2019/10/03
物の流れを考えるうえで留意しなければいけない点の考え方について以下に述べる。
従来倉庫のマテハンを基に考えてみる。
従来:パレットに荷物を積みフォークリフトで運搬
現在:パレット操作による自動倉庫
自動倉庫は、物の移動だけでなく積む、卸す、取り付ける、取り外す、納める、貯える、取り出すなどの機能をもつ。
物の移動+ジャスインタイム(生産管理システム) ⇒ 前後の物の取り扱いも同時に考える。
■ 運搬分析
運搬分析を次の分析手法で行う。
( 1) 流れ線図
流れ線図は、職場や機械設備の配置を示したレイアウト図に、生産工程における基本的要素からなる工程系列を、1本の実線により結んで流れを記入したもの。
食品製造業=プロセス型製造業
「フローショップ生産」方式が主流で生産は一方向の流れ(フロー)で全ての仕事(ジョブ)について、機械設備や装置の利用順序が同一である生産形態
① 物が工場、職場のどこを通って流れていくのか
・流れは最短距離か
・逆行していないか
・曲がりくねっていないか
② 物の数量、重量、頻度は適切か
・数量、重量、頻度が大きい部分の運搬距離は短いか
・重量物の上下移動はないか
等について無駄な移動がないか、流れ線図 ( 図1) のような模式図を作成し検討する。
円滑な物の移動がなければ、円滑な生産活動は行われず、当然生産性の向上は期待できない。
(2) 運搬工程分析
運搬工程分析は、次のように行う。
物の流れの状況を追跡して、調べ、系列的に発生する状況を説明的に記載し、物の取り扱われ方、置かれ方を記録した上で、これらについて検討分析する手法である。
次の点に着目しながら改善を行う。
① 物の置き方、運び出し易さから区分した台記号により、運び出しにくい物があれば、運び易く改善する。
② 物の停滞状況を調べ、それを無くすか、前後の取り扱いを解消できないか検討する。
③ 空運搬をできるだけ無くす。
④ 作業者による運搬をできるだけ、機械や重力に変え省力化する。
⑤ 流れ線図などで、移動線の逆行や屈曲、交差をなくすようにする。
( 3) 空運搬分析
作業者や運搬設備・運搬具が、目的とする物をある点からある点に移動させることを実移動という。これに対して作業地点に物を伴わずに移動することを空移動という。
離れた距離を往路は物を持って移動し、復路は手ぶらで帰れば、復路は空移動になってしまう。
空運搬係数=( 往復距離-実移動距離) /実移動距離 となる。
この空係数は当然小さいほうが望ましい。
空運搬係数を減少させるためには以下のような対策を行う。
① 配置変更:運搬設備、運搬具の配置を変更し、空移動の距離を減少する。
② 一括運搬:何回分かを一括して運び、実移動の回数に対して、空移動の回数を減少する。
③ 巡回経路:実移動を幾つかの合理的な巡回経路を設定し、空移動そのものを減少させる。
④ 機会利用:空移動を即座に行わずに、次の空移動の機会に同時に空移動を行う。
⑤ 機器利用:運搬器具等を多目的に利用できるように改善し、運搬の都度始点に戻らなくてもよいようにする。
( 4) 運搬稼動分析
運搬稼動分析は、運搬作業中の作業者や機械設備の稼働状況を観察分析し、能力算定、適正配置、方法改善、運用計画等の管理データを得ることを目的として行う。
運搬稼動分析においては、作業の状態が次の時間構成で表される時間のいずれかであるかを判断する。
① 主体作業時間 (目的達成のための状態変換である主作業時間と、状態変換の場を設定するための付随作業時間)
② 準備作業時間
③ 余裕時間は人的余裕 (用途余裕時間と疲労余裕時間) と管理時間 (作業余裕時間と職場余裕時間)
④ 除外時間は待ち時間と作業不良損失時間と非稼働時間よりなる。
運搬作業の見直しは生産性向上に極めて大きな効果を持つ。
( 5) 運搬機能分析
運搬機能分析は運搬に関する要素機能を規定し、これらの連結状態により運搬の過程を検討する。
運搬の過程を構成する要素機能の分類の例を以下に挙げる。
1.物的運搬機能
① 資材流動における要素機能
【移動】:ある必要機能から他の必要機能へ連結するために資材の位置を変える。
1) 時間的間隔には連続移動と、単位ごとに間隔をおいて移動する間欠移動がある。
2) 移動方向には、平らな面での水平移動、垂直に移動する上下移動、傾斜面での勾配移動がある。
3) 移動経路には、自由な経路による移動、経路 (軌道) による移動、移動はできない方向転換のみがある。
【始動】:停まっている資材を動かす。
【停止】:動いている資材を停める。
【整流】:移動を所定の位置間隔、時間間隔にする。
1) ゴー・ストップ方式:所定の時間間隔でゴーとストップを繰り返し、移動時間あるいは位置間隔を調整する。
2) パターン方式:装置を利用して資材の移動時間、位置間隔を規制する。
a.スパイラル式:
スクリュー状の装置を回転させて、移動時間・間隔を規制する。
b.ロータリー式:
円形板の装置を回転させることにより、移動時間・間隔を規制する。
c.プレート式:
平板を備えた装置により、平板を上下するなどで移動時間・間隔を規制する。
【分離】:まとまった資材を群や個々に分離して移動する。
【集結】:個別に移動する資材を一まとまりにする。
【分岐】:いくつかの行先のいずれかに移動する。
1) 経路限定式:所定の場所で分岐装置により所定の行先に限定する。
2) 押出し式:押出し方式で所定の行先の方向に押出す。
3) 保持放し式:吊られて移動したものが、所定の場所で保持が離される。
4) 検知誘導式:ガイド棒や磁気マークにより所定の行先に誘導する。
5) 傾斜滑落式:コンベア等の装置で移動し所定の箇所に行ったとき、装置の部分が傾斜して資材を滑り落とす。
6) 回転接続式:移動装置が回転し所定の行先に接続する。
7) 水平移動式:移動装置の一部が水平に移動し所定の行先に接続する。
【合流】:幾つかの移動経路が一つに集められ、その場所が新たな移動経路になる。
② 資材荷役の要素機能
【供給】:生産設備や包装設備に資材を送り込む
1 )取り出し:生産設備や包装設備から物を取り出す。
2) 取り付け:生産設備など機械に所定の位置に物を取り付ける。
3) 取り外し:生産設備などの機械に取り付けられている物を取り外す。
【整位】:バラバラになっている資材を整える。
1) 姿勢整位:バラバラな向きの資材を一定の方向に整える。
2) 位置整位:バラバラの場所にある資材を所定の位置に整える。
【積み替え】:場所、設備、形態から他の場所、設備、形態に積み替える。
1) 形態積み替え:ユニットあるいは個別に積み替える。
2) 位置積み替え:場所、設備から他の場所、設備に積み替える。
③ 資材貯蔵の要素機能
【流動貯蔵】:移動途中に時間的、数量的なバラツキが起きた時に備えて、移動しながら一時的な貯蔵を行う。
1) エンドレス貯蔵方式:資材の本流が満たされている場合は、待ちライン (プール) に一時いれられて、本流が空いた場合本流に合流する。
2) ホッパ貯蔵方式:到着流れと本流ピッチに差が大きい時、ライン上で資材が詰まっている状態で貯蔵される。
3) ライン上貯蔵方式:到着流れにバラツキがある時、ライン上で資材が詰まっている状態で貯蔵される。
4) サブライン上貯蔵方法:本流にサブラインを設け、流入量が多い時はサブラインに入れ、本流が不足した時はここから出す。
【格納保管】:資材の移動経路から外された所で資材を停めて貯蔵する。
④ 運搬制御機能
運搬の目的が達成できるように、物の移動、荷役、貯蔵について、計画し、情報収集、運搬機能を働かせて制御を行う機能である。
以下に挙げる要素機能がある。
【計画】:情報により方針を決定する。
【付印】:資材に意味のあるマークを付ける。
【検出】:資材の形態や数量、マークを調べる。
【伝達】:計画や検出した結果を伝える。
【処理】:伝達内容により、それぞれの物的運搬機能を働かせる。
2.物的制御と計画制御
運搬制御には次の区分がある。
① 物的制御
1) 資材・印・検出制御:運搬する物の印を検出し、印の持つ情報より物的運搬要素を作動、制御する自動認識と呼ばれる技術である。物流業界などで多用されている。物にバーコードやQRコードなどを貼り付け、この情報により、物は振り分けられる。数字の情報の読み取りにより振り分けられるものに郵便番号システムがある。
2) 機能状態検出制御:運搬工程における物的運搬の要素機能の状態を検出して、状態によりその要素機能あるいは他の要素機能を作動・制御する。列内検出・後方処理と呼ばれるもので、光電管等の検出端により物で光を遮らなくなるとストッパを始動し物を送り込む始動処理と、反対に物で光が遮られると物の移動を停止させる停止処理がある。生産ラインの物のゴー・ストップに幅広く利用されている。
3) 物的環境検出制御:物的運搬機能に対する例えば温度条件などの環境条件を検出し、その状態により特定の物的運搬の要素機能を作動・制御する。
② 計画制御
1) 計画制御は、物的運搬機能により構成される運搬工程の外部において、情報により判断が決定され、その決定が物的運搬の要素機能に伝えられて動作・制御される。列外計画処理では、物の流れ、行先が計画されプログラムに組み込まれており、プログラムに基づいて物が流れ、プログラムに基づいて分岐装置が作動し、物を所定の行先に分岐する。
2) 物的運搬要素機能の状態、あるいは運搬する物の状態についての情報により判断され、要素機能が作動、制御される。これらには例えば果物や魚の重量選別、自動計量装置の過不足分別、金属探知器による異物選別などがある。
食品工場では製品の重量の過不足を監視するために自動計量装置が多用されている。
最近の機種では測定結果の統計解析やデータのやり取り(通信)が容易にできる機能が付属しているものもある。
以上
【参考文献】
1.食品工場の工程管理
著者:弘中泰雅
出版社:日刊工業新聞者
2.ファインケミカルプラントFA化技術の新展開
著者:高松武一郎
出版社:(株)シーエムシー社