素、窒素酸化物などの有害物質)の排出、トルエン、キシレンなど揮発性有機化合物(VOC)の排出、粉じん(物の破砕によるものやアスベストなどの飛散する物質)の排出について定められている。排出量や排出濃度の規制値が定められていて、測定が義務づけられているボイラーや乾燥炉、自家発電装置などを設置している事業者、工場は規制対象であるか確認する必要がある。

【水質汚濁防止法】
Water Pollution Control Law

河川、湖沼、沿岸海域などの公共用水域や地下水の水質汚濁の防止を図るために、工場や事業所からの排出される水に関して規制した法律である。
六価クロムやカドミウム、ヒ素、水銀などの有害物質や、pH(potential of hydrogen:水素イオン濃度指数)、BOD(Biochemical Oxygen Demand:生物学的酸素要求量)、COD(Chemical Oxygen Demand:化学的酸素要求量)、SS(Suspended Solid:浮遊物質)、ノルマルヘキサン抽出物質などの生活環境項目についての濃度規制基準、また指定された地域内で一定の排水量を超える場合には排出水の汚濁負荷量の総量規制基準が定められている。その他、特定の施設の設置届、排出水の水質測定などが義務付けられているので注意する。

【騒音規制法】
Noise Regulation Law

工場や事業所での活動や建設工事に伴って発生する騒音および自動車騒音を規制する法律である。工場や事業所での騒音は都道府県知事が定める指定地域内にあり、機械プレスなどの金属加工機械やコンプレッサ、送風機などが政令で指定されている。これら施設(規模・種類の施設)を設置している工場、事業所が規制対象となる。時間帯(朝、昼間、夕、夜間)および区域区分(第一種~第四種区域区分)ごとに定められている騒音規制値の順守が求められ、特定施設については設置の届け出が義務付けられている。騒音値の測定は法律上事業者に義務付けられていないが、規制基準をクリアしているか確認しておく必要がある。

【振動規制法】
The vibration Regulation Law

工場や事業所での活動や、建設工事に伴って発生する振動を規制する法律である。騒音規制法と同様に、都道府県の条例により定められる時間帯および区域区分の規制基準が定められている。振動に関する特定施設(金属加工機、圧縮機などの政令で指定されている規模・種類の施設)を設置する工場、事業所は、この規制を順守しなければならない。また設置する特定施設の届け出が義務付けられている。

【悪臭防止法】
Offensive Odor Control Law

規制地域内の工場や事業所の活動に伴って発生する悪臭について規制を行う法律である。規制地域は、都道府県知事によって定められているが、規制地域の対象は、都市部や住宅地となっている。
政令にて特定悪臭物質(現在22物質)が指定されており、これらの臭気指数が排出規制として定められている。悪臭の測定は、事業者には義務付けられていない。規制基準違反により住民の生活環境が損なわれていると認められた場合、市町村長が改善の命令を行うことができる。

【省エネ法】
Act Concerning the Rational Use of Energy

「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(以下、省エネ法という)は、エネルギー消費量が大幅に増加している業務部門と家庭部門におけるエネルギーの使用の合理化をより一層推進することを目的に、2008年5月に改正がされた。
省エネ法におけるエネルギーとは、燃料、熱、電気が対象である。廃棄物からの回収エネルギーや風力、太陽光等の非化石エネルギーは対象とならない。省エネ法が直接規制する事業分野は、「工場又は事業所その他の事業場」、「輸送」、「住宅・建築物」、「機械器具」4つである。これら4つについてのエネルギーの使用の合理化に関する措置などが定められている。例えば建築物については、外壁、窓などをとおしての熱の損失の防止のための措置などの実施は建築主が務め、機械器具については、エネルギー消費機器の製造、輸入事業者に対してエネルギー消費性能の向上を図ることなどが定められている。輸送についても全業種を対象に一定の輸送量を持つ事業者は定期的な報告が義務付けられている。

【持続可能な開発目標:SDGs】
Sustainable Development Goals

持続可能な開発目標(SDGs)とは,2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標である。図⒊に示す17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っている。
SDGsは発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり,日本としても積極的に取り組みが始まっている。

図3「持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けて日本が果たす役割」より抜粋引用

図3.「持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けて日本が果たす役割」より抜粋引用
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/2001sdgs_gaiyou.pdf

【参考引用先】

➢ 環境省H.P:https://www.env.go.jp/
➢ 経済産業省H.P:https://www.meti.go.jp/
➢ 農林水産省H.P:https://www.maff.go.jp/
➢ (公財)日本環境協会/エコマーク事務局H.P:https://www.ecomark.jp/
➢ (公財)日本容器包装リサイクル協会H.P:https://www.jcpra.or.jp/
➢ (一財)省エネルギーセンターH.P:https://www.eccj.or.jp/