2023/03/17
『食品製造ライン構築要素技術「画像検査」の基礎知識』
Basic knowledge of food manufacturing line construction elemental technology “image inspection”
1.はじめに
食品製造ラインにおいて自動化を進めるにあたり、従来は人の目に頼っていた検査工程は自動化ライン構築のボトルネックポイントの一つとして考えられている。自動化ライン構築要素技術として「画像検査」について詳述する。
2.画像検査に用いる「画像検査装置」
画像検査装置とは、食品工場内でも多くの検査工程や方法があるなかで製品の外観検査を行う要素技術の一つである。画像処理装置を用いて検品、検査を行っている工程も数多くあるが、食品製造工場で代表的な検査工程として外観検査や印字検査では広く採用されている。
画像検査装置の原理について画像処理方式は、カメラで撮像したデータを画像処理装置で処理し、欠陥や不具合の検査を行う。目視検査における人の目をカメラ、人の脳を画像処理装置コントローラとして置き換えてイメージすると理解しやすい。
画像処理検査ではあらかじめ良品の製品情報を登録しておき、カメラで撮影した対象製品データと照合して良否判定を行うのが一般的である。
3.画像検査装置を採用する理由
自社製品で外観キズや欠陥のある製品が万が一流通してしまった場合、クレームの発生事故に繋がる可能性もあり、顧客からの信用も失ってしまうことに繋がりかねない。これまでは「製品に傷やへこみがないか、異常がないか」という検査は人の目視により行われていました。人の目による目視検査のメリットとして、様々な異常に対して適切に対応ができるという点があり、装置で自動化してしまっては判定できない異常や良否判定が難しい製品も検査が可能である点がポイントとなる。
しかし、一日に数千数万といった製品の検品を検査員だけの目視検品に頼っていては人手不足や人件費の高騰、人為的ミスの影響も受けるリスクなどが高くなる。そのため検査を自動化することで製品の品質面を担保し、検査効率も向上させ、省人化に繋げていくことが要求されている。
4.画像検査装置の用途
①製品のキズやひび割れ(クラック)の検査工程
②製品の形状、欠け、バリ、汚れ、凹み、嚙み込みの検査工程
③規定寸法やサイズ違いの検査工程
④製品の変色の検査工程
⑤個包装の賞味期限印字検査
⑥軟カプセル・アンプルなど液量・液有無の検査
5.画像検査装置の選定ポイントと導入時チェックポイント
①選定ポイント
画像処理装置はカメラ、レンズ、照明、画像処理装置コントローラで構成されている。それぞれの構成機器選定の根拠となるのは、検査対象製品と検出したい不具合内容と不具合レベルである。製品情報と解決したい不具合、目的を明確にすることが非常に重要なポイントにある。その情報を踏まえて構成機器の選定を行う必要がある。
②導入時チェックポイント
カメラは検査対象物の色、搬送測度、検査したい項目内容などによって選定することがポイントである。さらにレンズは視野を基準に選定を行う。検査対象物の大きさや検査範囲が影響しすることを考慮することが大切である。照明は検査対象物の材質、色、検査したい項目内容をもとに選定する。画像処理装置コントローラにはカメラで撮像した画像情報が送られ、送られてきた画像情報を内部処理加工することで検出したい不具合を強調させるといった機能、役割を担う。検査基準の設定でどういったレベルまでをOK判定、どのレベルからNG判定するといった基準も画像処理装置コントローラから設定することが重要なポイントになる。
6.画像検査装置のアプリケーション例
「画像処理アプリケーション集(出典:KEYENCE)」のアプケーション事例(T02画像-2012)を引用転載して画像検査例を紹介をする。
①有無・品種判別検査
②外観検査
③寸法検査
④位置決め・アライメント検査
⑤認識検査
⑥ラインスキャン検査
7.画像検査装置の価格帯(目安)
画像処理装置はカメラ、レンズ、照明、画像処理装置コントローラで構成される。画像検査装置一式として本体合計参考価格は約300万円~500万円(目安)ほどになる。導入を検討する際は、各機器の仕様やスペックに応じて価格帯も変動してくるので、まずは検査したい製品情報、達成したい目的の検討から行うことが重要なポイントになる。
8.画像検査装置の注目メーカー事例
詳細な仕様スペック等は各社HPを参照とし、注目メーカーの代表的な画像検査装置の概要を紹介する。
①株式会社エヌテック https://creationdevice.co.jp/
➢ 「印字検査装置(スクレーパ式排出)」
本製品は、スクレーパ排出仕様の検査カメラ一体型コンベヤで、各種製造ラインで、不良検知と排出までの工程をコンベヤ上で全て行える検査装置。
スクレーパにて幅方向に排出するほかに印字・外観・アライメント・寸法など各種検査に対応できる。
➢ 「カップ内面検査装置 CVLシリーズ」
カップ容器搬送と検査をシステム化し、搬送過程で容器内の異物を除去、ハンドリング技術と画像処理技術を統合したシリーズ。
➢ 「実PETボトル外観検査装置 PVNシリーズ」
操作性が容易で生産稼働中でも調整が可能!(オンラインシステム)、ハンドリング技術と画像処理技術を融合したシリーズ。
➢ 「即席めん外観検査装置」
12台のカメラ(カラーカメラ6台、モノクロカメラ6台)で、即席めんの形状・かすりくず・汚れ異物を全面検査(反転装置で反転させ、裏面も検査)が可能。
➢ 「容器外観検査装置」
容器の外観をあらゆる角度から全数検査ができ、生産稼働中でも調整が可能でハンドリング技術と画像処理技術を統合した装置。
②株式会社V・MUST https://vmust.co.jp/
➢ 「菓子外観検査装置」
焼き菓子・お饅頭等の外観検査装置。搬送を工夫し、表面だけでなく、裏面も検査できる。凹凸・欠け・キズ・焼き(色)ムラ・異物付着等を検査し、ルールベースだけでなく、AI検査機の搭載も可能。
③株式会社ヴィーネックス https://www.vienex.co.jp/
➢ 「CIS型ラインカメラ」
産業用カメラの課題であった”視野の端部での画像の歪み”を解消し尚且つ、低い位置からでもコンベヤの幅全体を撮像できるスキャナ方式のカメラを搭載し、作動距離(WD)が50mmあるため対象物に触れることなく撮像が可能。縮小光学系のラインスキャンカメラ (照明・レンズが別に必要)と異なり一体型のため設置や調整が非常に容易。
④株式会社ユーテクノロジー
➢ 「画像外観検査装置」
パッケージ噛みこみ、異物、キズなど従来型画像処理とAI画像処理を検査アプリケーションにより選択し対応可能で、固定された基準により安定した精度で自動検査可能で、省人化による経費削減に貢献。
⑤ワイエムシステムズ株式会社 http://www.ym-systems.co.jp/
➢ 「文字検査装置 CP-One」
サーマルプリンタ・レーザー印字・ゴム印の、文字の欠け・汚れ・抜けなど誤読につながる欠陥や、マーク逆・誤印字などを、文字毎に簡単かつ柔軟な設定により検出(最短検査時間0.1秒(10文字)の高速処理を実現)が可能。
➢ 「ドット文字検査装置 CP-One」
フィルム包装品・紙パック・カップ容器・個装箱をはじめ缶製品・パウチ製品等への様々な製品のインクジェットプリンター等のドットで印刷された文字列の検査(高速処理 最高480個/分)が可能。
➢ 「食品異物混入自動外観検査装置」
食品製造工程のトラブルの一つに異物混入があり、中でも毛髪やプラスチック片は密度・比重が食品と似通っており、これまで有効な検査方法がなかったが、この検査装置は複雑の食品の形状であっても表面に露出している異物を判別する事の出来る装置。検査対象商品は、焼菓子・生菓子、食品・食材パック、冷凍食品・弁当パック、その他、食品以外にも利用可能。検査範囲:250×250mm以下、検査時間:最短0.5秒/個、コンベア速度:最大30m/分。
➢ 「マーク外観検査装置」
本装置は外形が円形である商品の印刷文字の検査を行い、4台のカメラを接続する事ができ、0.2秒/個の高速処理し判定を表示。画像ファンクションボタン ( 原画像、二値化像、輪郭、底面輪郭、補正像、補正二値など ) により検査過程の処理画像をモニタリング、また、生産の進捗状況や不良発生具合等の情報を表示。不良判定時は、その画像を最大50 枚まで保存することが可能で、オフライン時に不良画像を読み込んで検査結果(管理者用パラメータ画面にて)を確認することが可能。
➢ 「毛髪検査装置HDシリーズ」
食品製造工程のトラブルの一つに異物混入があり、その中でもこの装置は毛髪検査の機能を、スーパーコンピュータに使用される高速演算により、人間の眼と脳の判断に近づけた装置で既設ラインへの組み込みも可能。検査対象:食品、食品パッケージ、紙製品等、検出対象:毛髪(黒髪・白髪・茶髪など)太さ0.03 ~ 0.15 mm・長さ10 mm 以上。
⑥株式会社イシダ https://www.ishida.co.jp/ww/jp/
➢ 「手巻きおにぎり向け画像検査装置 i-INFLAP-N」
ラベルの印字間違いを検出し、製品表示不良事故を事前に防ぐ装置。包装不良のチェックも可能。4つの機能(①形状サーチ、②色差検査、③OCR検査、④バーコード検査)を組み合わせたハイブリッド画像処理技術を搭載。包装不良や具材のチェック、簡単画面操作によるマスタ登録、各種機器とのシステム連動/トレサビリティー管理、カメラの組み合わせ(側面手前カメラ200万画素、奥カメラ35万画素構成)により様々な商品形状に対応などが特徴である。類似装置として「サンドイッチ向け画像検査装置」などもある。
➢ 「お弁当向け画像検査装置」
ラベルの印字間違いを検出し、製品表示不良事故を事前に防ぐ装置。包装不良や具材のチェックも可能。4つの機能(①形状サーチ、②色差検査、③OCR検査、④バーコード検査)を組み合わせたハイブリッド画像処理技術を搭載。各種ラベルの全数チェックを実施、包装不良や具材のチェック、簡単画面操作によるマスタ登録、各種機器とのシステム連動/トレサビリティー管理、カメラの組み合わせにより様々な商品形状に対応でき、商品形状によって3パターンの製品バリエーションが用意されている。
上面カメラ1200万画素×下面カメラ200万画素 / 上面カメラ500万画素×下面カメラ200万画素 / 上面カメラ500万×下面カメラ200万画素×側面カメラ35万画素。
最後に
画像処理装置を取り上げたが、近年IoTやAI技術と組み合わせた各種のアプケーションを導入した検査装置が開発され、上市され始めている。食品製造ラインの自動化を構築する上でボトルネックとなりやすい工程であることからエッジセンシング技術などを導入しながら生産性の効率化、人手不足解消、検査員の労働環境改善などにつなげられることを期待する。
以上
【参考文献・引用先】
- 検査のポイントがわかる!「画像処理アプリケーション集」KEYENCE
- 製造工程・商品種別解説「画像検査装置とは?」Food Town
https://food-town.jp/customer/products/