『食品製造設備における生産ライン構築の条件と課題』

『食品製造設備における生産ライン構築の条件と課題』
Conditions and issues for building a production line in food manufacturing equipment

 食品工場で使われる設備は、どのような目的で用いられるのか。また、食品工場が持つ課題と、それを解決する設備とはどういったものなのか。食品工場の設備について、中食、外食系設備に共通する種類や目的、導入時に留意しなければならない点を解説する。

1. 食品工場で使用する設備

 食品工場では、他の製造業の工場とは異なる特殊な設備が多く使用されている。人の口に入るものをつくる以上、特に安全と衛生に配慮した設備を使用する必要がある。また、食品そのものを守ることで食の安全を守っている設備もある。代表的な設備として、次のような5つに分類することができる。

厨房設備

  調理の際に使用する機器や、食品の加工を行う設備。食品製造ラインで使うコンベヤや搬送機なども厨房設備の一部といえる。直接食品に触れることの多い設備であるため、高い基準での衛生性・安全性が求められる。

低温設備

 食品工場において、「冷やす」ことを目的とした設備。プレハブ冷蔵庫や業務用冷蔵庫、冷凍機器、急速フリーザーなどになる。

空調設備

 食品工場において空調は重要な役割を果たしている。場内の温度・湿度を一定に保つことで食品の傷みを防ぎ、また労働者の環境を整えることで生産性の向上にもつながる。各種エアコンや暖房設備などになる。

換気設備

 調理の際に発生する煙や熱気などを排気し、新鮮な空気を吸気する設備。また食品工場特有の匂いについての問題を緩和する目的も持つ。換気扇だけでなく、ダクトやフードも換気設備の一部である。

衛生設備

 食品工場において最も重要視されるのが衛生面である。給排水の設備や、身体・着衣の洗浄設備、調理器具の洗浄・殺菌設備などになる。

2. 設備によって解決したい課題

 これらの設備は、どのような課題を解決するためにあるか。また、どのような課題があり設備の新規導入や買い替え、更新が行われるのか。そこには食品を扱う工場特有の課題、各種食品工場すべての分野において共通の課題について以下に述べる。

品質を向上させたい

 食品製造において消費者や取引先の信頼を得るためには、品質の維持・向上が不可欠である。現在使用している設備で品質が維持できるか、さらに品質を向上させるためにはどのような可能性があるのかを検討し、より適した設備があれば導入を検討する。

より安全・衛生的に生産したい

 人の手が直接触れないことで衛生性の向上を図ることができ、食品としての安全性の確保が可能である。また食品加工機械はいくら定期的に洗浄・清掃しても、経年により食品のカスが蓄積されたり、サビが進んだりする。衛生性を確保する目的で機種変更・更新をする場合もある。

安定生産を維持したい

 機械は使用年数や稼働時間により故障が増え、それに伴い生産ライン停止時間も増えてくる。また、食品加工機械は研究・開発が進み、進化を続けている。従来、定期的にエラーが起こり人の手で再起動する必要のあった機械では、停止することなく稼働できるよう進歩している製品も市場投入され始めている。

生産スピードを上げたい

 人の手で行っていた作業を機械化することにより、作業者の熟練度や体調に左右されていた生産性が安定するだけでなく、生産スピードを上げることも可能となる。

危険作業を機械化したい

 食品加工には「切る・つぶす・熱する」など、危険な工程がある。これらを機械により自動化することで、労働災害を防ぐことが必須となっている。

省スペース化したい

 従来は大きなスペースを専有していたような設備も、現在は小型化されているものが多く見られるようになった。また、複数の機械により行っていた工程を、一台でこなす機械の開発も進められている。

省エネルギ化したい

 エネルギに対する関心が高まるなか、食品設備も省エネルギ化が進んでいる。従来の設備に比べ大幅に消費電力が少なくなっているものもある。

生産ラインを効率化したい

 それぞれの設備がひとつの作業に対して効率が良くても、生産ライン全体としての流れが悪く、非効率となっている場合も多く見られる。このような場合に、流れの悪くなっている部分に設備を追加したり、入れ替えを行ったりすることで、全体の効率化を図ることが求められる。

3. 食品工場の設備に求められる条件

 「食品工場の設備に求められる条件」で示した課題を解決するために設備を導入する場合、どのようなことに注意すべきなのか。食品に関わる設備だからこそ求められる条件として、次のような点があげられる。

洗浄・メンテナンスのしやすさ

 食品加工機械は常に衛生的に保たれていなければならない。そこで重要となるのが洗浄やメンテナンスのしやすさである。食品の残渣が詰まりやすい部分や食品に直接触れる部分が、取り外ししやすい構造になっていることで、設備を衛生的に保つことにつながる。

食品通過部にネジ類の使用がないか

 機械である以上、ネジ類や部品の脱落が絶対にないとはいい切れない。もし脱落したネジが食品に混入した場合、信頼を失墜しかねない大きな問題となってしまう。食品通過部にネジ類の使用がないフラット構造になっていると、より安全な設備といえる。

オペレーターに危険はないか

 従業員の危険作業を排除するのは当然です。人身事故のあった食品工場で生産したものは消費者から避けられてしまうことになる。オペレーターに危険のあるような設備は使用しない、または安全性を確保する工夫を心がけなければならない。
これらは食の安全と、企業イメージにも大きくかかわる部分なので、上記を踏まえ、次のような点にも注意して設備の導入を検討しなければならない。
・安全性
 作業者の安全、食品としての安全を保てる設備かどうかをしっかりと見極める。
・メンテナンス計画
 しっかりとしたメンテナンス計画を立て、その計画を維持できるかを検討する。
・耐用年数
 パン・菓子類製造設備は9年、化学調味料製造設備は7年など、目安となる耐用年数が設定されている。企業の投資計画に見合った設備導入を検討するようにする。
・低コスト
 企業として利益を確保するためには、ランニングコストの低い設備が必須である。安全性を維持しながら低コストで運用できる設備を選定する必要がある。

4. 食の安全と高効率生産を支える設備

 食品工場の抱えるさまざまな課題を解決するため求められる設備は、各企業、メーカーごとに日々研究開発に取り組み、より効率的で生産性の高いものが次々と生み出されている。その一方で、食品の品質に対する意識と基準も日増しに高くなってきている。より高いレベルでの食の安全と効率的な生産、その両方を支える設備が求められるようになってきている。

外食産業向けセントラルキッチンの食品製造設備

 外食産業を対象としたセントラルキッチンでは、消費量が一定では無いため、各販売店側で保存しやすいように、一度調理した物をレトルトや冷凍の形で保存に適する状態にまで加工する設備も持っているのが一般的である。

単一の業種を得意先とする場合は少品種の大量生産となる。そのため同一メニューの大量食材を調理するため、鍋も釜も相応に大きくなる。大抵は建物据付の設備となるので、一般の厨房とは全く異なっており、それらは食品加工工場の設備により近い。特にレストランチェーン等の食材をまかなう所では、材料の仕込みからレトルト封入・冷凍までを一連の製造ラインで調理し、その間はほとんど人手を介さない。

例外としてリンガーハットのチャーハンは家庭用炊飯器を一つの工場に60台を回転する形で保有しており、これを実現することでムラの無い炊き上がりを実現している。なお、家庭用冷凍食品と併用して運用している。

複数業種を得意先とする場合では、少品種の大量生産と多品種少量生産の混合となるため、複数生産ラインを保有する形態となることが多い。一般的に、規模によっては大きさの差こそあれ厨房と同じ調理方法の厨房機器類を設備するが、近年はスチームコンベクションオーブンなど大量調理を前提とした厨房機器を多用するようになっている。

また、生産するメニューが変更となる場合に備え、厨房機器類の入れ替えや作業手順の変更・設備レイアウトの変更に対応させやすいよう、電源やガス栓・水道など設備の基幹部分を中央にレイアウトし、各調理設備を接続・取り外して機器類の入れ替えが可能なように調理フロアが工夫されている。また常に衛生的に調理できるよう、床面はいつでも水や洗剤・消毒薬で洗い流せるようになっている。

食品工場で使われる設備は、日々改善と工夫が進み各企業の開発もさらに進展して行くであろう。安全で安心な衛生設計を加味した製造機械や設備を今後も期待していきたい。

以上